2017年9月13日

スポーツツーリズムで沖縄観光を盛り上げる!「スポーツアイランド沖縄」の役割と魅力とは

 観光地として国内のみならず海外からも大勢の人々が集まる沖縄。その大きな特徴は、やはり青く美しい海にあるでしょう。実際、ダイビングやシュノーケリングをはじめ、マリンスポーツを楽しみに沖縄を訪れる方はたくさんいます。

 そんな沖縄が現在『スポーツアイランド沖縄』と銘打ち、スポーツツーリズムに力を入れているのをご存知でしょうか?この事業を沖縄県からの委託を受けて、県内のスポーツ資源を活用した観光誘客促進を行っているのが、一般財団法人 沖縄観光コンベンションビューロー。

 これまでの取り組みや課題、またスポーツにおける沖縄の魅力などについて、沖縄観光コンベンションビューローの平川美由紀さん、仲里樹さん、並里義史さん、志伊良早紀さんにお話を伺いました。

重点となる8つのスポーツアクティビティ

 県外あるいは国外において、“スポーツアイランド沖縄”としての認知を拡大させ、スポーツツーリズムの誘客促進を図ることを目的とした取り組みを行っています。昨年度はスポーツをテーマとしたツアー造成のための事業者向けプロモーションやターゲット層拡大に向けた新たなコンテンツの開拓などを実施。そして本年度は、全国各地のスポーツ愛好家に向けた県内スポーツ大会への誘客や一般観光客を対象としたスポーツアクティビティ情報の発信など、スポーツアイランド沖縄の普及および定着化に取り組んでいるようです。

「以前はスポーツ愛好家、つまり本気で競技に取り組んでいる方々を中心にプロモーションを行っていました。その際、重点とされていたのはマラソンとサイクリング、ゴルフです。これを平成28年度から、一般観光客の皆様にも沖縄旅行の中で気軽に楽しめる8種目のスポーツアクティビティを提案し、ターゲット層を拡大しています」(並里さん)

 主にプロモーションを実施しているスポーツアクティビティは8つ。ランニング、ポタリング(サイクリング)、ゴルフ、サップ、サップヨガ、ヨガ、トレッキング、ホースライディングです。例えばマラソン大会への参加だけでなく、“気軽にスポーツを楽しむ” という目的で沖縄に訪れた多くの方にスポーツに触れ親しんでほしいと話してくれました。

「現在は全国各地のスポーツ大会で沖縄ブースを出展したり、スポーツアイランド沖縄のWEBサイトやSNSを通じて情報発信したりという活動が中心です。お陰さまで、スポーツを楽しみにお越しくださる方は少しずつ増えてきました」(並里さん)

 徐々に成果が見え始めているという『スポーツアイランド沖縄』の取り組み。では実際、沖縄にはスポーツするうえで、どのような魅力があるのでしょうか。

気候や自然条件、アクセスの良さが魅力

 沖縄には、冬場になるとプロ野球チームなどの春季キャンプをはじめとした多くのプロスポーツチームが合宿に訪れます。私も以前、冬場に沖縄県内のマラソン大会に出場した際、通りかかった球場でプロ選手が練習しているのを見ました。沖縄は1年を通して温暖な気候のため、県外が寒さや雪などに見舞われていても、通常通りのトレーニングができるわけです。

「まずは、温暖な気候であるということ。これは国内において、沖縄の持つ一番の強みでしょう。加えて、県民のホスピタリティにも触れて頂きたいですね。スポーツをフックに沖縄を訪れて頂ければ、きっと満足度の高い時間を過ごしてもらえると思います」(並里さん)

 沖縄というと、居住地域によっては遠い印象を受けるかもしれません。しかし昨今はLCCの登場登場と航空路線の増加に伴い、これまでより安価に沖縄へ行くことができるようになりました。所要時間も、例えば成田空港からLCCを使えば、那覇空港までは約3時間。意外と近く感じるのではないでしょうか。

「現在は沖縄県体育協会を中心に『スポーツコミッション沖縄』として合宿や大会の誘致を目的とした事業も進めています。同様にスポーツ軸での取り組みですが、やはり気候やアクセス環境などにはメリットを感じていただけるようです。砂浜でのトレーニング、あるいは暑い中でのトレーニングなど、他地域とは違った練習ができるのも、沖縄ならではの強みですね」(仲里さん)

 スポーツコミッション沖縄では、合宿等を希望する方々へ細かなコーディネートを行ってくれるとのこと。条件・目的などに応じて、適する施設の紹介や審判の紹介といったアドバイスを提供しています。これに沿って施設予約等を進めれば、スムーズに合宿や大会開催が実現できそうです。

情報発信に加えて受け入れる側の整備も

 スポーツツーリズムは、ただ誘客を促進すれば良いというわけではありません。運営に当たって、それ以外にも取り組むべき課題があるようです。

「まず国外からいらっしゃる方が増えるに伴い、避けられないのが受入側の多言語対応です。そして、何よりも安心・安全に配慮したスポーツ観光の環境作り。例えばサイクリングレーンの整備など、まだまだ課題は多いと思います。そして整備が進めば、誘客促進のためにまた情報発信していく。この誘客と受入の両輪を上手く回していくことが大切ですね」(並里さん)

 また、例えばマラソン大会を見てみると、『NAHAマラソン』『おきなわマラソン』のような有名大会に大勢のランナーが集まる一方で、いまだ多くの人へ周知されていないマラソン大会もたくさん存在しています。ある程度規模のある大会だけでも、離島まで含めるとその数は30にも及びます。そうした大会の魅力を伝え、知ってもらうことも、課題の1つと言えそうです。

「もちろん大会だけではなく、まだまだ皆さんに伝えられていない沖縄の魅力がたくさんあります。例えば北谷町にある防波堤は、潮が引くとその下を走ることができます。あるいは南部の与那原町付近には、海沿いを走れる気持ちいい公園があるんです。南城市にあるまっすぐな海沿いコースは、サイクリングにもオススメ。こうした情報も私たち県民だけに留めず、もっと発信していかなければいけませんね」(並里さん)

 例えば現地案内付きのポタリングやランニング、トレッキングツアーなど。“知られざる沖縄”の魅力を知る機会が増えれば、もっと沖縄のスポーツツーリズムが盛り上がるかもしれません。

 実際、私も那覇市内から糸満市方面へと少しランニングしてみました。頭上には青空が広がり、ふと横を見ればエメラルドグリーンの海が。車移動では見落としてしまう景色でしょう。そして走った後は、そのまま海に入ってクールダウン。「また走りに来たいな」と思わせてくる体験でした。

 現在、女性を対象としたヨガツアーなども企画されているとのこと。観光だけでなくスポーツを楽しむ場所として、今後沖縄がどのように発展していくのか楽しみです。スポーツ旅の具体的なアクティビティ情報などは『スポーツアイランド沖縄』公式ホームページで紹介されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text&Photo:三河賢文>