親子で楽しめる体幹トレーニング「ひこうきヨガ」ってなに?
子どもの頃「高い高ーい、ぶーんぶーん」と両親の足に乗っかり、ひこうきのポーズをした記憶はありませんか?何気なくやっていたあの動き、実は、子どものバランス感覚を養うのに有効で、また親の体幹トレーニングとしても非常に効果的な動きなのだそうです。
そうした動きの数々を独自の理論のもとにまとめ、親子で行うペアワーク「ひこうきヨガ」として提唱している“ひこうき王子”こと、林けんじ先生に、ひこうきヨガをすることでいったいどういったことが得られるのか、また通常のヨガとどこが一番違うのかなどについてお話を伺いました。
ひこうきヨガの創設
---ひこうきヨガとはどのようなヨガですか?
小さい時にお父さんの足に乗っかり、手足を伸ばして「ひこうき!!!」とやった経験はありませんか(笑)? 多くの人が一度は経験したことがあると思うのです。これを応用したものがひこうきヨガで、子どもの運動神経や親御さんの体幹、親子の信頼関係を向上させることができます。
--ひこうきヨガを始めたきっかけを教えてください。
自分に子どもが生まれたことが最大のきっかけでした。言葉でコミュニケーションが取れないので、非言語でのコミュニケーション方法を模索する中で、ひこうきヨガが生まれました。
--お子さんの誕生の他にも、ひこうきヨガを始めるきっかけはありましたか?
当時(2013年)、海外で流行していたアクロバティックパートナーヨガ(以下、AcroYoga)を日本で広めるための活動をしていたので、その影響もあります。
-- AcroYogaとは、どのようなヨガですか?
2人ペアで行うヨガのことです。1人で行うヨガとは違い、体幹やバランス感覚、コミュニケーション能力を養うことができ、ペアで楽しく行えるヨガとなっています。
--ヨガは1人で行うイメージがありましたが、ペアで行うヨガもあるのですね。
そうなんです。一般的にヨガというと、自分自身の内面(メンタル)と向き合うものという認識が強いですが、AcroYogaではペアとなる相手とコミュニケーションを取ることが必然的に求められます。AcroYogaの最大の魅力は、そうしたコミュニケーションを通じて、ひとつのものを創りあげる“共創”が生まれるということです。AcroYogaが大人2人で共創するのに対して、ひこうきヨガは親子で共創していくものなんです。私のヨガ教室では、この共創を通じてより良いもの創り上げていく感覚を感じてもらいたいと考えております。
共創を通じて社会性・仲間意識を養う
--親子で共創する感覚を味わうことができるとのことですが、それによってどのような効果が得られますか?
私が考える最も重要なことは、社会性や仲間意識が養えるということです。私のクラスでは、親御さんのことを“大きい人”、子どもたちのことを“小さい人”という呼び方をしています。なぜかと言うと、お互いを親子関係ではなく仲間関係であることを意識してもらうためです。親と子、それぞれが「個」の存在であることを理解しコミュニケーションを取らなければ、他者ないし他の集団に何も伝えることができないということを再認識してもらっています。
--お互いが「個」であること意識するために、親子間で気をつけなければいけないことはありますか?
親御さんには、子どもと対等の立場で接するよう指導しています。あるポーズが完成しなかったとき、親御さんは上から叱りつけるのではなく、どのようにしたら完成するのか子どもと一緒に考え、その後でアドバイスをしてもらっています。子どもたちには、何が難しくて、どうすればできるようになるのかを、親御さんに相談するように指導しています。親子にしかない感覚、ないし、あうんの呼吸に頼って完成させるのではなく、コミュニケーションを通じて完成さることで、お互いが「個」であることをより意識することができます。
親子で楽しく体幹トレーニング
--コミュニケーションを通じて、社会性や仲間意識を養っていくことができるということですね。他にひこうきヨガを行うことにはどのようなメリットがありますか?
親御さんからすると、単純に運動不足が解消されることですね。普段忙しくて運動に時間が割けないという方は多いと思いますが、ひこうきヨガは子どもとの時間を過ごしながら自身の体幹を鍛えられるので一石二鳥なのです。また、子どもの安全のためにも集中しながら行う必要があるので、より効果的なトレーニングになります。集中力が途切れてしまうと、身体の軸が崩れ、事故につながってしまう危険性があるので。
一方、子どもについては、運動神経を養うのに効果的です。私のクラスには「安心感を持とう!」という目標があります。たとえば、ひこうきのポーズを取る際、子どもはバランスが不安定な状況でポーズを取ることになります。この状況でリラックスをするというのはすごく難しいことなのです。その状況を何度も経験することで、自分の身体をどこに預ければいいのかというのが、感覚的に身についていきます。この感覚が子どもの運動神経に大きな影響を与えるのです。
私の子どもの話にはなりますが、水泳を習い始めた時、「手を伸ばしてひこうきのポーズ!」と言うと、早々に力の抜けた蹴伸びができました。身体の使い方や、力を抜く感覚を身につけることは、どのようなスポーツにも役立ちます。実際に私のクラスを受講している親御さんの中にも、よりひこうきのテクニックを向上させて、子どもを楽しませたい、運動神経を養わせたいという方が多くいらっしゃいます。
--トレーニングとしても効果的というお話がありましたが、具体的に身体にどのような効果がありますか?
足を上げるポーズは骨盤調整になるのと、股関節周りの関節筋が刺激され、身体の柔軟性が養われます。また、外側の大きな筋肉はリラックスさせて、内側の細かな筋肉(インナーマッスル)を刺激するため、体幹が鍛えられます。なので、身体は太くせず、引き締まった身体をつくるのに有効ですね。一方で子どもは、不安定な場所でひこうきのポーズを取るため、バランス感覚や身体の使い方を養うことができます。
ひこうきヨガは親子で共創することでコミュニケーション能力を養いながら、同時に運動神経やバランス感覚、柔軟性といった部分も鍛えることができるなど、あらゆる能力を同時に養えるヨガなのです。
[プロフィール]
林けんじ (はやし・けんじ)
1982年生まれ、東京都出身。国家公務員を経験後、タイの古式マッサージセラピストに転職。また、同時期にクラシックバレエや役者としてアクションを行うなど、実に多岐にわたる経歴を持つ。現在は、親子で行うペアワーク「ひこうきヨガ」の講師を行いながら、保育園に勤務。また、自身で設立したコミュニティー「Contact Arts Company」で表現活動を行なうなど、活躍の幅を広げている
【ホームページ】https://www.kenjihayashi.com
【Facebookページ】https://www.facebook.com/ContactArtsCompany/
https://www.facebook.com/hikokioji/
[取材協力]
ヨガBeyond 荻窪教室
【ホームページ】https://yoga-beyond.jp
<Interview:福田悠/Text & Photo:長田楓>