2018年1月24日

超楽しい!平昌オリンピックで注目された「カーリング」ってどんな競技?【ルール解説&体験レポ】

 1998年の長野大会以来オリンピック連続出場中の女子チームに加え、平昌(ピョンチャン)大会では20年ぶりに男子も出場するとあって日本国内で大注目の「カーリング」。低い姿勢でストーンを投げて、デッキブラシのようなもので氷を掃くこの競技、ぱっと見、誰にでも簡単にできるのではと思ってしまいませんか? そこで今回、明治神宮スケートセンターで行なわれた体験スクール(東京カーリングクラブ主催)に参加してきました!

カーリングのルールは? カギは股関節の柔らかさ?

 カーリングは、1チーム4人(リード、セカンド、サード、スキップ)で戦う対戦競技です。1チーム8個、形16個のストーンを投げ終わった時点で、ハウス(円)の中心に一番近いストーンを持つチームだけが得点できます。ここまでが1エンド。主要な大会では10エンド行ない合計得点を競います。長時間かかるため、体力はもちろん精神力も必要となるスポーツです。

 この日の体験スクールの参加者は20名。募集定員の上限の人数で、とても賑やかです。平昌オリンピックの開催が近づき、カーリングへの関心も高まっているようです。

 まずは準備体操から。スケートリンク内は氷で滑りやすいので、怪我を防ぐために入念に行ないます。特に股関節や足首のストレッチが重要なのだとか。確かにカーリングは低い姿勢で体を伸ばすイメージがありますよね。

 準備体操を終えると、カーリングでおなじみの道具「ブラシ」を貸してもらいます。ブラシといっても、いわゆる毛の生えたブラシではなく、先がナイロン製の布のようなものでできています。テレビを見ていたデッキブラシのようなものとはだいぶ違って、シンプルで扱いやすそう。「ブラシを使って大きい石を滑らせる競技」という知識だけしかない筆者ですが、上手に使いこなすことが出来るのでしょうか……。不安に思いながらも、ブラシを持って、いざリンクへ!

 最初はリンクに慣れるため、すり足で歩く練習を軽く行います。慣れてきたところでさっそくカーリングの基礎となる滑りの動きを教えてもらいます。選手が履いているシューズは、利き足のソールに滑らない素材、逆のソールには滑りやすい素材を使ったカーリング専用のものだそう。私たち初心者は普通のスニーカーで、前に出す足の下に滑るシートを置いて、それを踏みながら進む練習をします。

 まずは壁を蹴ってみます。おぉ~、思った以上によく滑る! 脚を前後に大きく開き、下半身全体でコントロールしてバランスを保ちながら真っ直ぐ進んでいく感覚です。これは体幹が強くないと難しいかも。もともと身体が柔らかい私はそれほど体勢がキツいとは感じなかったのですが、周りの皆さんの様子を見ると、特に男性はかなりキツそうでした……。最初に股関節と足首を重点的にストレッチしたのは、このためだったんですね。体がほぐれて安定してくると、だんだん真っ直ぐ、そして長い距離を滑れるようになってきます。これをクリアすれば、もうとっても楽しくなってくるんです!

 次に「ハック」と呼ばれる蹴り台があるスタート地点から、ストーンを持って滑ってみます。ストーンは思った以上に重いのですが、氷の上を滑らせると程よい重量感を保ちながら進んでいくので、何も持たずに滑るよりも安定感があるように感じます。

 続いてストーンを回転させながら投げる練習。ストーンが回転する様子が女性の髪の毛のカールに似ていることから「カーリング」と名付けられたといわれているそう。ストーンの回転に伴う動きが重要ポイントなんですね。力加減を意識して回転させるとすぐに投げたい方向に滑らせるコツがつかめてきました。 

身体の“軸”が大事!

