2018年7月18日

“ゆるトレ”著者が解説。眠っている身体機能を引き出す『身体意識を鍛える』|スポーツがしたくなる今月の1冊

  世の中には、実にさまざまなスポーツ競技が存在します。しかし多くの方は、バスケットボールのシュートや野球のバッティングなど、競技独自のスキルを磨くことに時間を費やすことでしょう。もちろん、競技するうえでそれは必要なことです。しかしいくらスキルを磨いても、土台となる身体能力そのものが高められなければ、思ったような成果は生み出せないかもしれません。

 筆者も以前、マラソンで記録更新の“壁”にぶち当たったことがありました。試行錯誤し、とり入れたのが、身体バランスや四肢連動、脱力といった「身体の使い方」です。結果、目標は達成することができ、現在は指導する場面でも同様のトレーニングをとり入れています。

 今回ご紹介する1冊は、「ゆるトレ」などで知られる高岡英夫氏の著書『身体意識を鍛える―閉じ込められた“カラダのちから”を呼び覚ます法』(著者:高岡英夫/出版:青春出版社)です。本来備わっていながら、潜在的に眠ってしまっている身体機能を引き出すためのメソッドが綴られています。多くの競技者にとって、意識改革に繋がる1冊となるでしょう。

ポイントを7つに絞った明確さ

 本書では身体を効率的かつ効果的に使うための方法論を7つのポイントに絞り、これらを「身体意識」と呼んで解説しています。ただメソッドが長い文章で解説されていくのではなく、キッチリと7つに明確化されているため、読み手にとっては情報を整理しやすいでしょう。

 一つひとつのポイントについては、「どんな状態が正しいのか」「正されることでどういう効果があるのか」「正されていないとどうなるのか」が整理され、そのうえで図解を用いながら解説されます。特に身体の特定部位などにフォーカスした内容では、“それが身体のどの場所なのか”を図解。さらに著名なスポーツ選手などが例として挙げられており、イメージを持って理解しやすい構成となっています。

 また、本書は7つの身体意識が重要であることを認識させるだけに留まりません。これに対して自分自身がどのような状態なのか、チェックシートを用いて確認できるようになっています。そのうえで具体的なトレーニング方法も明示されており、単なる情報・知識の習得ではなく、実践まで考えられた流れといえるでしょう。いくら重要な知識を得ても、実践に繋げなければ意味がありません。しかし実践においても、ただ真似るだけでは効果的ではありません。特に身体というものは人それぞれ違うため、チェックシートによる確認は、本書を活用するうえで重要な意味を持っています。

身体意識を鍛える具体的な20のトレーニング

 いくら理論を学んでも、何をすべきか道標がなければ、それを活かすことは難しいでしょう。本書では身体意識を鍛えるのに有効なトレーニングを、図解と文章解説の組み合わせを用いて具体的に紹介しています。難しく感じるものはほとんどありません。いずれも、自宅や屋外など誰でも実践できるものばかりです。上級者向けのトレーニングも含まれていますので、一つひとつ実践していきましょう。

 なお、本書には図解をメインとした『図解トレーニング 身体意識を鍛える』(著者:高岡英夫/出版:青春出版社)もあります。トレーニング実践においては写真が用いられており、本書よりさらに分かりやすいでしょう。メソッドとしては本書をオススメしますが、実践がうまく取り組めない方は、合わせて読んでみてもいいかもしれません。筆者もさらに正しい動きを実践するため、『図解トレーニング 身体意識を鍛える』を合わせて持っています。

 ただの競技力ではなく、自己の身体に備わった能力そのものを高めて開放する。アスリートのみならず趣味としてスポーツに取り組まれている方も、ぜひ1度、読んでみてほしい1冊です。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>