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福岡から全国へ拡がるランニング×防犯活動「パトラン」を知っていますか?

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「安全な地域で、安心して暮らしていたい」

 おそらく多くの方が、そう願っていることでしょう。私は3人の子を持つ父親ですが、同じ子育て世帯であれば、特にその思いは強いかもしれません。今回取材したのは、安全な地域づくりに“走る”ことで取り組まれているNPO法人改革プロジェクトの立花祐平さん。

 『パトランJAPAN』というプロジェクトを立ち上げ、ランニングによる地域を見回る防犯活動を行っています。福岡県宗像市で立ち上がった同プロジェクトは、今や全国各地に広がっているとのこと。その活動内容や思いを、プロジェクトの成り立ちから伺いました。

パトランが誕生するまで

 2013年1月から福岡県宗像市でスタートした『パトラン』。ランナー同士が集まって付近を走り、見回り活動を行っています。犯罪の起こりやすい夜間はもちろん、ときには子どもたちの下校時間に合わせて実施することも。その活動を始めた背景には、ある事件がありました。

「もともと私たちは清掃活動を行っていました。そんな中、女性メンバーの1人が帰宅中に不審者の被害に遭ったんです。その女性には事件後、男性が怖い、あるいは同じ場所が通れないといった後遺症が残っています。私自身、そのことがきっかけで、初めて地元地域に危険があるのだということを知りました。被害に遭う人を増やしたくないと思い、防犯活動を始めたんです」

 仲間に起きた事件から立ち上がった防犯活動。最初は付近を歩いてみたり、情報発信したりしていたものの、なかなか上手くいかなかったようです。

「防犯活動というものは、“何も起きない”ことが当たり前なんですよね。そうなると、ただ毎日歩き回るということに、モチベーションが持てなくなってしまいました。最初は5人で始めたプロジェクトが、いつの間にか私1人に。どうにか多くの方々が、特にこれからの時代を担う若い世代が参加しやすい活動をと考えたとき、目についたのがランナーの存在だったんです」

 運動公園などに足を運ぶと、そこには園内を走っているランナーがたくさん。その人々が街に出たら、それだけで防犯になるのではないか……その考えが、走ってパトロールする『パトラン』という形になったと言います。

ルールを整備しながら少しずつ活動地域が拡大

 現在、パトランは全国23の都道府県に広がり、800名近い “パトランナー”が活動しているとのこと。複数名でチームを構成している地域もあり、そのエリアは北海道から沖縄にまで及びます。皆さんの住む地域にもパトランナーがいるかもしれません。しかし活動を始めてから、すべて順調というわけではありませんでした。

「最初は宗像市の仲間5〜10名程度で始めたんですが、当初、住民の方からあまり良く思われていませんでした。あれは何だ?と不審がられたり、クレームが入ったりしたこともあったんです。そうした声を受けて、やり方を少しずつ変えていき、現在に至ります。例えばお揃いのTシャツを作り、夜間のライト持参や2列走行などのルールを決定。受け入れてもらうまでが大変でしたね」

 クレームを受けても諦めず、むしろ改善の糧として活動を続けていくこと。立花さんによれば、それこそがもっとも大切なことなのだと言います。その結果、1つのきっかけから、その活動は一気に広がることになったのでした。

「SNSを経由して、自分たちもやりたいと手を挙げてくれる方は何名かいました。でも個人単位での活動は、その方がやらなくなった時点で終わってしまうんですよね。そのため、自然消滅してしまうケースが少なくありませんでした。しかし2015年、住友生命さんのプロジェクトで、元フィギュアスケート選手・浅田真央さんがパトランに参加されたんです。これがテレビCMでも放送され、北九州をはじめ一気に5つものチームが立ち上がることに。さらにルールを整備しつつ活動を続け、現在の規模にまで広がっています」

 特に驚いたのが、メンバーの約4割が女性ということ。宗像と西尾と栃木では、チームの代表を女性メンバーが務めているそうです。これは、よく見る防犯活動と大きく異なる点でしょう。立花さんによれば、女性は行動が早く気が利くので、まとめ役に向いていると言います。

 さらに最近では、小学生〜高校生がパトラン活動に参加することもあるとのこと。子どもたち自身が防犯意識を持ち、身を守る術を知る。また親子で参加することで、良いコミュニケーションの機会にもなっているようです。お話を聞いていても、私も子どもたちにぜひ参加させたいと感じました。

