2019年12月15日

最終回を前にクドカンがコメント発表「この年齢で、この体力で『いだてん』と出会えて良かった」

 2019年大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』。日本で初めてオリンピックに参加した「日本マラソンの父」こと金栗四三(かなくり・しそう)と、1964年東京オリンピック招致に尽力した田畑政治(たばた・まさじ)の物語を、脚本家の宮藤官九郎さんが、笑いあり涙ありの“大河ドラマ”にまとめ上げました。

 そしてついに、12月15日(日)に最終回を迎えます。脚本を務めた宮藤さん、チーフ演出で最終回の演出を担当した井上剛さんから、最終回に向けてコメントが寄せられましたのでご紹介します。

[あらすじ]最終回「時間よ止まれ」(12月15日放送)
1964年10月10日。念願の東京オリンピック開会式当日。田畑(阿部サダヲ)は国立競技場のスタンドに一人、感慨無量で立っていた。そこへ足袋を履いた金栗(中村勘九郎)が現れ、聖火リレーへの未練をにじませる。最終走者の坂井(井之脇 海)はプレッシャーの大きさに耐えかねていた。ゲートが開き、日本のオリンピックの歩みを支えた懐かしい面々が集まってくる。そのころ志ん生(ビートたけし)は高座で『富久』を熱演していた──。

宮藤官九郎さんコメント全文

「歴史の資料を元にドラマを描くのは、僕にとってチャレンジでした。残されている膨大な資料は、たくさんのヒントが得られたと同時に、足かせにもなりました。とはいえ、当然、記録に残っていない部分もたくさんあり、そこは自分で埋めていっていいと都合良く解釈して描いたシーンもたくさんあります。資料はドラマを描くときのヒントであり、材料みたいなものを与えてくれるもの。これとこれを組み合わせたらどうなるだろう?って、自分で考えていく感じです。そのなかに架空の人もいて、絶対に交わらないはずの金栗さんと志ん生が間接的につながるという。それは架空の人物を配置したからこそのおもしろさですよね。ですから、史実に沿ってドラマを描くのも楽しかったです。よくよく考えたらオリジナルのドラマを書いているときも、身近な誰かをモデルにしたり、役者さんにあてて書いている時点でもう100パーセント僕の頭にあるものではないので、ふだんから同じようなことをやっているんだなと気づきました。

『いだてん』の執筆が決まった当初は『最後まで書き終わらないうちに体を壊したらどうしよう』という怖さもありました。でも、全てを終えた今振り返ると、やっぱりいい経験でしたね。今だからできたと思います。年を取ったらここまで情報処理ができなかったと思うし、逆に若かったらもっと自分を出したくなって、実在の人物よりも自分の頭で考えたことを優先したくなっちゃったかもしれません。そう考えると、この年齢で、この体力で『いだてん』と出会えて良かったなと思います」

井上剛さんコメント全文

「最初に台本を読んだときは『これだけの内容を60分に詰め込めるかな』と思うような宮藤さんの迫力を感じました。しかも制作陣全員の思いがあふれているので、台本に書かれていること以上に行間を拾っていかないといけないしと意気込みました(笑)。『初回から繋がっている!と感じてもらえるためにどう見せるか』を意識しながら、撮影だけでなく編集や音楽も大車輪の活躍で、何とか凝縮したドラマを60分で描くことができたと思います。

最終回といえばいつもそうですが、終盤のスタッフの疲弊度や差し迫るスケジュールにも頭を悩ませながら(笑)、 それでも“ワンチーム”となって全員が力を出し切ったことで、自信を持ってお届けできる最終回になったと思っています。

これほど身近に感じられる大河ドラマはこれまでなかったと思います。まさに現代を生きる私たちと地続きの物語。それを掲げてドラマを紡いできたので、視聴者の皆さんにとっても過去とのつながりを実感できるドラマであればいいなと思っています」

<Text:編集部/Photo:NHK提供>