2020年7月21日

アシックス初の“スマートランニングシューズ”が登場。スタートアップと共同開発、専用アプリや音声でデータをフィードバック

 アシックスは、同社初となるスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライド オルフェ)」を発表しました。スマートシューズ「ORHE TRACK(オルフェ トラック)」を開発・販売するスタートアップ・nonew folk studioと共同開発。7月21日から、クラウドファンディングサービス「Makuake」(マクアケ)の予約販売を開始しました。

 EVORIDE ORPHEはソール部分にセンサがセットされ、これを履いて走ることでランニング時の足の動きをデータ計測できます。データは専用アプリで確認できるほか、ランニング中も音声でフィードバックを受けられるとのこと。あらゆるランナーにとって、まさに“コーチ”の役割を果たすシューズです。今回、開発に至った経緯や製品の特長などについて、詳しく話を訊いてきました。

・あわせて読みたい

動画解説:ランニングシューズの靴擦れ・マメは「靴紐の結び方」で防げる

EVORIDE ORPHE開発の背景とは

 ランニング人口が増加する中、コロナ禍の影響でさらにその傾向が顕著に見られます。一方でアシックスの実施したアンケート調査によれば、以下のような悩みを抱くランナーが多いそうです。

「自分に合ったシューズ・ウェアを知りたい」
「ケガなく走れる走り方・フォームを知りたい」
「自分に合ったトレーニングやエクササイズなどを知りたい」

 つまり多くのランナーが自分にとって最適なもの(製品やトレーニング方法など)、あるいは動きに関する情報を求めているということ。では、納得感のあるフィードバックを受けてもらうには、どうすれば良いのか。その視点から、足の動きをデータとして可視化し、適切な情報を提供できるスマートシューズに着目したそうです。

 no new folk studio(以下、NFF)は2017年よりアシックススポーツ工学研究所との共同研究等を開始。さらに、またアシックスが2019年に実施したアクセラレーター・プログラムで最優秀賞を受賞しています。アシックスが長年にわたり蓄積してきたバイオメカニクスの知見。ここに、NFFの持つセンシングソリューションの知見が加わることで、新しいスマートシューズ「EVORIDE ORPHE」が誕生しました。

センサは小型&軽量化、アプリのデザインや評価機能も一新

▲左が今回登場した「EVORIDE ORPHE」のセンサ。右はORPHE TRACKのセンサ

 センサはシューズのソール部分に埋め込まれます。これまで販売されてきたORPHE TRACKのセンサと比べると、約半分の大きさになりました。重量は20gと軽量なため、ランニング時に重さの負担はなさそうです。しかし一方で、バッテリーもちは変わらず7時間程度の使用が可能となっています。

 また、アプリケーションもデザインや表示される評価情報などが一新。取材時点では開発中のため、デモ画面が紹介されました。着地位置やプロネーション、ストライドなど従来のアプリケーションと同様のデータ情報はそのまま。大きく異なるのが「評価とアドバイス」です。

 これまでアシックスでは、一般から世界レベルアスリートまで1000人以上のデータを蓄積してきたとのこと。センサから得られた値で地面反力(前後上下に対する地面に与えた力に対して跳ね返ってきた力)を予測し、以下5つの指針から評価を行っています。

・キック力
・キック効率
・衝撃の負担軽減度
・ブレーキ効率
・ねじれの負担軽減度

 これによって、数多くいるランナーの中で、自分がどのレベルにいるのかを客観的に知ることができます。また、左右それぞれレーダーチャートで値が明確化されるほか、改善点についてフィードバックコメントも表示。さらにアプリ上で、おすすめの筋力トレーニングメニューが動画で確認可能です。ただデータを見るだけでなく、具体的な改善へ向けたアクションへと繋げやすそうです。

ハイレベルな走りにも応えてくれそうなシューズ

▲センサを含めて、片足300グラム以下になっているとのこと

 スマートシューズとはいえ、やはり走るのなら「走りやすさ」にはこだわりたいところ。EVORIDE ORPHEはソールにアシックスが独自開発している「FLYTEFORM」を搭載し、軽量かつ高いクッション性があります。

 実際に履いてみましたが、自然な反発があってとても軽やかに走れそう。さらにつま先部分がやや高めに上がっており、スムーズな重心移動による前方向への推進力が得られる感覚でした。サブ4〜のランナーを想定したシューズとのことですが、ある程度ハイレベルなスピードレースでも十分に対応してくれそうです。そのため、トレーニングだけでなくレースで使用し、結果と走りの比較を行うのも良いでしょう。

 ここで、驚いたこだわりを一つ。センサはインソール下のソール内に埋め込みますが、インソールを外すと何やら不思議な模様が。なんとこちら、渋谷と神戸の地図なのだと言います。アシックスのスポーツ工学研究所がある神戸と、NFFが本社を置く渋谷。その二つが合わさって1足となる、まさに両社一体で作り上げたシューズであるという思いが伺えます。

 コロナ禍でマラソン大会の中止が続いており、悶々とした日々を過ごしているランナーは多いはず。しかしこれを機会と捉え、来るべき勝負レースに向けてランニングフォームを改善し、レベルアップを目指してみてはいかがでしょうか。そのために「EVORIDE ORPHE」は、良き相棒でありコーチとなってくれそうです。

 クラウドファンディング期間は、10月18日(日)までの予定。製品は2020年11月以降に順次届けられるとのこと。2020年12月からはアシックスの一部直営店やアシックスオンラインストアでの販売を計画しています。また7月23日(木)より、ランステーションを併設した総合型ストア「ASICS RUN TOKYO MURUNOUCHI(アシックスラン東京丸の内)」で「EVORIDE ORPHE」の試し履きを実施します(ランステーション利用者が対象。先着順。電話での事前予約可)。

《価格》

▼Makuakeで展開される価格

・Makuake特別特価
センサキット付き 31,500円(税別)
センサキットなし 11,500円(税別)
・早割20%オフ 25,200円(税別)
・早割10%オフ 28,350円(税別)
・複数購入割25%オフ 47,250円(税別)
(センサキット付2足)
・スペアシューズセット 43,000円(税別)
(センサキット付1足+センサキットなし1足)
・スペアシューズ 11,500円(税別)
(センサキットなし)

▼アシックス直営店・アシックスオンラインストア
センサキット付き 33,000円(税別)
センサキットなし 12,000円(税別)

《カラー展開》

ブラック×ピュアゴールド、ホワイト×ピュアゴールド
※ホワイト×ピュアゴールドは「Makuake」のみでの展開で、2021年3月頃に届けられる。

《サイズ展開》

メンズ:25.5cm〜29.0cm(0.5cm刻み)
ウィメンズ:23.0cm〜26.5cm(0.5cm刻み)

《素材》

アッパー:合成繊維
アウターソール:ゴム底

《生産国》

シューズ:ベトナム
センサ:日本

・Makuake「EVORIDE ORPHE」ページはこちら

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。また、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】https://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>