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2024年2月27日

スポーツドクターに聞く花粉症対策。運動前・中・後にやるべき対処法とは

今や日本人の4人に1人が花粉症を発症し、平成29年度12月に東京都健康安全研究センターがまとめた花粉症患者の実態調査でも、都民の48.8%がスギ花粉症と推定されています。

全年代で花粉症が増加、しかも低年齢化が進んでいるとのこと。東京都健康安全研究センターは「30年後には3人に2人以上がスギ花粉症罹患者となる可能性がある」と指摘しています。

そんな国民病ともいえる花粉症。日常生活に支障をきたすほか、外でのランニングや運動をする人にとっては、くしゃみ・鼻水・目のかゆみに充血などの症状で、集中力とコンディションに深刻な影響を及ぼす大問題です。

これは趣味でスポーツを楽しむアマチュアアスリートのみならず、五輪やプロスポーツのトップアスリートたちも例外ではありません。

今回は、花粉症の原因となる植物や飛散時期について改めて解説するとともに、スポーツマンのための花粉症対策を、スポーツドクターの小松ゆたか先生にコメントおよびアドバイスを頂きました。

花粉症の原因となる植物は約60種以上!

一般的にスギ花粉の飛散する2〜4月が花粉症のピークと思われていますが、花粉アレルギーを引き起こす植物の種類と花粉飛散量がもっとも多くなるのは、意外にも「5月」なのだそう。

環境省が公表する花粉症環境保健マニュアルには、これまでに約60種の花粉アレルギーが報告され、そのうち花粉症と分類されるものは約50種もあるというのです。

くしゃみや鼻水、鼻づまり、目や喉のかゆみなどのほか、集中力の低下や倦怠感、頭痛といった体調不良までも招くツライ花粉症の症状。それを引き起こす原因の植物にこれほど種類があるとは、正直驚きです。

花粉症を引き起こす植物と花粉飛散時期

代表的なスギ花粉、ヒノキ花粉以外にはどんなものがあるのでしょう。以下は関東の花粉症の主な原因植物とその飛散時期です。

■ ハンノキ属(カバノキ科)……… 3〜5月
■ スギ ……… 2〜4月
■ ヒノキ ……… 3〜5月
■ イネ科 ……… 4〜10月
■ ブタクサ属(キク科)……… 8〜10月
■ ヨモギ属(キク科)……… 8〜9月
■ カナムグラ(アサ科)……… 9〜11月

ここで示した期間は、各原因植物の花粉飛散のピークとなる時期となっています。

しかし前出の環境省の公表したマニュアルにある花粉カレンダーには、飛散量は少なくなるものの、スギやイネ科に至ってはほぼ1年中飛散していることが記されています。

全国的に見ると花粉の飛散時期は異なりますが、冬〜春にはスギ・ヒノキが、夏にはイネ・シラカンバ(北海道および東北のみ)が、秋にはブタクサ・ヨモギ・カナムグラの花粉が空中を飛散しているのです。

アスリートも実践! スポーツドクターに聞く花粉症対策

そもそも花粉症はなぜ起こるのか。体のアレルギー反応だということはわかっているものの、花粉以外にアレルギーを起こすことはなく、しかもオトナになってから突然発症したという人もいるでしょう。

「アレルギーとは、身体の中に入ってきたさまざまな『敵」に対して過剰に身体が反応してしまうこと。人間には身体の中に入ってきた敵を見分けてやっつける力=免疫機能が備わっていて、敵とみなした細菌やウイルス、花粉などの抗体に対して免疫システムが過剰に反応することで『アレルギー反応」が引き起こされるのです。花粉症の場合、主に鼻の粘膜や目の結膜でアレルギー反応が起きるために鼻水が出たり、目が痒くなったりするんですね」とは、過去5回のオリンピックにチーム・本部ドクターとして帯同し、自民党の2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部の本部長補佐を務めるスポーツドクターの小松ゆたか先生。

