2020年5月18日

娘の成長を気づかせてくれた貴重な「おうち時間」│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート〜for2020〜」#40

 みなさん、こんにちは! 陸上競技の寺田明日香と申します。

 今月もステイホームが続いておりますが、みなさんはどんな「おうち時間」を過ごされているでしょうか?

 気温も上がり、夏に向かってまっしぐら! という季節になってきている中、熱中症も心配要素のひとつになってきています。家の中でも熱中症は起こり得るので、水分補給を忘れずに、健康第一で過ごして参りましょう。

 さて、今回は私の「おうち時間」の過ごし方と、その中で見えた娘の成長について書いていきたいと思います。

 最後まで、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

限定的だった「おうち時間」が一変

 新型コロナウイルスが流行する前の私の生活スタイルは、週4日練習(うち3日は午前午後の2部練習)で、練習がない日はデスクワークや取材対応、週末は家族との時間にあてていました。

 家族はというと、娘は平日9時~19時まで保育園。夫も平日は仕事に出ているため、家族がそろって顔を合わせる時間は、平日の朝と夜と週末。シーズン中は、週末に試合や遠征が入ることも多く、家族がそろう時間は限られていました。

 今年の3月上旬までは、4月のシーズンインに向けての活動ができていたため、合宿を数回入れたり、練習時間が長くなったりと、シーズンインに近づくにつれ家族との時間も少しずつ減ってきていました。

 そこから、ほんの数週間の間に日本で新型コロナウイルスが大流行し、東京オリンピックの延期が決まり、練習場が閉鎖になり、活動自粛期間(ステイホーム)になったため、減っていた家族との時間は、思いがけず急激に増加したのです。

娘と過ごす時間は私へのプレゼント

 こんなにも家族と同じ時間を共有することは、ラグビー選手として復帰した2016年夏以来約3年半以上もなかったことなので、最初の頃は食事の準備や自分のトレーニング時間、仕事時間の確保に困惑しました。保育園のありがたみや、“亭主元気で留守がいい”の大切さを、ひしひしと感じました(笑)。

 その一方で、ふだんの生活では、なかなか見られなかった娘の成長を毎日間近で見られるといううれしさも感じています。いつもは付き合えなかった、ちょっとしたお散歩や自転車の練習。週末は疲れ果てて、公園遊びやキックバイクの練習は夫に任せることがほとんどでした。反省……。

 短い時間ではあるものの一緒に外に出ることで、娘が私の想像以上に植物の名前を知っていること、怖がってなかなか挑戦しなかった補助輪なしの自転車を2日で克服したことなど、娘と過ごす時間が増えなければ見られなかったことかもしれません。

 また、ピアノや塾なども、ふだんは夫が送り迎えや付き添いをしていたため、娘が取り組んでいる姿を見られる機会は減ってしまっていました。それが現在は、毎日一緒に取り組めるようになっています。思いがけず、私の大きな悩みのひとつだった娘の生活習慣(いつも寝るのが22時過ぎ、起きるのは8時過ぎでした)も改善しつつあります(何もない日の5時半~6時起きはつらいけれど……)。

 そして、最も成長を感じた出来事といえば、先日の母の日の「表彰状」のプレゼントでした。多くのメディアでも取り上げていただききましたが、娘から100文字以上の手紙をもらったのは初めてで、「頑張ったんだなぁ」と、思わずウルっときてしまいました。

 もちろん、娘の成長にともない、困っていることもあります。それは、8月に6歳になる娘の“反抗期”です。娘が生まれてから、イヤイヤ期も含め何度か反抗期はやってきましたが、今回の反抗期は、率直に「難しい!」と感じています。

 まさに、「ああいえばこういう」。5年間の人生で得た言葉と知識、少しの常識、自分の意志と自信。これらの合わせ技で戦ってくる様は、自分が25年先にいることを忘れそうになるときがあります……。

 と、言いつつも、毎日のほとんどの時間を反抗期の娘と過ごすことは、今まで叶わなかったことなので、イライラすることはありつつも、大人になる過程を歩む娘と向き合えることは、やはりうれしいことなのだと思いながら過ごしています。

今だけの楽しみ方をみつけましょう

 1日のほとんどの時間を家族と過ごす中で、自分1人だけのトレーニング時間を潤沢に取ることは不可能なので、「できないことはできない」と割り切って、体幹トレーニングなどは娘に手伝ってもらいながら(重りになってもらいます)一緒に行うようにしています。彼女自身は、母親と少々アクロバティックな遊びをしているだけだと思っているはずです。

 現在のような過ごし方は、これから先、きっと起こることはないのではないか(起こってほしくない)と思っています。

 誰もが経験してこなかった経験を、私たちは今さまざまな苦労をして過ごしているわけですが、ネガティブな感情が多くなる中でも、何かしらの楽しさを見つけてポジティブに過ごしていけるようにすると、一段階強くなった自分になれるのではないかと思っています。

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

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<Text&Photo:寺田明日香/メインPhoto:南しずか/Edit:松田政紀(アート・サプライ)>