30代、理容師の場合。「ウルトラマラソンは自分との戦い。走り続けるのも、足を止めてしまうのも自分次第」┃仕事とランの両立を目指して。#3 (3/3)
「お客さんが興味を持って応援してくれるんですよ。初めて『沖縄本島1周サバイバルラン』へ出場したときは、家族やお客さんも引き連れた観光ツアーを開催しました。残念ながらリタイアしてしまいましたが、こういうのはうれしいですね。仕事も、もっと頑張ろうって思えます」
また、濱野さんは東京勤務から愛知へと戻る頃まで、ずっと剣道に打ち込んできたとのこと。インターハイや国体、その他の選抜大会などにも出場する腕前なのだとか。しかし愛知に戻った後、練習中にアキレス腱を切ってしまったそうです。
「剣道は仕事に差し障りがあるな……と思い、もうやっていません。でも、剣道とマラソンって少し似たところがあるんですよ。剣道は己に打ち勝つもので、精神的な強さが求められます。ウルトラマラソンも同じで、まさに自分との戦いなんです。走り続けるのも、脚を止めてしまうのも自分次第。ただし剣道のような対人競技より、ウルトラマラソンはさらにその傾向が強いと思います。お陰さまで、仕事で多少問題が起きても、命まで取られるわけじゃない……と前向きに考えられるようになりました」
理容師という仕事は、相手がいてこそ成り立つもの。仕事中は休憩時間を除き、常にお客さんと対峙しています。そのためランニング中は、濱野さんにとって貴重な“一人の時間”になっているそうです。
「私にとって一人の時間は、普段と違う特別なものなんです。仕事中は、いつも誰かと一緒ですから。練習中は、日によっていろんなことを考えながら走っていますね。でもレース中は、走ることだけを考えるようにしています。よそごとに心を持っていかれると、集中できず心が折れてしまう気がするので」
そのほか、体重が落ちて健康的になったり、大会をモチベーションに体調管理を心がけられたりというメリットも。濱野さんにとってランニングは、仕事・プライベートの両面で良い影響を与えてくれているようです。
いつか一緒に走りたい相手は……!?
現在、「ヘアーサロンはまゆう」の本店は、ご自身を含めた4名が働いています。実はその中に妻・英理さんの姿も。英理さんとは東京で勤務していた企業で出会ったそうです。濱野さんとは業務が違い、ネイルやエステが専門。そんな英理さんにも、超長距離レースばかり走る濱野さんについて、少しコメントをいただきました。
「いつか一緒に走れたらと思っているみたいですが、私は走る人じゃないんですよね。ハーフマラソンくらいなら頑張れそうな気もするけど、夫はもはや目指すところが違うじゃないですか。それに家と職場どちらも四六時中ずっと一緒なので、ランニングまで同じっていうのも……ちょっと。でも、応援はしていますよ」
お客さんだけでなく、家族からの応援もまた濱野さんにとって大きな力となっているはず。2人の仕事風景も拝見していると、仲の良さが伝わってきました。
いきなりウルトラマラソンから始めたため、濱野さんはハーフマラソンやフルマラソンが未経験。しかしご自身の中で、同じ距離は走らないというポリシーをお持ちです。もしかしたらハーフマラソンは、奥さんと一緒に走るためにとっておいているのかもしれません。
[プロフィール]
濱野弘照(はまの・ひろき)
愛知県知多市出身・在住。学生時代から剣道を始め、インターハイや国内など各種大会へ出場。2014年にマラソンを始め、同年の「知多半島ウルトラ遠足」で大会デビュー。以後、ウルトラマラソンだけに絞って各地大会に出場している。専門学校卒業後は理容師として活動。有限会社ビューティーサポート愛知を経営する傍ら、愛知県知多市にある「トータルプロデュースサロンはまゆう」で代表を務める。
<店舗情報>
トータルプロデュースサロンはまゆう
住所:〒478-0055 愛知県知多市にしの台4-6-1
営業時間:AM9:00〜PM7:00
電話番号:0562-56-1333/0120-56-1330
定休日:毎週火曜日、第2第3月曜日
公式サイト:http://www.hamayu1949.jp/
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>