ヘルス&メンタル
2023年3月1日

【RICE処置】アイシングの効果とやり方、注意ポイント

スポーツにケガはつきもの。どんなに気をつけていたとしても、打撲や捻挫(ねんざ)、突き指など軽度のケガをしてしまうことはあります。

しかしケガをしてしまった場合は、応急処置がしっかりできているかどうかによって、回復までのスピードが左右されるもの。

今回は代表的な応急処置の一つ、「アイシング」について解説します。

アイシングの効果

スポーツでケガをした場合、応急処置として行われるのがRICES(ライセス)処置。

RICES処置とは「R=休息(安静)【rest】」「I=冷やす【ice】」「C=圧迫【compression】」「E=挙上【elevation】」「S=固定【support】」の頭文字をとったものです。

最後の「S=固定【support】」を抜いて、RICE(ライス)処置とも呼ばれます。

アイシングの目的は、血行を悪くさせることです。「血行を悪くさせるとよくないのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、ケガは筋肉や靭帯、腱などの組織の損傷によって炎症を起こします。

血流が良いとどんどん炎症が広がってしまい、痛む範囲が広くなったり腫れがひどくなったりなど、炎症が引くまでの時間が長くなってしまうのです。そのため、アイシングによって血行を悪くさせ、炎症を最小限にとどめられるようになります。

また、神経の働きを抑え、痛みを感じにくくさせるという効果も期待できる処置です。

アイシングの方法

ここでは、効果的なアイシングの方法を紹介しましょう。基本的には、氷を入れたビニール袋や氷嚢(ひょうのう)を患部に当てるだけ。

ただしアイシングの効果を高めるためには、いくつかの注意点があります。

冷たくても、痛くても我慢!

アイシングは、ケガをした患部に15~20分当てておく必要があります。

初めのうちは炎症が起きているため、冷たくて気持ちいいと感じる方が多いようです。しかし、これが続けて冷やしていくとかなり冷たく感じたり、冷たさから痛みに変わったりしてきます。

もしかしたらアイシングを止めたくなるかもしれませんが、ここで止めてはいけません。なぜなら、まだ深部は冷えていないからです。

冷たい痛みを我慢すると、だんだん温かく感じてきたり、麻痺してきて冷たさも何も感じなくなったりしてきます。そこまできたら、ようやくアイシングを外しましょう。

皮膚の温度を確認しながら3セットを目安に

アイシングを外した直後、皮膚を触ってみましょう。きっと、氷のように冷たいはずです。

皮膚の温度は、時間とともに元通りに戻っていきます。皮膚の温度が元に戻ったら、再度アイシングを当て冷やしていきましょう。

「再度冷やすならつけっぱなしでもいいんじゃ……」と思う人もいるかもしれません。しかしキンキンに冷えた状態になってしまうと、それ以降冷やしていても効果は低くなってしまうのです。そのため一度外し、皮膚の温度が戻ったら再度行うようにしましょう。

そうすることで、アイシングの効果が高まります。目安としては、「冷やして→外して」を3セット行うと効果的です。

キンキンに凍った氷のまま当てずに氷水にする

アイシングをするときは、たいてい自宅で作ったり、コンビニなどで買ってきた氷を使うでしょう。その際に気をつけたいのが凍傷です。氷自体に霜が張って白くなっている氷は、凍傷になる危険性があります。

とはいえタオルを間に挟むと、冷えが悪くなって効果が少なくなってしまいます。そんな時は、少し水を入れて溶かすとよいでしょう。

また、水が入っていることで関節などの凹凸でもぴったり全体を冷やすことができます。ただしぬるくなってしまわないように、水の入れ過ぎには注意してください。

細かい氷の方が効果は高い

氷を選ぶ際、ブロックアイスのような大きくゴツゴツしたものよりは、スーパーの生もの持ち帰り用のような細かい氷の方が使い勝手が良いでしょう。細かい氷はカラダに密着しやすいため、アイシングを当てたところを効率よく冷やします。

さらに凹凸のある部分でも、しっかり冷やすことができるのです。溶けやすいというデメリットはありますが、もし手に入るのであれば、細かい氷を選ぶようにしましょう。

アイシングのための便利グッズ

アイシングを行う際、あると便利な商品をいくつかご紹介しましょう。どれも安価で手に入りますので、スポーツをする時は携帯しておくことをオススメします。

氷嚢(ひょうのう)

スポーツを定期的に行うなら、ひとつは氷嚢を持っておくと便利です。

氷嚢とは、氷片や水を入れて患部を冷やすのに用いるゴム製などの袋のこと。氷水を入れて蓋をするだけで、簡単にアイシングを行うことができます。

ビニール袋とは違って破れる心配がなく、繰り返し使用できるのも特徴です。薬局やスポーツショップでも安価で販売されていますので、スポーツをする際は持ち歩くようにしましょう。

バンテージ(伸縮包帯)

伸び縮みするバンテージ(伸縮包帯)は、氷嚢やアイシングパックを患部に固定しておく際に役立ちます。

また、アイシング中に関節を固定したり圧迫を加えたりすることもできるため、応急処置の幅をグッと広げることができます。氷嚢と一緒に持ち歩くと便利でしょう。

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熱取りシート

場合によっては、「手元に氷がない」という状況もあり得るでしょう。そうした際は、熱が出た時に頭を冷やすような熱取りシート商品を使いましょう。熱取りシートは、患部の熱を吸い取ってくれるのに役立ちます。

最近では簡易的なアイスパック(衝撃で一気に冷たくなる保冷材のようなもの)もありますので、そちらでも良いでしょう。

ただし、あくまでも何もないときに限った方法です。アイシングと比べれば、どうしても効果はかなり低くなってしまいます。

アイシングをしっかり行うことで、完治までの時間を大幅に減少することができます。しかし、あくまでもRICES処置は応急処置です。痛みや腫れがひどいときには自己判断せず、医療機関で診てもらうようにしてください。

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[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。​医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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<Text:和田拓巳>