 さて、いよいよ蹴り台からスタートしストーンを、ハウス(円)に投げる練習。片手にストーン、片手にブラシを持ちながら真っ直ぐにストーンを投げてみます。少しでも身体の軸がブレたり投げる力が弱いと、ハウスの中心までストーンが届かず……。この感覚をマスターするのが、一番難しかったです。

 最後に、4人ずつに分かれて対戦ゲーム。チームみんなで、どの方向にどの距離まで投げるかという戦略を練りながら行なうので、実はけっこう頭を使うんです。一緒のチームの方のほとんどがカーリング初心者さんでしたが、皆さん今日1日で充分に習得されてとてもお上手でした! 

 結果、筆者チームの勝利! みんなでフォローし合いながら行なうことで、自然とチームに一体感が生まれてとても楽しかったです。

 1日の体験を通しての感想はズバリ、「……あれ、経験ゼロの私でも意外とできちゃってる!?」。ただしそれは、私の身体がもともと柔らかいから。身体が硬い人は、日々ストレッチをし、関節を徐々に柔らかくしてから臨んだ方が確実に早くカーリングを楽しむことができると思います。氷に慣れてくればくるほど、もっと長い距離を滑れるようになりたい、ストーンを正確に投げられるようになりたい! といった感情が芽生えてきました。とはいえ、緻密な戦略を練ったうえで、思った場所にストーンを投げられるようになるまではどれだけかかるのでしょう……。やっぱりオリンピック選手ってすごいです。

日本代表選手になるチャンスがあるかも? カーリングの魅力とは

 東京都カーリング協会の小谷野良明さんに、カーリングの魅力についてお話を伺いました。

――カーリングに年齢制限はあるのでしょうか?

いいえ、子どもから大人までどんな年齢の方でも楽しんでいただけると思います。カーリングが盛んな北海道や青森、軽井沢では小さい頃からカーリングをしている人がたくさんいます。このスクールにも60歳以上の方々がよく来られていたり、今日の体験スクールのように大学生など若い方々がいらっしゃったり。幅広い年齢層に親しまれている競技です。もちろん、体力的な問題が関係してくるとは思いますが、日常生活を問題なく過ごされている方であれば、何歳でも始められますよ。

――カーリングをしたことのない方に、カーリングの魅力・おもしろさを教えてください。

カーリングは、「氷上のチェス」と呼ばれるほど、点を得るために高度な戦略が必要となる競技です。そのため、ストーンを上手く投げることやブラシで氷を掃くといった運動面だけでなく、頭脳面も鍛えられます。チームのみんなで戦略を立てることは、カーリングならではのおもしろさだと思います。冬季オリンピックの中で、対戦競技はこのカーリングとアイスホッケーだけなんですよ。

またカーリングは、日本代表選手になるのが身近な目標として考えられるんです。たとえば、東京の競技人口は現在160名程度なので、本格的に始めていただければご自身も約160名のうちの一員になれるということです。僕自身もカーリングを始めたきっかけはオリンピック選手になりたいと思ったからで、始めてからいろいろな試合にすぐに参加することができてうれしかったのを覚えています。そういった、大きな目標を身近に感じられる点も、カーリングの魅力の一つだと思います。

――平昌オリンピックでのカーリングの見どころは?

ニュースなどで流れるカーリングの情報は、ストーンがぶつかり合った瞬間や、ブラシで掃いている場面しかクローズアップされないことが多いです。カーリングの試合というのは戦略を練る場面も非常に重要なので、一試合を最初から最後まで見ていただき、チームで作戦を練っている様子にも是非注目してほしいです。

 筆者も体験スクールで実際に行なった対戦ゲームでは、チームの皆さんと作戦を練っている時間がとても楽しく、大きな達成感を得ることができました。寒い季節にしか味わうことのできないウィンタースポーツの楽しさを、皆さんも是非一度体験してみてください。

 

[取材協力]
東京都カーリング協会 [HP] http://www.tokyocurling.com/
東京カーリングクラブ(TCC) [HP] https://www.tokyocurlingclub.jp/

<Text:小池乙史(オフィス・サウス)/Edit&Photo:アート・サプライ/Photo:Getty Images>