2025年8月7日

「父親からの愛情不足」で育った人は、どんな特徴がある?もう手遅れ?男女別に解説

父親との関係は、男性の心に大きな影響を与えると言われています。とくに、幼い頃に父親からの愛情を感じられなかった、あるいは尊敬できる存在として見ることができなかった場合、その影響は大人になってからもじわじわと表れます。

家庭や仕事、恋愛の中で繰り返すモヤモヤの正体は、もしかすると“父性不足”による心の影かもしれません。子どもの成長発達にくわしい臨床心理士、公認心理師で一般社団法人マミリア代表理事の鎌田怜那さん監修の記事をまとめました。

まずは父親の愛情が不足したまま育った「男性」にフォーカスしていきます。

子どもにとっての父親の心理的役割とは

子どもにとって、父親の存在は母親とはまた違った「心理的な役割」を持っています。

父親は、母親が担う「無条件の愛情と安心」の役割とは少し異なり、社会とのつながりや自立の感覚を教えてくれる象徴的な存在です。

たとえば、父親の関わりを通じて、子どもはルールや秩序、外の世界との関係性を学びます。父親がどのように感情を表現し、人と接し、自分自身を律しているか。その姿から「社会での自分のあり方」や「男性像」を学ぶのです。

とくに男の子にとっては“将来の自分像”として、女の子にとっては“異性との関係の土台”として、父親は無意識のうちに大きな影響を与えます。

父性不足で育つと、男性の場合、とくに「自己肯定感」と「男性としてのアイデンティティ」で影響が出やすい

男性の場合は「自分はどういう存在か」「どういう男でいたいか」という自己像の形成において、父親との関係が非常に深く関与しており、それが揺らぐとさまざまな面に不安定さが生まれやすいと考えられます。

とくに顕著なのが、「男らしさ」や「リーダーシップ」といった社会的に求められる男性像に対する強いプレッシャーです。

男性にとって父親は、自分が「どんな男になりたいか」を無意識に学ぶ“モデル”のような存在です。その父親から十分な愛情や関心、承認を得られなかった場合、「自分には価値がない」「男としてダメなんじゃないか」という深い自己否定感を抱きやすくなります。

その結果、社会的な場面で自信を持てず、必要以上に他人の評価に依存する、逆に虚勢を張って“強い男”を演じてしまうこともあります。

「自己肯定感が高い人は、他者も自分も大切にできる人」。心理専門家が考える、自己肯定感が高い人・低い人とは

また、感情をうまく表現できない、人に弱みを見せることが怖いと感じる男性も多くいます。それは、幼い頃に感情を受け止めてもらえなかった経験が根っこにあることも少なくありません。

結果として、パートナーシップや友人関係でも、どこか壁を作ってしまう、深い関係を築くのが苦手になる場合があります。

また、父性を引き継げていない感覚から、自分が家庭を築くこと、父親になることに対して不安を感じる人も少なくありません。「尊敬できる父親像」がなかったために、自分が父親になったときどう接すればいいのかわからず、戸惑いや不安を感じやすいという点もあるでしょう。

続いて、「父親からの愛情不足」で育った女性について見ていきましょう。

「父親からの愛情不足」で育った女性に見られやすい特徴

いい父親を見てこなかった、放置されていたなど、父親から愛情を貰えなかったと感じたまま育った女性には、いくつか共通傾向があります。

もちろんすべての人に当てはまるわけではありませんが、傾向として次のような特徴が見られることがあります。

自己肯定感が低い

「自分は愛される価値がない」と無意識に思い込みやすく、自信が持てないことが多いようです。褒められても素直に受け取れず、否定的に考えがち。

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男性との距離感が極端になりやすい

愛情に飢えていて「愛されたい」気持ちが強く、依存的になるパターン。または逆に、「男性は自分を傷つける存在だ」と男性に対して不信感や警戒心が強く、親密な関係を避けるパターンもあります。

