“ゴールデンエイジ”にやりたいスポーツの気づきを。体験イベント「スポッザニア」、秋田豊や東尾理子らが1日講師に
昨今ではさまざまな競技において、スクールやクラブなど子ども向けのスポーツ環境が整備されつつあります。わが子にどのスポーツをさせるべきか、お悩みの親御さんも少なくないのでは?
そんな親子のためのイベントが「スポッザニア」。4歳から12歳までの“ゴールデンエイジ”を対象に、一日かけてトップアスリートの指導のもと、多彩な競技を実際に体験してみようという試みです。6月3日には東京都江東区にあるMIFAフットボールパークで、その第1回が開催されました。
この日、行われたのはサッカー、ゴルフ、テニス、陸上の4競技。サッカーでは元日本代表の秋田豊さん、ゴルフでは米女子ツアーで活躍した東尾理子さん、テニスでは元プロプレーヤーの瀬間友里加さん、陸上では箱根駅伝で大活躍した柏原竜二さんが講師役を務めています。60人の子どもたちが15人ずつに別れ、4競技を各1時間弱体験しました。
「アッキーって呼んでね」。現役プロが子供に楽しく指導
イベントは全員揃っての開会式から始まりました。講師の皆さんの自己紹介の後で、子どもたちが「よろしくおねがいします!」と元気に挨拶。スポッザニアのスタートです。
サッカーを指導する秋田さんはJリーグでの監督歴があるだけに、子どもたちへの指導はお手のもの。現役時代は闘志あふれるプレーで鳴らし、少々コワもてなイメージのある秋田さんですが、「今日はオジサンのことアッキーって呼んでね」の一言で子どもたちの心をつかみました。
サッカー体験はボールと親しむところからはじまって、ドリブルやシュート練習といった内容です。秋田さん自身が参加してのゲームも行われ、最後は子どもたちがゴールに向かって一人一本シュートを蹴りこみます。
「シュートは入ると思って蹴るから入るんだよ。外すと思ったら、その時点で入らない」
子どもたちにそう話しかける秋田さん。各競技では受講すると子どもたちに記念の缶バッジがプレゼントされますが、サッカーはこのシュートが入った子がもらえることになりました。当然、失敗する子もいましたが、「シュートは外してもいい、入るまで蹴ればいいんだから」との声に、ゴールまで届かなかった子は再度チャレンジ。全員缶バッジを貰えました。
続いて、子どもはなかなか経験する機会の少ないゴルフ。今回は子ども向けのクラブとやわらかなボールを使います。初めて見る道具に子どもたちは興味津々です。
まずは、東尾さんがクラブの扱い方、スタンスの取り方などを指導。続いて、的を狙ってのスイングが始まりました。「肩幅まで足を広げようか」、「ボールを良く見て」など、東尾さんが一人一人の子どもたちに声をかけていきます。
「上手だね」「すごいね」「うまい、うまい!」
そんな、褒め上手な東尾さんの声に、最初は空振りしていた子も、次第にクラブにボールがあたるようになっていきます。褒められた子どもたちは俄然やる気をみせ、クラブでボールを捉える快感を体感したのでした。
元プロとのラリーやリレー対決も!
テニスも子どもたちには意外と馴染みのない競技です。ゴルフ同様、子ども向けに専用のラケットとスポンジボールを使います。
まずはボールに触れるところから始まって、続いてラケットの面でボールを転がします。ラケットの扱いに慣れてきたら、ワンバウンドのボールを打ち返し、瀬間さんを相手にネットを挟んでのラリーがスタート。ラケットの使い方の要領を得ず、空振りする子もいましたが、「一回あたらなくても次、次。これから」と瀬間さんが明るく激励します。
ラリーは4回が目標でしたが、中には100回近く続く子も。初体験の子も、経験のある子も、テニスの楽しさを感じとったようでした。
最後は、全てのスポーツの基本である陸上・ランニング。しかしながら正しい走り方を学ぶ機会は、なかなかないものです。指導にあたるのは、4月に現役を退いたばかりの柏原さん。
「腕の角度は90度」「ピンと身体を一本にすれば腹筋に力が入るよ」「腿を上げたときに身体を後ろに反らしちゃダメ」
などと、専門的な内容を、子どもでもわかりやすく指導してくれます。
走り方の指導を受けて、みんなでランニングした後は、子どもたちの提案で柏原さんと子どもたちのリレー対決が始まりました。子どもたちはコートを半周ずつ受け持ちますが、柏原さんは一人で走ります。
必死に走る子どもたちを尻目に、周回を重ねても余裕の柏原さん。軽快な走りに子どもたちや保護者から「山の神!」と声援が飛びます。柏原さんはギリギリまで子どもの後ろにつけていましたが、ラストスパートで子どもを振り切って貫禄の勝利。トップアスリートの走りを目の当たりにし、子どもたちも目を輝かせていました。
子どもたち、そしてアスリートの夢も応援する
各競技を体験した後は、みんな揃って閉会式。各組ごとに講師がMVPを選び、月桂冠と金メダルがプレゼントされました。
こうして、成功裏に終わったスポッザニアですが、イベントを主催したスポプラの山田昇代表によると、今後も競技を増やし、不定期に開催を予定しているそうです。
「私自身が5歳からテニスをやってきましたが、それを自分で選んだ記憶はないですね。本当に正しい選択であったのかはわかりません。なので、子どものうちにいろいろなスポーツを経験し、トップアスリートと触れ合うことで、自分にあった競技を見つけてほしい。今日の子どもたち、そして保護者の皆様の笑顔を見る限り、いくらかはそのお役に立てたのではないかと思っています」
また、スポッザニアは子どものためだけでなく、アスリートのためのイベントでもあると山田代表は話しています。
「子どもたちは初めて会った講師の皆さんに親しみを感じて、素直に指導を受け入れていました。スポーツで培ったアスリートの皆さんの、高い人間力を改めて感じています。スポッザニアはアスリートの皆さんのセカンドキャリアの受け皿になり得るでしょう。そういう環境を整備することが、スポーツ界全体の底上げにもつながります」
将来的には常設施設のオープンを視野に入れているというスポッザニア。ゴールデンエイジのうちにさまざまな競技に触れあうことで、子どもの可能性に自ら気づいてもらえるイベントになりそうです。
《関連サイト》
「スポッザニア」公式Facebookページ
https://www.facebook.com/Spozania/
<Text & Photo:石川哲也(H14)>