フィットネス
2020年8月3日

“スグに始めて、長く続けられる”筋トレ。「スロトレオフィス」のススメ

 トレーニングの一番の悩みは、三日坊主。いくら効率的なメソッドや効果的な道具を使っても、続かなければ意味がありません。

 そんな悩みを解消すべく、取材をしたのが、健康経営への意識が高い企業で続々と導入が始まっている「スロトレオフィス」という筋力トレーニング。ウォーミングアップ2種+部位別2種(日替り)を実施し、15分で完了するというもの。今回は競歩の元日本記録保持者・シドニーオリンピック代表でもあり、考案者でもある栁澤哲さんにスロトレオフィスのポイント、そしてトレーニングを続けるコツをお伺いしました。

ポイントは「ゆっくり動かす」「関節を伸ばしきらない」

▲競歩の元日本記録保持者であり、シドニーオリンピック代表の栁澤哲さん

──スロトレオフィスとは?

オフィスで行う筋力トレーニングで、東京大学の理学博士・石井直方先生が考案された『スロトレ』を僕がアレンジしたものです。トレーニング時間は、仕事に支障が出ないギリギリの15分間。「ゆっくり動かす」「関節を伸ばしきらない」の2点を意識することで、効果的に筋力を高めます。加圧トレーニングと同じ理論ですが、器具を使わず自分の力加減で血流をコントロールするのがポイント。企業で組織的に行うことで、出勤するだけで強制的にトレーニング時間が確保されるので、続けやすいのです。

▲業務スタート前の朝に行う「スロトレオフィス」

▲ウォーミングアップ2種+部位別2種(日替り)を実施(写真提供:株式会社協和)

──とても良さそうですが、勤務先にスロトレオフィスを導入してもらうのが難しい場合は?

会社によって違うと思いますが、例えば、社員同士で任意のチームを作り、ある程度の期間、続けてみてください。メンバーの健康診断結果に明らかな差が出れば、トップに導入を検討してもらえるかもしれません。

──数値でそこまで差が出るでしょうか?

僕が所属する株式会社協和では、2011年にスロトレオフィスを始めたところ、2015年にはメタボ対象者が全国平均値より約8ポイント低くなりました。

トレーニングを続けるコツは?

──すごい効果ですね。では、トレーニングを続けるコツは?

好きなスポーツをひとつ始めることです。トレーニングそのものを目的にするのではなく、好きなスポーツの体力作りのためにやってみてください。体力がつくとスポーツがもっと楽しくなり、どんどんトレーニングをしたくなります。

──なるほど。しかし、私のように根性がない人だと、それでもサボってしまいそうです。栁澤さんのようなエリートアスリートであれば楽しいと思うのですが。

いえ。僕はもともとエリートではありません。小学校の少年野球部、中学のバレーボール部、どちらもすぐ辞めてしまって、「自分はなにをやっても続かない」と劣等感の塊でした。高校の陸上部で初めての大会は、5000m走でビリから2番目と散々な成績でしたし。競歩では日本記録を13年保持しましたしオリンピックも出ましたが、うまくいかない時期もあり、とてもエリートとは言えません。でも、競歩も試合に出ることも好きで、とても楽しかったのです。「楽しい」「好き」が続ける一番のコツだと思います。

──それはとても勇気づけられるお話ですね。ところで、オフィス勤務でない方には?

スロトレオフィスは、オフィス内で平服でもできるようにアレンジされているので、学校や家庭などでも大丈夫です。

生活の全てがトレーニング!

──しかし、「勤務先でやる」という縛りがなくなると、忙しさに負けてしまいそうです。

実は、トレーニングを毎日続けられない理由は「ない」んですよ。忙しくてもできるので。たとえば電車やレストランなどでは、座席に浅く腰掛けて脚を少しだけ浮かせるようにすると、脚と腹筋が鍛えられます。電車に乗るときは、進行方向に向いて立ってつり革に捕まるだけで重力がかかりますから、けっこうなトレーニングに。階段は、かかとまでしっかり踏んで上がるようにするとスクワットのような効果があり、お尻と太ももが引き締まります。また、ゆっくり時間をかけて一段抜かしで上がっていくのも効果的です。

──通勤時間や外出先、休日でもトレーニングは可能ということですね。

基本的に「立つ」だけで、人はトレーニングをしているようなものです。抗重力筋という筋肉が背中、お腹、お尻や脚などにあるのですが、それらの筋肉は立つだけで常に負荷がかかっています。家の中でも立ってテレビを見るだけで身体が変わりますよ。

──なるほど。生活の全てがトレーニング、とも言えますね。

そうですね。あとはなんでも無駄な動きをつけること。大きくしゃがんで立ち上がったり、膝を高く上げたりすることで、筋肉に負荷をかけることができます。トイレでスクワットとか(笑)。どんなに忙しくても、トレーニングは毎日できます。楽しんでやってみてください!

[プロフィール]
栁澤哲(やなぎさわ・さとし)
ウォーキングトレーナー。競歩の元日本記録保持者(13年間)。シドニー五輪出場・各種国際大会での入賞などトップ選手として活躍。現在はエイジングケアブランドfracora(フラコラ)を運営する株式会社協和で社員として働きながら、山梨学院大学競歩コーチを務め、ウォーキング講師、トレーニングコーチとして指導を行っている。
《取材協力》株式会社協和

<Text & Photo:長谷川京子(H14)>