2017年10月17日

過酷なだけじゃない!フルマラソン「うるぎトライアルRUN」で、絶景と食事も楽しむ(後編)

 10月8日(日)に長野県南信州にある売木村で開催された「うるぎトライアルRUN」。前回は、“日本一過酷”と呼ばれるコースについてご紹介しました。急傾斜のアップダウンだらけ、さらにラストはトレイルコースという、その名に恥じない素晴らしい(キツい)コースでした。

 しかし本大会の魅力は、コース以外にもたくさんあります。今回はコース上から見えた売木村の素晴らしい景色、そして人々との触れ合いから感じた温かさにスポットを当ててお伝えしていきましょう。

木々に囲まれた清々しいランニングコース

 売木村は長野県南端に位置しており、とても自然豊かなエリアです。車なら浜松や豊橋から約2時間で到着できるため、トレーニングに訪れるランナーも少なくありません。

 レース中も、周囲を見回すとたくさんの緑に囲まれていました。時おり風が服と木々の揺らぐ音が聞こえるほか、鳥のさえずりなども耳に届きます。

 峠道は木陰が涼しく、秋という時期のため足元には落ち葉も。まるで木々のトンネルを通っているかのようなコースでは、自然の雄大さを誰もが感じられたことでしょう。

 田んぼでは、稲木に干された稲が何度も見られました。また、まだ刈り取られていない稲も多く残っており、特に都市部に住む方々にとっては珍しい光景だったのではないでしょうか。

 特に素晴らしかったのが牧場からの風景。大会時のみ通ることのできる牧場ですが、空が晴れていたこともあり、その眺めはまさに絶景でした。

 目の前には山々が連なり、自分もその中の一部にいるのだと感じ取れます。つまり、それだけの高さへと駆け上がってきたわけですが、この景色を見ると、疲れなど吹き飛ぶかのようでした。スタッフの方々も「あの景色が自慢なんだよ」と仰っていましたが、まさに“登る価値あり”な絶景スポットです。

居心地の良いエイドステーション

 本大会では、ゴールを除いて7箇所のエイドステーションが設けられています。しかし前半のエイドは、その姿に少し驚きました。なぜなら、なんとエイドステーションが“無人”なのです。

『無人エイド』と描かれた看板と、その横に置かれた飲み物や食べ物。本大会ではマイカップ持参が必須なため、確かに飲み物程度ならスタッフは不要です。本大会はコースが峠ばかりの過酷なものですから、エイドステーションを設置するだけでも大変でしょう。そう考えると、たとえ無人でもエイドステーションを用意してくれているだけで有り難く感じます。

 もちろん、すべて無人ではありません。数カ所のエイドステーションには、しっかりスタッフの方々がスタンバイしていました。牧場入口にあるエイドには、なんと重見選手の姿も。皆さんと会話していると、ついつい居心地が良くて長居してしまいます。

 河川公園のエイドステーションでは、こちらのバッジが手渡されました。大会のオリジナルグッズですが、もちろんここまで走り切らなければ受け取れません。通過チェックの意味も持っているのかもしれませんが、記念に残る面白い仕組みだと思います。以後、私はバックパックの胸部分に、このバッジを付けて走らせていただきました。

 エイドステーションで提供される食べ物も、やはり一味違っています。印象的だったのは、おそらく手作りと思われる『山羊のチーズケーキ』。とても濃厚で甘みがあります。その他にも、イチゴやトマト、ジャムの乗ったクラッカーなど、スタッフの皆さんと会話しながら美味しくいただきました。

走った後も美味しい食べ物で満足

 ゴールすると、1人1人に完走証とメダルが手渡されます。壇上に登ると、なんとなく自分が誇らしく感じられるのは私だけでしょうか。

 完走メダルは、なんと売木産の檜で作られていました。完走証の順位・タイムが手書きという点は、とてもアットホームで温かみを感じます。また、ランナーとしては中身が非常に気になる、72歳で7大陸マラソンに挑戦したランナーの著書『無我夢中』もいただきました。

 そして完走後は、『ゴールエイド』が用意されています。こちらでは色んな飲み物・食べ物が提供されていますが、もちろん食器類は持参。すると、想像以上に豪華な食事が提供されました。

 焼き魚に豚肉、コロッケ、おにぎり、豚汁、デザートの和菓子まで。とてもボリューム満点です。「おかわり自由だからね!」とのことで豚汁は2杯頂き、一気にお腹いっぱい。ごちそうさまでした。走った後まで、満足&満腹となる素敵な大会だと思います。

 私は今回、浜松からレンタカーで売木村を訪れました。車で片道2時間という距離のため、場所によっては日帰りでの参加も可能です。“走る”ことで村の活性化に取り組んでいる売木村。大会を通じ、村全体が一丸となって盛り上げようとしている気持ちが伝わると共に、ランニングに適した自然環境を存分に感じ取れました。コースは非常に過酷なものの、「また走りたいな」と思わせてくれる大会です。

▼大会情報
うるぎトライアルRUN
http://www.urugi.jp/2017/04/108.html

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text&Photo:三河賢文>