恋愛で「愛情の確認」を繰り返す

パートナーからの愛情を何度も確認しないと安心できず、不安定な恋愛をしやすい傾向にあります。一方的に尽くす・我慢する恋愛に陥るケースも。

過度な頑張り屋・承認欲求が強い

誰かに認められたいという思いから、無理をしてまで努力し続けてしまいます。他人の期待に応えようとしすぎたり、意見に合わせようとしたりと、やがて自分の本音がわからなくなることも。

感情コントロールが難しく、自己否定に陥りやすい

少しの出来事でも強く落ち込む、怒りをうまく扱えないといった傾向があります。

父性不足で育つと、女性の場合、とくに「恋愛面」で影響が出やすい

父親という存在は、特に女の子にとって「初めて関わる異性」「安心して甘えられる男性モデル」としての役割を担っています。

父親からの無条件の愛情や承認を受け取れていないと、大人になってから男性との信頼関係の築き方や、愛されているという実感をうまく受け取れないケースも。

たとえば、相手に依存しすぎる、愛情を試すような行動をとってしまう、逆に男性を信用できず距離を取りすぎる、といったパターンが代表的です。自己肯定感の低さも相まって、「愛される価値がないのでは」「見捨てられるかも」といった不安がつきまとい、恋愛が不安定になりやすいのです。

ただ、影響が出るのは恋愛だけではありません。先述の通り「他人との距離感」「自分の感情の扱い方」「ストレス耐性」などに影響が出る人も少なくありません。

「親からの愛情不足で育った大人」の特徴とは。こんな問題行動や思考の偏り、ありませんか?

大人になってからじゃ手遅れなの? 今からできる対処法

では、そうした状態で成長してきた場合、リカバリーはできないのでしょうか。

まずは「父親不足」であることに気づくこと

男性の場合

なんだかうまくいかない……を繰り返しているのであれば、そのことに気づき、認め、向き合うことが必要になります。

自己肯定感が低いと、まずこれがとっても難しく、偏屈になってしまい、なかなか認めきれません。この状況では、「父親不足」による影響を無意識に受け続け、人間関係や仕事において“うまくいかない感じ”が付きまとうようになります。うまくいかない原因を、周りのせいだと思いがちで自分で自分の言動に責任が取れないのです。

困ったことに、とくに男性は、過去に「父親不足」によって、傷ついてもトラウマを抱えていても「今の自分があるのは、これまでの経験のおかげ」と結論づける傾向にあります。

まずは「父親不足」を認め、向き合えるよう、心を決めましょう。

女性の場合

先生や上司が年配の男性だとトラブルが起きやすいなど、繰り返しているパターンがあるかもしれません。これまでを振り返ってみましょう。

女性だと、トラブルがあると「自分が下手だから」「自分がバカだから」など、トラブルの原因を「自分のせい」と思いがちです。

自分ばかり責めていると、繰り返しているパターンに気づきにくくなるので、うまくいった時はどんな時?うまくいかなかったのはどんな時? と、客観的に分析してみましょう。

次に、このことを誰かに話してみましょう

男性の場合

男性にとっては難しいことかもしれません。誰にでも話せる内容ではないので、話せる相手がいない場合はカウンセリングを受けてみましょう。

学生時代〜社会人の間は「父親不足」による影響でトラブルを繰り返したり、孤立したりしながらも、なんとか取り繕うことはできます。しかし、結婚や子どもが生まれたりといった、より親密で人生の大きな変化では誤魔化しが効かなくなります。

それまで“いろいろあったけれど、うまくいっていた”ことが、途端に“うまくいかない感じ”が強くなり、自己肯定感がより低くなっり、逃げ出したくなったり、落ち込みやイライラが激しくなったり……。そうなると、家庭内で自分の力を誇示しようとしたり、家庭外に癒しを求めたりするようになります。

