30代、理容師の場合。「ウルトラマラソンは自分との戦い。走り続けるのも、足を止めてしまうのも自分次第」┃仕事とランの両立を目指して。#3 (2/3)
「100kmって何? 本当に人の足で走れるの? という、驚きと疑問が頭のなかを駆けめぐりました。しかし次の瞬間には、即答で参加を決めたんですよ。たじろぐというより、むしろ好奇心を掻き立てられちゃいましたね。声を掛けられたのが2014年2月。それから84kgあった体重を64kgまで落とし、2014年4月に大会へ出場しました」
もともと好奇心旺盛だった濱野さん。新婚旅行でタイを訪れた際には、一人でフラッと裏通りに出ていくほど、興味のあることには突き進んでいくタイプなのだとか。結果、初めてのマラソン大会で100kmを走り、12時間45分で見事に完走。そこから、濱野さんの挑戦はどんどんエスカレートしていったのでした。
同じ距離は走らない! その理由は?
100kmを走破したあと、すっかり超長距離レースに心を奪われた濱野さん。他にどんな大会があるのか調べたところ、ウルトラマラソンは100kmだけではない……という事実にたどり着きました。
「走り終えて決めたのが、年1回は過酷な大会にチャレンジしようということ。そして、一度走った距離は、もう走らないことに決めました。マラソン大会に出場するには、どうしても仕事を休まなければいけません。特に超長距離のレースでは、前後で宿泊する必要も生じます。そうなれば、スタッフやお客さんに迷惑がかかるじゃないですか。だから年1回、出場する大会も厳選しようと決めたんです」
知多半島でのウルトラ遠足を経て、次に挑戦したのは2015年の「小江戸大江戸200K」。202kmに及ぶ同大会も、なんとか完走されました。そして2016年は少し距離を縮め、たまたまお店の休みと日程が同じだった「武庫川ユリカモメウルトラ70Kmマラソン」に出場。しかし同年は、さらにもう1つ過酷な大会にチャレンジしました。
「沖縄本島を1周する、『沖縄本島1周サバイバルラン』を見つけてしまったんです。なんとステージレースではなく、ノンストップで400km。これは震えましたね。すぐにエントリーしましたが、結果は惨敗。107km地点でのリタイアとなりました。これが悔しくて2017年も同大会に出場しましたが、距離は伸ばしたものの193kmでリタイア。当面の目標は、このレースを完走することです」
時間が限られた中で、毎年の出場レースを決める。しかし未完走のまま次に進むのではなく、きっちり完走し、そのレースを“卒業”したいのだと話してくれました。すでにその後は、「東海道五十七次・飛脚」「ゴビ砂漠400km」など目標大会を見据えているとのこと。きっと2018年も「沖縄本島1周サバイバルラン」に挑戦し、力走を見せてくれることでしょう。
ランニングが仕事に与えてくれたもの
大会出場のために休みを取ることが難しいように、日々のトレーニングもまた時間の確保は容易ではありません。特に美容関係の仕事では営業時間後にトレーニングを行うなど、深夜帯まで働いているイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。やはり濱野さんも、驚くような超長距離レースに出ている反面、走る時間の確保には苦戦しているようです。
「だいたい練習は週2回ほど。なんとなく10km以上は走らないと罪悪感があるので、1回13〜14kmくらい走るようにしています。温かい時期は朝、寒い時期は夜が多いですね。基本的には、やはり仕事前後の時間を活用しています。ただ、特にペースは決めませんし、追い込むようなトレーニングは行っていないんです。身体の赴くままに走る。一度ペース走を行ったことがあるんですが、とにかくキツくて。思うように走るのが、一番楽しいと思っています」
初めて「沖縄本島1週サバイバルラン」に出場した際は、前月の月間走行距離が約145km。これを見ると、おそらく短いように思えるのではないでしょうか。しかし仕事との両立を考えるうえでは、どうしても距離を思いきり伸ばすことはできないのです。
「それでも、100kmや200kmという大会は走破できるんですよ。確かに休みを取ったり走る時間を確保したりすることは難しいですが、だからってできないわけじゃない。無理に距離を追い過ぎる必要なんてないし、その方が、かえって長く続けられると思っています」
ではなぜ、そこまでして濱野さんはランニングを続けるのでしょうか。もちろんそこには、過酷なレースに魅了されたという一面があります。しかしその他に、濱野さんにとってランニングは、さまざまなメリットをもたらしてくれているそうです。