仲間と成長するスポーツコメディ映画『がんばれ! ベアーズ』|スポシネ:観たらスポーツしたくなる映画
元マイナーリーグ投手の呑んだくれオッサン監督と、超弱小少年野球チームの子どもたちが起こす奇跡を描いたスポーツ・コメディ映画『がんばれ! ベアーズ』。
1976年公開の本作は、名優ウォルター・マッソーと最年少アカデミー受賞テイタム・オニール主演の少年野球映画の古典ともいえる作品で、監督はスポーツ映画の草分け的存在のマイケル・リッチー。のちの野球モノ映画に多大な影響を与えたといわれる傑作だ。
70年代アメリカ西海岸を舞台に描いた少年野球映画の古典
70年代のアメリカのファッションやどこかのんびりした時代感、タバコをふかしてハーレーを乗り回す不良少年や、大人びた口をきく生意気な態度の子どもたち。それがみんな小学生。公開から40余年経ったいま観てもなかなかにセンセーショナル。
そういえば、同年に公開されたロバート・デ・ニーロ主演映画『タクシードライバー』のジョディー・フォスターも、13歳の娼婦だった。アメリカってある意味、スゲー(余談)。
『がんばれ! ベアーズ』の見どころ
ピッチングもダメ、守備もダメ、打つのもダメのダメが3拍子そろった「ベアーズ」は、地元の少年野球チームからバカにされるガラクタチーム。そこにウィスキー入り缶ビール片手にやって来た雇われ監督もやる気1%。監督就任1週間後に開幕したリーグ戦の試合では、26対0の惨敗。ってか、アウトひとつ取れずに試合放棄でゲームにもならない。
それでも彼らは奇跡を起こす。やる気1%だった監督が勝つことに俄然こだわり始め、戦力強化のため元恋人の11歳の娘をチームに誘い、バイクを乗り回す不良少年をスカウト。女の子ながらコントロール抜群の豪腕ピッチャーと、攻守に優れた運動センスを持つ不良少年の加入でチームの士気も上がり、開幕試合の惨敗がウソのような快進撃を始める。
リーグ戦で、なんと決勝までコマを進めたベアーズ。腐っても元プロ選手のオッサンの采配と、やる気になった子どもたちの気持ちがひとつになって、野球の神様が降りてきたのだ。これぞ「成せば成る」のスポコン!? なのか?
「勝つ」ことより大切なチームスポーツの醍醐味
ダメな大人と生意気落ちこぼれの子どもたちが起こす、まさかの奇跡に理屈抜きで楽しめるお決まりのストーリーだが、しかし単純に「成せば成る」だけがテーマではないのは、達者な演技で観客のココロをわし掴みにする個性的な子役たちが教えてくれる。
勝つことに囚われたオッサン監督が勝利至上主義に走り、正々堂々と試合に挑む子どもたちの気持ちもおかまいなしにチームワークを無視した指示を出す。当然、子どもたちの不満は募り、チーム内の雰囲気も最悪に。そんな試合の中、「野球は9人でするものだ」とつぶやく少年の言葉がココロに響く。
終盤、ベアースがもしかしたら優勝するかも、というところで物語が大きく動く。監督は、ベンチにいる控えの選手全員を試合に出場させる。自分が出ることで負けてしまうと心配する子は試合に出さないでというが、監督はこんな言葉でその子の背中を押す。
「おまえはベンチを温めるために生まれてきたのか?」
「さっさと行ってベストを尽くしてこい!」
勝つことも大事だけど、チームで戦うスポーツにはときにもっと大切なものがある。戦っているのは1人ではないということ。一緒にひとつの目標に向かってがんばる仲間とベストを尽くすこと。同じ時間を共有し、同じ悔しさや同じ喜びを分かち合うこと。それは子どもでも大人でも同じだ。
口の減らないクソガキどものくせにいじらしいほど純粋なベアーズの奮闘を観て、チームスポーツの醍醐味をぜひ味わって欲しい。映画のラスト、超ポジティブに自分たちの未来を見る子どもたちのキラキラ輝く瞳に思わず「イェ〜イ!」(サンシャイン池崎風)と叫んでる自分に出会えるかもしれない(笑)。
『がんばれ! ベアーズ』
DVD発売中 ¥1,429+税
NBCユニバーサル・エンターテイメント
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<Text : 京澤洋子(アート・サプライ)>