
効率よく疲労回復できる眠り方「濃縮睡眠」とは&脳疲労を解消する方法【総まとめ】 (1/3)
- 健康
- 2023年11月19日
「睡眠時間は1日〇時間」とよく聞きますが、つい寝る時間が遅くなってしまい、結局いつも寝不足。健康のために確保したい睡眠時間と、実際の睡眠時間には1時間以上の差があるという調査結果も(エマ・スリープ、全薬工業調べ)。または睡眠時間を確保できないとお悩みの人へ、注目の考え方があります。
睡眠セラピストの松本美栄さんが考案した「濃縮睡眠」というメソッドです。睡眠を濃縮する? 一体、どんなメソッドなのでしょうか。
インタビュー前後編+αを、まとめて一挙公開!
──さっそくですが、「濃縮睡眠」について教えてください。どんなメソッドでしょうか?
「濃縮睡眠」とは私が作った言葉で、入眠から2時間の睡眠の質を高めるという効率の良い睡眠法を指します。
睡眠セラピストの松本美栄さん
──なぜ入眠2時間以内に質の高い睡眠をとる必要があるのでしょうか。
2つ理由があります。
ひとつは、入眠から2時間、深い睡眠をとることで、効率よく成長ホルモンが分泌する点にあります。そのタイミングで出る分泌量は、1日の約50%になると言われているので、濃縮睡眠では入眠2時間を大切にしています。
もうひとつは、グリンパティックシステムと呼ばれる、深い睡眠をとったときに脳に溜まった老廃物を効率よく排除してくれる機能がよく働くという点です。
この2つの効果を得るために、入眠時から深い睡眠をとることが大切であるとしています。
──量より質というイメージですね。ちなみに、長く寝ても問題はないのでしょうか? 10時間以上など、長時間寝ることで考えられるデメリットとは。
ロングスリーパーと呼ばれる体質であれば、長く寝ることがその人のベストな睡眠時間なのでしょう。しかし、そうでない場合は、長く寝過ぎるとデメリットが多くなります。
深い睡眠がとれていないために長時間の睡眠が必要となり、ずっと横たわっているので体の負担が増えてしまいます。そして、頭がぼーっとして集中力が下がる、だるい、代謝の低下などのほか、早死にリスクも高まるというデータもあります。
4時間睡眠より10時間睡眠のほうが死亡リスクが高い
データによると、7時間くらいがちょうどいい睡眠時間とされており、そこから睡眠時間が短くなるにつれて死亡リスクは高くなっていきます。しかし、4時間睡眠より死亡リスクが高いのは、実は10時間睡眠です。
体調不良などで長時間睡眠をとる例を含めたとしても、長時間睡眠のほうが死亡リスクは高い結果になっています。
ちなみに休日の寝だめもよくありません。体内リズムが乱れ、余計に睡眠の質が下がる原因になります。
──昔はよく10時間以上寝ていたのですが、今からリカバリーできるでしょうか?
若いときは睡眠ホルモン「メラトニン」の量も豊富なので、いくらでも寝れちゃうんです。なので、年を取ってメラトニン量も少ない状態で長時間寝ることとは、少し事情が違ってきます。
──いよいよ「濃縮睡眠」のやり方です。しっかりと効果を得るため、どんなことを行うとよいでしょうか。ポイントを教えてください。
3つのポイントがあります。「脳疲労の解消」、「血流の改善」、そして「睡眠環境の整理」です。
ポイント1 脳疲労の解消
まず脳疲労の解消について。ここがもっとも大切です。
睡眠状態が良くないと脳疲労が溜まりやすくなり、脳疲労が溜まってくると睡眠の質も低下していきます。負のスパイラルです。そのため、睡眠の質をよくする行動と、脳疲労を解消していく行動の両方を行う必要があります。
具体的には、頭をマッサージする“頭蓋マッサージ”です。頭蓋マッサージで脳疲労が解消されると、頬骨が上がる、目がぱっちりするなど見た目にも表れてきます。
あとは、“眼精疲労の解消”、脳の中の疲れをケアする“マインドフルネス”を提唱しています。
ポイント2 血流の改善
次に、血流の改善。肩甲骨ストレッチによる姿勢のケアがおすすめです。背中の筋肉や肩甲骨まわりをゆるめていきます。
睡眠ホルモンのメラトニンを分泌するための栄養を摂るのもおすすめしています。タンパク質(トリプトファン)、マグネシウム、鉄、ビタミンB6、抗酸化食品です。
ポイント3 睡眠環境の整理
寝る前の“ブルーライト”は睡眠へのリスクが大きいです。そして“枕”。あとは“ほこり”も睡眠の質に影響しますので、床掃除をおすすめしています。
──上記3つ以外にも、行うとよいことはありますか?
