2023年3月9日

WBC2023、日本は優勝できる?過去の大会の振り返りと2023の見どころ (1/2)

WBC(ワールドベースボールクラシック)は、4年に1回開かれる野球の世界大会だ。第5回大会は2021年に予定されていたがコロナで2年延期となった。今大会はMLB(大リーグ)からも一線級の選手が多数参加。また、日本代表「侍ジャパン」は、プロ野球(NPB)のトップスターに加え、MLBでも屈指のスター選手になったエンゼルスの大谷翔平やパドレスのダルビッシュ有も参加、かつてない陣容となっている。その歩みと見どころを紹介しよう。

WBCってどんな大会? 第1回~第4回大会を振り返る

WBCはもともとMLBのバド・セリグコミッショナー(当時)が「サッカーのワールドカップのような国際大会を作りたい」と思い立って始めた大会だ。しかしセリグ氏のひざ元のMLB球団のオーナーたちが、選手を出場させることに難色を示した。「我々はスター選手と巨額の契約を結んでいる。その選手、とくに投手がリーグ戦と関係のないWBCでけがや故障をしたら、球団の大事な資産が失われる」と選手を出し渋ったのだ。

2006年の第1回大会では、アメリカはデレク・ジーター、ケン・グリフィJrなどスター選手も出場したが、投手陣は一流とは言えなかった。一方で日本は、NPBも各球団も「名誉なこと」とトップ選手が参加。MLBからイチローも参加した。しかし日本は第1ラウンドでは宿敵韓国に敗れて2位で通過、第2ラウンドでも韓国に敗れ、アメリカにも負けたが得失点差で辛うじて準決勝に進出。ここで韓国と対戦して初めて勝利、決勝ではキューバに勝って初代優勝国となった。西武、松坂大輔は3試合に登板して3勝、MVPに選ばれた。

2009年の第2回大会、第1ラウンドで日本は中国、韓国に連勝したが、敗者復活戦で勝ち上がってきた韓国に敗れまたもや2位で通過。第2ラウンドはキューバに勝つも韓国に敗れ、今度は逆に日本が敗者復活戦に回って韓国と3度目の対戦で6-2と勝って準決勝進出。アメリカに9-4で勝って、決勝では韓国とこの大会5回目の対戦で5-3で勝って連覇した。この大会でもMLBのボストン・レッドソックスに移籍していた松坂大輔が3試合に登板して3勝し、連続でMVPに選ばれた。連続出場のイチローは打撃不振にあえいだが、決勝の韓国戦で試合を決めるタイムリーを打った。

2013年の第3回大会では、日本と韓国は別の組になり、対戦はなかった。第1ラウンドで日本はキューバ、中国、ブラジルと同組になり、キューバに敗れたものの2勝1敗で通過、第2ラウンドは3連勝で準決勝に進出した。しかしプエルトリコに1-3で敗れてベスト4に終わり、3連覇はならなかった。日本は楽天の田中将大、巨人の杉内俊哉、阿部慎之助、坂本勇人、日本ハムの中田翔などNPBのトップ選手を集めたが、MLBからは参戦しなかった。

2017年の第4回大会では、第1ラウンド日本はキューバ、中国、オーストラリアに3連勝で1位通過。第2ラウンドもオランダ、イスラエル、キューバを破り6連勝、初めて無傷で準決勝に進んだ。しかしアメリカに1-2で敗れ、2大会連続でベスト4に終わった。巨人の菅野智之、楽天の則本昂大、ソフトバンクの千賀滉大、ヤクルトの山田哲人、DeNAの筒香嘉智などが出場。MLBからはアストロズの青木宣親が出場。当時日本ハムの大谷翔平は一度は出場を表明したが、けがのため辞退した。

第5回大会では祖国のために出場するMLBのスター選手が続々

2006年の第1回大会と、2023年の第5回大会では、ルールもいろいろな違いがある。

第1回の第1、第2ラウンドは敗者復活戦のあるダブルイリミネーション方式で行われた。このために韓国と何度も対戦したが、今大会は第1、第2ラウンドともに単純なリーグ戦だ。また第1回は予選なしの16か国の参加だったが、第5回は予選も含めて28か国が参加。本大会にも20か国が参加する。すそ野が広がったのだ。

今大会はアメリカもこれまでとは力の入れ方が違うと言われている。なぜなのか?

一つは2021年の東京オリンピックで13年ぶりに行われた野球競技で、日本が金メダルを取ったことが大きい。オリンピックにはMLBは選手を出さない。そんな中で日本が優勝したが、MLB選手から「これでいいのか?」と言う声が出たのだ。

また、エンゼルスの大谷翔平の同僚で、MVP3度の大選手、マイク・トラウトが「俺は出るぜ!」と早々に手を上げ、キャプテンになった。これに刺激され、次々とスター選手が名乗りを上げた。またドミニカ共和国、ベネズエラ、日本などMLB選手を輩出している国もスター選手が祖国のために出場することになったのだ。

さまざまな国、リーグで活躍する選手で構成される侍ジャパン

WBCでは、普段はライバルとして戦っている選手たちが、同じユニフォームを着て戦う。日本でいえば、セ・リーグで打撃タイトル争いをしているヤクルトの村上宗隆と巨人の岡本和真、パ・リーグのエースの座を争っているオリックスの山本由伸とロッテの佐々木朗希がチームメイトだ。

またMLBで活躍しているエンゼルスの大谷翔平、パドレスのダルビッシュ有、今年からレッドソックスに移籍した吉田正尚なども侍のユニフォームを着る。ちなみに大谷翔平の今季年俸は約39億円、ダルビッシュ有は31.6億円、吉田正尚は吉田正尚は22億円、NPBでの最高年俸は山本由伸の6.5億円だから、MLBとNPBとでは文字通りけた違いだ。

また今大会では「両親のいずれかがその国の出身」「二重国籍」などの条件が合えば、その国生まれでない選手も参加できる。その条件で侍に参加したのが、カージナルスのラーズ・ヌートバーだ。ヌートバーは母親が日本人。彼のミドルネームは母方の祖父の名の「タツジ」だ。

ヌートバー家は、子供の頃に田中将大、斎藤佑樹など当時、甲子園で活躍した高校選手がアメリカ遠征した時にホストファミリーになった。ヌートバーは「日本の若きスター」にあこがれを抱き、それから「日本代表」になることを夢見るようになった。彼にとってまさに「夢がかなった」のだ。

一次リーグも決して油断できない。WBC 2023の見どころ

第1ラウンドでB組の日本は韓国、中国、チェコ共和国、オーストラリアと対戦する。

お隣の韓国はKBOと言うプロ野球リーグがある。今回もKBOを代表するスター選手が出場する。中でも李政厚(イ・ジョンフ)は、父の李鍾範(イ・ジョンボム)も大スターで、一時は日本の中日でもプレー。息子の李政厚は名古屋生まれだ。また本塁打王の朴炳鎬(パク・ビョンホ)も出場する。韓国は日本戦には猛烈にライバル心を燃やす。WBCでの対戦成績も4勝4敗と互角だ。

中国は一時はプロリーグも盛んにおこなわれていたが、オリンピック競技でなくなってから下火になった。ただ、昨年までソフトバンクでプレーしていた真砂勇介が加わった。彼の父親は中国出身だ。

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