アレルギー性疾患は、遺伝的素因を持つ生まれつきアレルギーになりやすい体質の人がいるほか、それ以外の後天的な原因には大気汚染や栄養、ストレスなどさまざまな因子がアレルギー性疾患に関わっていると推測されるとも。

また、運動によってこれらのアレルギー反応が誘発されることもあるのだそうです。

「薬はバレンタインデーあたりから」

花粉症の症状を軽減したり、コンディションの調整のためにも小松先生が推奨する花粉症対策は、花粉症の症状が出るまえから薬を飲み始めるということ。

先生自身もスギ花粉症で、毎年2月14日頃から1日1錠の抗アレルギー薬を飲み始めるのだそう。

小松先生の診察を受けるアスリートたちにも「バレンタインデーから抗アレルギー薬」と言っているのだとか。

年中花粉症の人は……

それでは、複数の花粉や、1年中なんとなく花粉症が続くといった人にはどのような対処法がよいのでしょうか。

「まずはアレルギーの原因が何であるかを調べてみること。これは血液検査で特異的IgGを測定して簡単に調べることができます。アレルギーを引き起こす原因の花粉が分かれば、花粉が飛ぶ時期に合わせて対処できますし、アレルギーの原因が花粉ではなく、ハウスダストやダニ、ペットなどの動物などの場合もあります。花粉症やアレルギー疾患の治療の基本は、まずその原因(アレルゲンといいます)を突き止めて、アレルゲンに暴露しないようにすることです。また、『1年中なんとなく』という方には乳酸菌などのサプリメントが有効な方もいます。しかしそのような方でも一度は専門医を受診してアレルギーの原因を調べて、アドバイスを受けることをお勧めします」

自分が反応するアレルゲンを特定することが先決と小松先生。季節を問わず花粉症の症状があるなら専門医を受診してアレルゲンを調べてもらいましょう。

また、乳酸菌のサプリメントが有効かもというのはすぐにでも始められるので、要チェックです!

運動前・中・後の対策ポイント

最後に、プロのアスリートのみならず、アマチュアのアスリートにこそオススメの対処法を教えていただきました。

「屋外や広い体育館では季節によって花粉が飛び交っています。体や髪の毛、衣服についた花粉をなるべく減らすことでアレルギーを抑えることができます。運動中は頻繁に顔を洗う、運動前にシャワーを浴びて髪の毛を洗う、運動の合間に衣服を取り換える、これらを行なうことで、花粉症の症状は軽減します。また苦にならなければ、花粉症予防のゴーグルやマスクなども有効です」

運動中の洗顔や着替えなど、水分補給と一緒にできそうなことで花粉症を予防することができるんですね。運動前のシャワー、洗髪というのはなんだか目からウロコ、発想の盲点でありました。

これらの対策は、試合前や試合中にも実行できそうです。顔を洗うというのも、ウエットシートなどで代用できますね。

アレルゲンの把握とその予防・対策が大切

自分のアレルゲンを把握し、適切な予防対策を知ることは、花粉症にコンディションを崩されずにスポーツを楽しむには重要なこと。

さまざまな市販薬もあり、それらを併用しつつ気合で花粉症を乗り切っている、という人もぜひ小松先生のアドバイスを参考に花粉症との付き合い方を変えてみませんか。

スポーツでも花粉症でも、栄光の勝利を目指しましょう!

監修者プロフィール

小松ゆたか(こまつ・ゆたか)
長野県出身(昭和36年生) 医学博士 信州大学医学部医学科卒業後、日赤医療センター、東京大学病院、国立スポーツ科学センターなどで内科医、スポーツドクターとして活躍し、医学教育・スポーツ科学教育にも従事。鹿屋体育大学客員准教授。アトランタ・シドニー・アテネ・北京・ロンドンと5回のオリンピックにチーム・本部ドクターとして帯同。
【公式サイト】http://www.komatsuyutaka.com/

(本記事は初出2018年5月16日から再編集し公開いたしました)

<Text:京澤洋子(アート・サプライ)/小松ゆたか事務所>