ヘルス&メンタル
2022年3月3日

[マラソンランナーの心理]なぜ痛みや苦しみを味わいながらも大会に出続けるのか (2/2)

「Pain Now. Beer Later」(今は痛いけれど、ビールが待ってるよ)

 ビールジョッキの絵と一緒に書いてありました。これは、私が読んだなかで最高のメッセージです。

「Pain is temporary. Pride is forever.」(痛みは今だけ。プライドは永遠)

 どのレースでも、必ずと言ってもよいほど目にします。前述の研究によれば、痛みは物理的に消えるだけではなく、記憶からも追いやられるようです。

「Pain is inevitable, Suffering is Optional.」(痛みは避けがたいが、苦しみはこちら次第)

 村上春樹氏が『走ることについて語るときに僕が語ること』(著者:村上春樹/出版社:文藝春秋)から引用した、有名なフレーズですね。

参考:走ることに魔法があるとしたら、それは継続からしか生まれない。ランナーに贈る、作家ジョン・ビンガムの名言集

マラソンと痛みは切っても切れない関係

 こうして見ると、マラソンと痛みは切っても切れない関係があることが分かります。しかし、それが記憶に留まらないのであれば、あまり気にすること必要はないのかもしれません。

 新型コロナウイルスの影響で、数多くのレースが中止になっています。あの忘れてしまった痛みを実感できる日が、1日でも早く戻ってくることを祈っています。

参考文献:
(※1)Memory of pain induced by physical exercise.
Bąbel, Przemysław. 2015

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>

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