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もう隠さない。って、何を?┃新連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#1

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 今回、MELOSで新たに作家の甘糟りり子さんによる連載がスタートします。アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持つ筆者。実は、ランニングのほか、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負しているそう。この連載では、スポーツのあれこれをつまみ食いしながら、気になるあの話題やトレンドに、ときに鋭く、ときにゆる~く切り込んでいきます。

 今回は、最近では見かけることが多くなった、女性のあのトレーニングスタイルについて。

増え始めた“勇者たち”。なんでそんなに堂々と?

 はじめまして。この度、こちらでスポーツにまつわるあれこれを書き綴ることになりました。スポーツは見るのもするのも大好きです。流行りものにも目がありません。まずはウエアの話題から。

 ちょっと前の秋晴れのある日の午後のこと。海岸線をジョギング中、ついに恐れていたことが起きてしまいました。例のあの波が、トレーニングジムやヨガスタジオから、海沿いのランニングコースにまでやってきたことを目撃したのです。

 向こうから軽やかに走ってくるスタイルのいい女性は、黒いロングタイツ一枚に、グレーのTシャツを合わせていました。長袖のそのTシャツはウエスト部分が斜めにカットされており、ぱきっと割れた腹筋が見え隠れする。最近噂の腹筋女子でした。ウェーブのかかった長い髪を束ね、デニム地のキャップを目深にかぶっていて、なんというか、こう、「ちょっと時間が空いたから、サクッと走ってます」てな雰囲気が漂ってます。ファッション雑誌風に例えてみれば、「ヌケ感」ばっちり、というか。

 それに比べて、私のいでだちは、というと、タイツにランパンを重ね、首にはネックマフラー、左腕にiPhoneホルダーを巻きつけ、ランニング用のサングラスにビーツのイヤフォンまで装着するという重装備。たかだか5キロくらいのジョギングだというのに。

 彼女を振り返って見直してしまいました。そして、走り去る後ろ姿を見て、ランニングの際も、もはやランパンは不要なアイテムになってしまったことを悟ったのでした。ポケット付きのランパンは確かに便利だけれど、ファッション的には「タイツだけ、ランパンなし」というのが、今のスタイルなんですよね。

 昨年あたりからでしょうか。トレーニングの際、タイツ一枚でおヒップの形丸出しのまま挑む勇者どもが増え始めたのは。

 多分、これ昨今のヒップ・コンシャスが関係しているのではないかと思います。鍛える部位を意識するのがトレーニングの基本ですし、ならば鏡で目視しながらワークアウトしたいですよね。それに、いよいよ仕上がってきたら見せびらかしたくなるのが人間というもの。せっかくのおヒップをランパンで隠すなんて、もったいない。

 しかし、ジムやらヨガスタジオやら行く先々で観察していると、必ずしも「仕上がったおヒップ」だけではないんです。すんごいボリュームのそれだったり、逆にぺったんこのそれだったり、少々引力に負けちゃっているそれでも、みなさん堂々とタイツ一枚でさらけ出されているではありませんか。や、心中はわかりませんが、堂々と見えるのですよ。タイツ一枚だと。

 ファッションの流行り廃りには、必ず何かしらの世の中の気持ちが現れているもの。ランパンから解放されたおヒップには、「遠慮がちで小さなものだけが美しいわけではないよ!」という意識が込められているのではないでしょうか。ひいては、かっこいい体型は一つのフォルムにあらず、理想はすらっとした華奢な体型だけではない、世の中そんな方向に向かっているように思います。だから、隠すことなんてないわけで。

 何事にも流されやすい私(ここが自分の最大の長所だと自負しております)は、こうなったらタイツ一枚スタイルに手を出すしかないでしょ、と鼻息荒くリーボックのショップに向かいました。

 入念に試着を重ねた結果、初心者には柄物がいいことがわかりました。黒の無地が無難なように思えますが、意外とハードル高い。おヒップだけではなく、足の太さも目立ちます。柄の方が七難隠してくれるのです。色合わせも派手な方がなにかと目くらまし的な効果がありますが、私はカラフルなのはあまり着ないのでモノトーンを選びました。リーボックの方に、トレーナーのAYAさんも履いているという真っ赤なロングタイツを勧められましたが、んなもん、私には無理に決まってます。いくら流されやすくても、それには流されませんでした。やー、でも、あの赤いタイツで走ってたら、かっこいいだろうなあ。

▲筆者が持っているタイツ

 さて、タイツの柄と同じくらい大切なのは、トップスのシルエット。しっかり絞った身体ならタンクトップでもブラトップでもタイト目なTシャツでもありなんでしょうけれど、誰でも様になりやすいのはビックシルエット。そう、つまり洋服を選ぶのと一緒なんです。トップスかボトムか、どちらにボリュームを持たせるとバランスが取りやすい。

 そんなこんなでいろいろと買い込み、すっかり運動モードになりました。私にとっては、ウエアとかギアってやる気スイッチの一つです。なのですが……、正直いうと、ジムではタイツ一枚でも平気なんだけれど、屋外のジョギングではまだランパンがないと落ち着かない。なんだかスースーしている気がしちゃいます。

 がんばります。心のトレーニングを。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。

<Text & Photo:甘糟りり子>

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