結婚を意識し始めた頃から、カップルカウンセリングを受けるなどして、将来設計などを第三者と一緒に描いてみることをおすすめします。

子どもの頃の愛情不足、大人になった“今”にどう影響する?当事者が語る向き合い方

女性の場合

思い込みに気づく・新たな視点を得るためには、誰かに話を聞いてもらうことが重要になります。

女性の場合、話すだけでずいぶん楽になることもあります。誰にでも話せる内容ではないので、話せる相手がいない場合はカウンセリングを受けてみましょう。

学生時代〜社会人の間は「父親不足」による影響から、トラブルを繰り返したり、孤立したりしながらも、なんとか取り繕うことはできます。しかし、結婚や育児という、親密で人生の大きな変化では誤魔化しが効かなくなります。

それまで“いろいろあったけれど、うまくいっていたこと”が、途端に“うまくいかない感じ”が強くなり、何とか解決しようと、自己犠牲的に1人で何でも抱えてしまったり「うまくできな自分は捨てられる」という気持ちが無意識に刺激されて、勝手に夫婦関係が悪くなったり。

結婚を意識し始めた頃から、カップルカウンセリングを受けるなどして、将来設計などを第三者と一緒に描いてみることをおすすめします。

あとは練習あるのみ

男性の場合

認め、向き合えるようになる=自分の人生に責任を取る、ということ。「父親不足」で自己肯定感が低いと、トラブルを人のせいにしがちですが、“自分のことは自分で責任を取る”ことが、社会人としては不可欠なスキルです。

そのため、自分の問題に向き合えるようになってくると「父親不足」を克服しつつある兆しと捉えることができます。

あとは“責任を取ること”が定着するよう、繰り返し練習が必要です。ボランティアに参加したり、企画・プロジェクトに積極的に参加するなど、いろんな人と関わる機会を増やしてみましょう。

その中で“うまくいかない感じ”に気づいたり、トラブルに直面した時には、あなたが信頼できる人に指示・指導を受けてみましょう。

トライ&エラーを繰り返しながら、社会のお手本と思える人たち(父親的存在)からたくさん吸収し、自己肯定感を育てていきましょう。

父親との葛藤は誰にでもあります。素晴らしい父親であっても何らかの葛藤があり、「父親不足」による葛藤もあります。自分がどんな大人、社会人、親でありたいか……ぜひ客観的に考えてみてください。

男性が自分の「理想像」に気づく方法

女性の場合

女性は成長過程で「愛されている」ことを実感できていることがとても重要になります。そのため「愛されていない」と感じたら、その理由を探し続けてしまいます。

「父親不足」の人は、「みんなに愛されたい」気持ちが強いです。合わない人がいて当然なのに、みんなに好かれようとして疲れてしまいます。相手が男性なら色仕掛けしてまでも好かれようとして、自分はそこまで好きではないにもかかわらず行為に及ぶことも。

このパターンに気づかないまま繰り返していると、刹那的な恋愛を繰り返してしまい、身も心もボロボロ……ということも珍しくはありません。

その逆で、傷つきたくないために、極端に距離をとってしまい、なかなか他者と親密な関係になったことがないということも。

人間関係で「私嫌われたかも」などの気持ちが刺激されたら、立ち止まって出来事を振り返ってみましょう。こんなに動揺する必要ある? 嫌われたとして、何が不安? 何が心配?など。そして、無意識にしていた対処法と違う方法をやってみましょう。

そのためには、やはりいろんな人に聞いてみることが重要です。「私は〇〇な時、△△な気持ちになって、⬜︎⬜︎しがちなんだけど、みんなはどうしてる?」など、周りの人と一緒に対処法を考えてみましょう。

辛い時、「悩みを相談できる人」がいない。誰かに話を聞いてほしい…どう切り抜ける?

カップルであれば、ケンカの際に言いたいことも言えずに性行為で仲直りしていませんか? この解決方法はいずれ使えなくなります。

言いにくことも言える関係性を築けるよう、話し合ってみてみください。それで万が一別れるようなことになっても、自分を責めないで。あなたには合っていなかった相手だったということ。

父親との葛藤は誰にでもあります。素晴らしい父親であっても何らかの葛藤があり、「父親不足」による葛藤もあります。自分自身は父親に溺愛されていても、母親が蔑ろにされていた場合も心理的な影響は生じます。

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<Edit:編集部>