東京五輪「聖火ランナー」に応募した理由│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#36
アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。
8月いっぱいで募集されていた東京オリンピックの聖火ランナーに甘糟さんが応募したそうです。応募の理由などについて綴ってくれました。
なんとなく触れてみたかったのです、2回目の東京五輪
しつこいですが、本当に暑い夏でしたね。夏は暑い方が気分が出るけれども、限度ってものを超えてました。年々その傾向は強いようで、来年の夏が心配です。だってオリンピック。なにしろオリンピック。最近のネットによくある調子に乗った文章の真似をしてみました……。
東京オリンピックについてはいろいろ思うことがありますが、勝手に身内のような感覚を抱いております。何しろ私は東京オリンピックの年に生まれたものですから。甘糟りり子、西暦1964年、昭和39年にこの世の中にやってきました。年齢や生まれ年を聞かれると、「東京オリンピックの年です!」なんて張り切って答えていたのですが、もはや「前回の」と枕詞をつけなくてはならなくなりました。同級生には、選手の名前からつけられた子もいたし、やたらと「聖」の字をつけるのも流行りましたねえ。
で、ですね。私、なにを思ったのか、神奈川県の聖火リレーのランナーに応募してしまいました。締切ぎりぎりの8月31日にネットで申し込んだのです。興味はあったのですが、ぼんやりとその気持ちを放置していて、締め切りの日に1人で盛り上がってパソコンを開きました。
まあね、当たるとは思いませんが、でも、なんとなく触れてみたかったのです、2回目の東京オリンピック。
聖火ランナーの募集にはいくつかの方法があって、コカ・コーラやトヨタなどのスポンサー枠のほか、各都道府県枠というのもありました。複数応募も可能だそうですが、私は住んでいる神奈川県の枠だけに絞りました。聖火リレーのコースが神奈川県を横断するのは3日間。6月29日に箱根→伊勢原→小田原→大磯→平塚→茅ヶ崎→藤沢、6月30日に三浦→横須賀→鎌倉→海老名→厚木→相模原、最後が7月1日で川崎→横浜。鎌倉は鶴岡八幡宮も通るそうです。ミーハー心がうずきます。
▲聖火リレートーチのデザイン:Tokyo 2020提供
神奈川県枠だと日程を指定できたので、私は最初の二日間に絞りました。やっぱり地元の鎌倉かその近辺を走りたいですからね。なんだけど、今こうして書きながら、出生地である横浜も含んでおけば良かったと後悔しております。絞るってことはそれだけ確率が低くなりますもんね。
応募理由は400字以内。自分が東京オリンピックの生まれ年ということを猛アピールしました。それから地元愛も。カマクラ、カナガワ、愛してまーす! いや、そうは書いてないけれど、そんな勢いで言葉を連ねました。
神奈川県枠には推薦者とコメントも必要でした。応募要項を書いていたのが締め切りの日。あわてて、白戸太郎さんにLINEをしてみました。白戸さんはロンドンマラソン挑戦の時のコーチ&伴走者。白戸さんに頼まなくて誰に頼むのか、なんです。
「やってみようよ!」とすぐに返信をくれまして、盛り盛りのコメントをくれました。いや、あれは盛ったわけではない、白戸さんの素直な気持ちだと思うことにします。てへっ。
そんなこんなでバタバタしつつも、無事申し込みは完了。あとは運を天に任せるだけです。
神奈川県の HPで確認したところ、定員51名の聖火ランナーに対して8417名の応募があり、よって倍率は165倍だそう。オワタ……。だよねえ。そりゃあ、箱根やら海沿いやら鶴岡八幡宮から横浜赤レンガをバックに聖火を掲げて走ってみたいよねえ、みんな。ちなみに、3対2で男性が多く、40代から50代の応募が多数だそうです。昭和39年生まれ、絶対に応募している人がたくさんいると思います。参加料はありませんが、現地までの交通費は自己負担だから、そのあたりが年齢層に現れているのでしょうか。
なーんて、あれこれ確認したり思案したり、ちょっとだけ期待しちゃったりするのが楽しい。12月以降、当選者のみに通知が来るそうです。
ダメ元の応募ですが、結果はどうあれ追ってご報告させてくださいね。
[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。近著に『鎌倉の家』(河出書房新社)、『産まなくても、産めなくても』文庫版(講談社)。
<Text:甘糟りり子/Photo:Getty Images、Tokyo 2020提供>