開催延期が決まるまで私もコーチもピリピリしていた。今はできることをやっていけたら│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for 2020~」#37
東京オリンピック・パラリンピックの開催延期が3月24日、正式に決まりました。約2年前からMELOSで連載エッセイを執筆してくれている、寺田明日香選手(陸上/100mハードル)は、東京オリンピック出場を目指し、調整を続けているアスリートです。
我々MELOS編集部が今回の延期決定を受け、真っ先に浮かんだのは寺田選手でした。自身のSNSではいち早く声明を発表し、「身体は老いる物、それを私にしかない身体と技術でカバーしていこうと思います!」(本記事に最後に全文記載)とコメントしていたのでファンのみなさんも安心していたことかと思います。
今回の発表から数日経ったいまの心境を改めて聞いてみることにしました。なお、今回のインタビューはメールでやりとりした内容を収録したものです。
「辞める選択肢はないよね」
−− 寺田さんが発信したSNSのコメントを見て安心しました。延期が決まって2日ほど経ちましたが、どんな心境ですか?
世界の情勢を見ると、あと数ヶ月後に東京でオリンピックができるという雰囲気ではなくなっていたため、延期はあり得るだろうと考えていました。延期が事実となり、「本当に延期なのね」とは思いましたが、大きく驚くことはありませんでした。今はできることをやっていけたらと思っています。
−− とはいえ、代表選考スケジュールは未定の状態ですね……。アスリートは、本番(大会など)から逆算して計画を立てているかと思いますが、現状のトレーニングの内容に変更はありますか?
春先に出場予定だったレースも軒並み中止や延期となり始めているため、どのレースに出場できるかは現時点ではわかりませんが、からだづくりや技術練習を継続して行っていきます。レーススケジュールが確定次第、そこに向けてまたトレーニングスケジュールを組み直そうと思っています。
−− コーチの高野(大樹)さんとはどのような話をしましたか?
「ホントに1年延期じゃん!」みたいな話をしました。ただ、延期になってみて、私も高野さんもお互いピリピリしていたことに気が付きました。発表の次の日の練習は、緊張の糸が切れたのか、少しのほほんとしてしまいました……(笑)。
−− 愛娘の果緒(かお)ちゃんや夫の峻一さんらご家族から言葉を掛けられたことがあれば教えてください。
果緒は状況の把握ができていなかったので「2020のオリンピックは、果緒が小学生になってからやることになったんだよ」と説明しました。自分が新しいステージに上がった時にオリンピックが行われるので、心なしか少しうれしそうでしたが、「ママ、ずっとヨーイドンするの〜」と、そこは少し不満げでした(笑)。夫は、「辞める選択肢はないよね」的なことは言っていました。延期は予想できていましたが、実際に決まって一番我が家で驚いていたのは、取材対応もあったので、夫だと思います(笑)。
寺田明日香の今後に乞うご期待!
以下、寺田選手が3月25日に自身のSNSで発信したコメント全文です。
【東京オリンピックについて】
2020東京オリンピック1年延期に関して、多くの方々から心配してくださるお声を頂き、心から感謝しています。
また、”東京オリンピック"の話題で、皆さまの頭の中に私の顔を思い浮かばせて頂いたこと、とても嬉しく思っています!(ナイス存在感🤟)
さて、私は2018年12月に、東京オリンピックまで約1年半と迫った中で陸上競技に復帰し、現在もトレーニングを進めています。
今年30歳となり、女性アスリートとしてはベテランの領域です。
出産とラグビーを挟んだことにより、痛みには少し耐性が出来ているものの、やはり10代の頃とは違いちょこちょこと細かい痛みが出ることが多くなりました。
年齢だけで考えると、女性アスリートで30歳を超えてオリンピックで戦うなんて、と思われがちですが、実はそんな選手は世界にはざらに存在します。
ありがたいことに、私は割と小さい頃から運動能力と身体には恵まれていると言われて育ってきました。
若い頃は"天才"と言われることが嫌で嫌で仕方がなく、「才能があるとしたら、欲しい誰かにくれてやる。」と言うほど捻くれた奴でした。
ただ今となっては、人よりも手脚を長く、割とどんな動きも適応できるようにしてくれた両親には感謝しています。
「お前はこんなもの(レベル)ではないだろう。」
ハイテクACの中村監督をはじめ、色んな先生方に言われてきた言葉。
昔の私ならソッポを向く言葉だと思いますが、今はありがたい激励の言葉だと受け取れる様になりました。
実際、30年使ってきた身体も、まだ完全には使いこなせていません。
身体は老いる物、それを私にしかない身体と技術でカバーしていこうと思います!
完成形寺田明日香に乞うご期待!
といいつつ、競技は私一人で出来るものではなく、現在もスポンサー各社をはじめ、チームあすかスタッフや応援してくださる本当に多くの方々に支えられています。
「寺田明日香ともう少し楽しめる時間が増えた」と思って頂き、時間を共にして頂ければ嬉しいです。
と、言うことで長々と書きましたが、私は元気です!(笑)
逆に、皆さまのことの方が心配です。
(かおの小学校と学童も心配です)
手洗いうがいしてね。
[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。
◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63
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<Text & Photo:MELOS編集部>