2018年6月1日

著者は“足治療の専門家”。走りの悩みを根本から解決する『ランニングの成功法則』|スポーツがしたくなる今月の1冊

 身近な運動として、多くの方が取り組んでいるランニング。しかし、せっかくランニングを始めても、怪我を理由にやめてしまう方が少なくありません。あるいはトレーニングに打ち込んでいるのに伸び悩みを感じ、モチベーションが保てなくなってしまう方もいるでしょう。

 今回ご紹介する『ランニングの成功法則』(著者:木村誠/出版:主婦の友社)は、そうした悩みを根本から解決してくれるかもしれません。私自身、ランニングの指導を行う立場でもありますが、読み終えて目からウロコの内容でした。

著者は“足の治療”の専門家

 ランニングの専門書籍は、今や書店に行けば山のように見つけられます。その中で本書の特徴といえば、まず著者自身が挙げられるでしょう。本書を執筆されている木村誠さんは、「RUNART 足の治療院 -駒沢公園-」を営む治療家。しかもランニングに特化した、まさに“足の治療”におけるスペシャリストです。この治療院には、開院2年で約1,000名もの方が、遠方からも含めて訪れているとのこと。そして木村さんご自身もフルマラソンはサブ3、さらに砂漠レースも走破されているランナーです。

 治療家といっても、得意とする分野や知識・技術はさまざま。多くの治療院では多種多様なスポーツ、あるいはリハビリまで含めた治療を行っています。しかしランナーであれば、やはり“ランニングに詳しい”ことは治療院を選ぶ際に重要なポイントです。これは書籍も同様。怪我予防や改善、ランニングパフォーマンスの向上などに関する書籍は多々ありますが、「どれだけ著者が足に詳しいか」という点で見ると、本書は抜きん出ているといえます。

モノ・プラン・カラダから原因を深掘りし、根本的な解決に導く

 ランナーが抱える痛みなどの悩みについて、本書は“根本的な解決”を軸として解説されています。たとえば痛みが起きた際、マッサージやストレッチ、あるいは専門家の施術などによって、痛みを改善することはできるでしょう。しかし痛みの起きる原因が解決されていなければ、すぐ再発してしまう可能性があります。本書に書かれているのは表面的な解決ではなく、その原因から根本的な解決を導くための内容。つまり悩みを解決するというより、悩みが起きなくなるためのノウハウといえるでしょう。

 もちろん痛みだけでなく、走力アップなど結果に繋げるうえでの具体的な内容も含まれます。シューズやインソールなどのギア選びから実践的なストレッチ、トレーニングの組み立て方、あるいは栄養補給まで。ランニングするうえで“変えられるもの”として、モノ・プラン・カラダの3つを挙げ、それぞれに取り組むべきアクションを提案してくれます。ただ「こうすればいい」と促すのではなく、その理由づけが明確に添えられているため、読んでいて納得感があるはずです。

 走るとはどういうことなのか。目標達成に向けてその本質から見直すために、とても有益な情報を教えてくれるでしょう。もちろん、これからランニングを始めようという方にとっても、理想のランニングライフを送るうえでバイブルとなり得る1冊です。少しでもランニングに悩みや不安を抱えている方は、ぜひ1度、目を通してみてください。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>