フィットネス
2020年12月17日

腰痛を根本から治すなら“体内コルセット”を鍛えよ│スポーツと腰痛(後編) (2/2)

腰痛防止のために、普段から心がけたいこと

 普段から腰痛予防のために意識しておくことは、「体重管理」「姿勢を保つこととそのためのコアトレーニング」「柔軟性をキープするためのストレッチ」。体重も腰痛には関連していて、肥満傾向にある人は腰痛も多くなるというデータがあるそうです。ですから体重管理も腰痛防止のためには重要です。また、日常的な動作や姿勢が腰に与える影響もあなどれません。

「図1は姿勢によって変化する椎間板への負担をグラフ化したものです。立ったときの椎間板への負担を100とすれば、前屈は150、さらにそこで重いものを持つのは220と2倍近い負担がかかっていることがわかります。また、立っているより座っている方が、椎間板への負担が高いというのも意外ではないでしょうか」

▲図1:姿勢による椎間板内圧の変化(※)

「一方、図2は腰の筋肉にかかる負担を表したグラフです。立っているときの負担が30で、少し背中を反らすとそれが26になる。まっすぐより少し反っている方が筋肉に負担がかからないんです。なぜなら筋肉が縮んでいるから。筋肉というのは過剰に伸ばされると痛みがでるので、やはり腰痛の原因は前かがみが大きいんですね。また、これを見ると寝る姿勢は仰向けよりも横向きの方が筋肉への負担が小さいこともわかります」

▲図2:姿勢による腰部内圧の変化(※)

「また、立っていたり普通に椅子に座っているより、あぐらは腰に悪いこともわかります。なぜならあぐらをかくと腰がちょっとまがって骨盤が倒れて猫背になる。身体としては楽なんですが、背中側には負担がかかる。身体はその方が楽なのに、実は負担がかかっているという皮肉な結果です」

 また、実は椅子に勢いよく座るのも、腰骨のクッションを傷めるのであまりよろしくないようです。椅子に座るときはできるだけ静かに! 背もたれに背中をぺたっとつけて、偉そうにふんぞり返った座り方。横から見ると背もたれと腰の部分に三角のスペースができるこの座り方も、腰にはよくないですよ。

 小山先生曰く。

「腰痛は、一度なってしまったら、治ったからといって安心はしないでほしい。常に爆弾を抱えているということを忘れないでください」

 一方、見方を変えれば腰痛は、自分がスポーツをしているときのフォームを見直すきっかけになるかもしれません。どちらにしても無理は禁物。「痛みがでたら、様子を見る」が鉄則です。

※引用・出典:「腰痛診療ガイド」(日本医事新報社、192、図1・図2) 文献;konno S, et al:The relationship between intramuscular pressure of the paraspinal muscles and low back pain. Spine 19(19):2186-2189. 1994

[監修者プロフィール]
小山浩司(こやまこうじ)
研究分野は健康・スポーツ科学。東京有明医療大学准教授。博士(体育科学)(日本体育大学)。柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本障害者スポーツ協会公認スポーツトレーナー

<Text:岩根彰子 / Edit:アート・サプライ(京澤洋子)/ Photo:Getty Images>

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