パトランを通じて実現させたいもの

「街頭犯罪をゼロにしたい」

 立花さんは、パトランの目的についてそう語ります。自分たちの地域を、自分たちの力で安全に保つ。たとえ自分自身が走れなくても、寄付によって活動を応援することも可能。まさに、身近に誰でも始められる地域貢献と言えるでしょう。そのうえでパトランを通じ、人との繋がりや仲間作りが行われています。

「実は私も、パトランを始める前はランニングはしていませんでした。他の方も、メンバーの約3割は、もともとランナーなどではありません。でもいつの間にか、走ることが楽しみになったり、生き甲斐になったりしているんです。そして活動を通じ、どんどん人と人とが繋がっていきます。いつも自宅と職場の往復だけで地元に居場所のなかった方が、パトランをきっかけに仲間を作り、やがて他の地域活動にも参加するようになる。あるいはパトランを通じて出会った方同士が、今年だけで2組も結婚します。そういう話を聞くと、私自身とてもうれしくなりますね」

 さらにパトランは、参加者にさまざまな影響をもたらしているようです。例えばうつ病を患っていた方が、パトランをきっかけに走り始め、今では症状が回復したと言います。その方はすっかり走る楽しさに目覚めたようで、フルマラソンではサブ4を達成。パトランは防犯活動としてのみならず、参加者自身の心身にもメリットをもたらしているようです。

実際に『パトラン』を体験してみた

 取材当日、ちょうど北九州でパトラン活動が行われると聞き、私も同行させてもらいました。全てではないものの、チームの立ち上げ時期をはじめ、立花さんは各チームの活動にたびたび参加されている様子。先日は東京でお花見を開催し、そこに各地のメンバーが集まるといったイベントも行われました。メンバーが増えるとともに、地域を越えた交流も活発化しているようです。

 集合場所に到着すると、そこにはお揃いのパトランTシャツを着たメンバーがたくさん。この日は私を含め、全部で13名が集まりました。2つのグループに分かれ、それぞれ異なるルートでパトランへと向かいます。

 通行の妨げにならないよう1列で、手にはライトを持って走ります。途中、誰かとすれ違えば「こんばんは」と挨拶。ルートは事前に決められており、私が参加したグループは学校や住宅街を中心に回りました。危険そうな場所、見回りした方が良い場所をあらかじめピックアップし、それらを繋いでコースを作っているようです。

 すると途中で、1人の男性メンバーが袋を取り出しました。なんと、コース上に落ちているゴミを拾っているのです。他メンバーもゴミを見つけると、拾って袋へと入れていきます。防犯だけでなく、地域美化にも取り組まれているんですね。

 そして約30分、この日のパトランは終了。スタートした場所へと戻り、何名かがパトラン中に気付いたことを発表します。

「今日はなぜか高校生が多かった」
「街路灯の消えている場所があった」
「無灯火やイヤホン着用の自転車が見られた」

 などなど。パトランを通じて、地域住民の行動や安全環境などまで確認されていました。街路灯などは、後から行政に報告も行うそうです。

 このパトラン活動、北九州エリアでは地域貢献だけでなく、健康に関わる事業としても認められています。北九州市社会福祉協議会が40歳以上を対象に実施している『健康マイレージ』という取り組みでも、その指定事業に含まれているとのこと。健康活動に参加することでポイントが溜まり、さまざまな景品と交換できるというものです。継続することで地域に受け入れられてきた、1つの証と言えるのではないでしょうか。

 その他、今年開催される『大阪マラソン』でも寄付先団体として選定されており、現在、チャリティランナー、及びその寄付を募集しているそうです。

 最後に立花さんは、直近の目標として「2020年の東京オリンピックまでに、47都道府県の全てにパトランナーを」と語ってくれました。パトランナーは随時募集していますが、まだその展開は約25の都道府県に留まっています。活動内容、そしてその思いや趣旨に共感した方は、ぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。ランニングを始めようか迷っていた方にとっては、そのきっかけになるかもしれません。私もこれを機に、これから近隣で「パトラン」を始めようと考えています。

【パトランJAPAN】
[公式サイト]http://patorun.com/
[運営]NPO法人改革プロジェクト
[代表者]立花祐平
[活動エリア]宗像、北九州、古賀・福津、福岡、宇都宮、松戸、西尾ほか

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text&Photo:三河賢文>

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