わたしのコロナ対策の記録。やっぱりランニングは気分転換になる│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#43
アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。
今回は、新型コロナウイルスについて。ついに2月26日には政府が今後2週間のスポーツや文化に関するイベントの開催について中止・延期などの対応をとるよう要請しました。鎌倉で暮らす甘糟さんが自身の現状を綴ってくれました。
まさか自分がマスクをしてまで走るようになるとは
コロナウイルスに関して、過剰に怖がらないほうがいいという意見もあるようですが、私は用心に用心を重ねています。自分がかかりたくないのはもちろんですが、人にうつしたら大変ですから。
ワクチンのあるインフルエンザと単純に比較はできませんが、3年前、予防接種を打っていたのにインフルエンザにかかってしまいました。高熱、関節痛、食欲減退でぐったり。3日間、2階にある仕事用の部屋にこもっておりました。同居する母が、時々お粥を作ってくれ、蜂蜜入りの紅茶と一緒に階段の上に置いてくれて、時間差でそれを受け取りに部屋を出る、というスタイルで生活しました。幸い、うちには化粧室は2つあるので、お互い使い分けました。
そんなふうに入念に対策をしたつもりでしたが、やっぱり高齢の母にうつしてしまったんですよね。そして、80を過ぎた母は症状が私よりひどく、肺炎を起こして入院することになったのです。3週間ほど入院しておりました。高齢者の肺炎は命の危険と隣り合わせです。大事には至りませんでしたが、うつしてしまった私はあれこれと後悔しました。
あの時のこともあって、今回はさらに気をつけているつもりです。幸い私のような物書きはもともとリモートワークみたいなものですが、それでも外出しなければならないことはあります。その際、マスクはもちろん、医療用の手袋をしてどんどん付け替えております。普段はプラスチックゴミを出さないことを心がけてはいますが、正直、まずは自分を守りたいので。使い終わったものは捨てずにためてあって、ある程度の量になったらアルコール消毒&日光消毒する予定です。玄関にはアルコールジェルを置いておいて、帰宅したらしつこく手を消毒しています。人が出入りする時も必ず消毒してもらっていますし、宅急便を受け取った時もその都度しています。大げさといわれても、少しでも不安は取り除きたいので。
アルコールのついた手でちょくちょく顔を触っているようで、かぶれてしまいました。仕方なく、ゆるく肌断食しています。クリームも乳液もなし。低刺激の化粧水のみでしのいでいます。思わぬところに弊害が出るものですね。
国の対策はどうにもこうにも頼りない。先日、私の住む鎌倉の保健所管内でも感染者が確認されましたが、公開されている情報が少なくて不安はさらに募りました。もう自分の身は自分で守るしかないのでしょうか。
直接的な防衛ではなくとも、免疫力も大切だと思います。ビタミンをたくさんとって、腸内環境を整えるサプリメントを服用しています。免疫力&体力を維持するには運動も必要ですよね。相変わらず、散歩のようなジョギングには定期的に出ています。マスクをして。
ちょっと前まで、まさか自分がマスクをしてまで走るようになるとは思いませんでした。しかし、今、まさかの出来事が起きています。
思ったよりは苦しくありませんでした、マスクでのジョギング。自然と苦しくならないように走っているのかもしれませんけれども。サングラスをすると、息で曇ってしまってさすがにキツい。そういう時だけ、ちらっとマスクをずらしています。こうなると走るというより本当に散歩ですね。
ついコロナ関連のニュースを追いかけてしまい、気分がどんよりしますが、走るのって、どんなにだらだらでもやっぱりいい気分転換になります。皇居周辺のように人が多い場所やエリアでのジョギングは控えた方が良さそうですが。
アルコール消毒のし過ぎで顔がかぶれて、マスクをしたままサングラスを曇らせてジョギングをする私を「大げさ」とからかう友人もいますけれど、私はまだ不安です。
[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。GQ JAPANで小説『空と海のあわいに』も連載中。近著に『鎌倉の家』(河出書房新社)、『産まなくても、産めなくても』文庫版(講談社)。
<Text:甘糟りり子/Illustration:Getty Images>