朝のウォーキングや、寝る前90分前の入浴、ストレスケアとして“感謝ワーク”を行うこと、それからパワーナップ(仮眠)でしょうか。起床時間を揃えるなどもおすすめしています。
──いま教えて頂いたことを続けてみて、「濃縮睡眠」ができているか、どのように確認するとよいでしょうか。チェック方法を教えてください。
分かりやすいのは睡眠アプリでの計測です。入眠や覚醒のタイミング、回数など睡眠状態をくわしく計測していきましょう。
朝の目覚めの状態と日中の眠さも目安のひとつです。
──睡眠アプリのデータと体感、どちらを信じればよいでしょうか? 寝起きが良くなかったときでもデータ上では良い数値が出ていることがあります。
基本的には体感を重視してよいのかなと思います。そのときの睡眠ログはよくても、溜まっている疲れはとれていないという可能性があります。
朝眠いというのはさまざまな理由が考えられるので一概には言えないのですが、少なくとも起床後スッキリせず眠気が続くというのは、そのときの睡眠に問題があったというより、そもそも脳疲労が溜まっていて、まだまだ解消できていないという状態かもしれません。
逆に、睡眠データはあまり良くなかったけれど、めちゃくちゃスッキリ起きることができたときは、それだけで1日の幸福度が上がるという研究結果もありますよ。
──ショートスリーパーの人は「濃縮睡眠」ができているということでしょうか? 違いがあれば教えてください。
私の定義では、ショートスリーパーは遺伝子的に短い睡眠時間が適している人を指します。全体における割合は5%程度とも言われていますね。生まれ持った特異体質なので、「ショートスリーパーになる」というのは難しいのではないかと考えています。
私の提唱する「濃縮睡眠」は、質の良い睡眠をとることを基本としています。睡眠負債を抱えている、いわゆる質の高い睡眠をとれていない人が実践することで、短い睡眠時間ですっきり起床できたり、逆に今まであまり眠れなかった人はぐっすり眠れるようになるなど、自分にとって最適な睡眠が行えるようになります。
──ところで……夜10時に眠ると成長ホルモンが分泌されやすいという「睡眠のゴールデンタイム説(シンデレラタイム)」は、なぜ生まれたのでしょうか? 近年まで信じられてきました。
はっきりと分かっているわけではないのですが、こうじゃないかと言われている説はあります。
1991年ごろに行われた睡眠と成長ホルモンの研究において、睡眠ホルモンの分泌量と就寝時間をチェックしたとき、研究対象者の入眠時間が22時ぐらいで、24時ごろに成長ホルモンが出ているという研究結果があります。
実は他の時間に寝ても成長ホルモンは分泌されていたのですが、当時のメディアが一部を切り取って伝えてしまったため、睡眠のゴールデンタイムとか、シンデレラタイムのような説が広まったのではないかと考えられます。
もちろん、その後の研究でも、何時に寝たとしても成長ホルモンは分泌されるという結果が出ています。
後半では、「濃縮睡眠」でもっとも重要な、脳疲労を解消する眠り方について聞いていきます。