2020年12月22日

ゴルフルールの基本とは(13条のルール)

 これからゴルフを始めたいと思っている人、ゴルフを始めたばかりの人。そしてベテランだけどルールはイマイチ。そんな方々にお届けするのが、堅苦しさ一切なしの「ルールとマナー」シリーズ。読んで納得、腹落ち必至の解説でお届けします。3回目は、知っているようで知らない人も多い「ゴルフルールの起源と基本」です。

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ゴルフルールの起源は273年前!

 ゴルフの発祥の地はスコットランドと言われています。ゴルフの起源となったのは、オランダや、中国など諸説ありますが、ゴルフとしてスポーツの基礎を築いたのは、スコットランドと言って間違いないでしょう。1400年後半から、文献にゴルフという言葉が登場します。

 ゴルフは大英帝国の拡大によって世界へ広がっていったのですが、ゴルフのルールの起源となったのは1744年。全英オープンも開催されるミュアフィールドでゴルフルールの13条というのが制定さました。まだゴルフボールも、羽毛を革で包んでいた時代から、今のゴルフルールのルーツがあったのです。

 ゴルフのイメージを、ゴルフを始めたばかりの人に聞くと、よく言われるのが「ルールが難しそう」です。確かに分厚いルールブックと難しい用語で、拒否反応が出てしまうもの。では、プロゴルファーがルールに精通しているか!? というと、意外とそうではありません。

 このことがゴルフへの参入障壁になっているということは、ゴルフ業界もわかっていて、ルールの簡素化が今後のテーマとなっています。では273年前のルールは、どうだったのでしょう。13条というとかなりシンプルであると推測されます。1774年に条文化された、ゴルフルール13条をここに再現してみましょう(原文はもちろん英語ですが、訳して掲載しています)。

1774年当時の「ゴルフルール13条」

【第1条】
ボールをティーアップするには、ホールから1クラブレングス以内にしなければならない。(当時は、砂をすくって盛り上げ、そこのボールを乗せた)

【第2条】
ティーアップは地面上に限る。

【第3条】
一度ティから打ち出した球は別の球と交換できない

【第4条】
フェア・グリーン(フェアウエイ)上の球の1クラブレングス以内のほかは、球をプレーするために、石、骨、またはクラブに破損を与えるものを、取り除くことはできない。

【第5条】
球が水中やじめじめしたどろなどの汚物に入った場合は、球を自由に拾い上げ、それらハザードの後方に球を持ってきてその球をティーアップして、任意のクラブでプレーすることができる。ただし球を拾い上げたことに対して、相手に1ストロークの優位を与えなければならない。

【第6条】
球がどこかで他の球に触れた状態になった場合、後ろの球をプレーするまで、最初の球を拾い上げておくこと。

【第7条】
ホールへ球を入れるに際しては、ホールに対して公平にプレーすべきであって、自分のラインの上にはない相手の球を利用してプレーしてはいけない。

【第8条】
球が持ち去られるか、あるいは何かの原因で球を紛失した場合、その球を最後にプレーした地点に戻って、別の球をドロップしなければならない。ただし、相手に1ストロークの優位を与えなければならない。

【第9条】
球をホールに入れる時、自分のクラブやその他の物でパッティングラインの目印とすることは許されない。

【第10条】
もしも球が人、馬、犬あるいはその他の物によって止められた場合、その止められた球は、あるがままの状態でプレーされなければならない。

【第11条】
球を打つためにクラブを引き、そのストロークの一連の動作として、クラブを振り下ろした時は、たとえいかなることでクラブが破損したとしてもそれを1ストロークに数えられる。

【第12条】
球がホールからもっとも遠いところにある者が先にプレーすべきである。

【第13条】
そのゴルフ場保護のために設けられた堀割、排水溝、水路、さらに子供が作った遊び用のトンネルや穴、兵隊さんのざんごうなどは、ハザードとはみなされない。そこに入った球は、取り出して、ティーアップしアイアン・クラブでプレーすること。

※井上勝純著『ゴルフ、その神秘な起源』(三集出版)より転載

 この13条は、現在のルールの大もととなっています。もともと13条しかなかったものが、長年のいろいろなプレーヤーのスコアアップへの努力(悪知恵?)により、ややこしく膨大になっています。

 この13条はいわばルールの原点といえます。目的はやはりプレーを円滑に行うことと、公平性を保つこと、この2つです。この13条から派生して今の百科事典のようなルールブック(+判例集)となっています。ゴルフのルールに熟知するには、まずは13条のルールを正しく理解すること。すべてのゴルフルールはこの13条から派生しているのです。

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[著者プロフィール]
マーク金井(まーく・かない)
クラブアナリスト。ゴルフ誌だけでなく、TV、ラジオなどさまざまなメディアで活躍する、自称「ゴルフ芸人」。ハンデ3の腕前と豊富な知識を活かした、わかりやすい試打レポートには定評がある。最近はクラブ設計者としても活躍、メーカーが作れなかった、アマチュアを救うクラブを設計。悩めるゴルファーのために自らゴルフスタジオ・アナライズを主宰している。最近発売した電子書籍「一生役立つゴルフ」シリーズ3部作は、アマチュアゴルファーを救うコースマネジメントや考え方が話題となり、電子書籍としては、記録的な売上を記録して、書籍として発売される。
■ANALYZ
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<Edit:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>