2019年3月11日

なぜ下駄でマラソンを? ギネス世界記録を持つランナー伊達勇人さんが下駄で走り続ける理由 (2/3)

下駄で走ったキッカケは沿道からの応援

――下駄でマラソンを走ろうと思ったキッカケは、何だったんですか?

愛媛マラソンをサブ3(3時間切り)で走りたくて、ずっと練習してきました。結果、9年前にサブ3を達成したんです。雨風がとても強かったんですが、その中でものすごい応援を受けながら走ったんですよね。だから今度は、その人たちを楽しませたいと思いました。そこで考えたのが、愛媛ともかかわりの深い、夏目漱石の小説『坊ちゃん』の仮装。そう決めて坊ちゃんの画像を見てみたら、なんと足元が下駄だったんですよ。だから下駄で走った。それがキッカケです。

――初めて下駄で走ったときのことを教えてください

初めて下駄で走った愛媛マラソンは、4時間50分で完走できました。練習中から完走はできる感覚がありましたね。ただし足元は血だらけ。特に鼻緒の部分は、擦れて大変でした。

――それから、ずっと下駄で走っているんですか?

本当は1回限りのつもりだったんですよ。でも実際に走ってみたら、いつも以上に声援がすごくて。愛媛マラソンは折り返して戻るコースなので、「おかえり!」って応援してくれるんです。もう、やめられなくなっちゃいましたね。

その後、第49・50回大会を下駄で走ったところで、なんと大会側が下駄で走ることを禁止してしまったんです。ですからそれ以降、愛媛マラソンは袴だけ仮装して、足元は普通のシューズです。

ふとした一言がギネス世界記録への挑戦を後押しした

――ただ下駄で走るだけでなく、ギネス世界記録への挑戦を決めたキッカケは何だったんですか?

坊ちゃんの姿を見て、声を掛けてくれた人がいたんです。その人が、実は100kmの下駄ギネス世界記録を持っていました。で、その人から「ギネス記録に挑戦してみたら?」と言われたんです。それまで、まったく考えてもいませんでしたけれど、その一言でやってみようと思いました。

――ギネス世界記録挑戦にあたって、何か工夫されたことはありますか?

正直、あまりないんですよね。下駄の擦れ対策など試してみたものの、結局は何をやってもダメ。唯一、鼻緒部分などオイルを塗って滑らせるようにしていますが、長く走れば効果がなくなってしまうので。私の中で、何もしないのが1番いいという結論に至っています。

走り方はあまり足を上げず、擦らせないようにします。意識しているというより、下駄で走り続けていたら、自然とそういう走り方になりました。今はフルマラソンくらいの距離なら、走り終えたときも傷などできなくなりました。

――実際にギネス世界記録に挑戦し、獲得したエピソードを教えてください。

初めてギネス世界記録に挑戦したのは、2011年の大阪マラソンでした。本当は愛媛マラソンで走りたかったですが、下駄が禁止されていたので。結果、ちゃんと完走できたんですよ。でも、残念ながらギネス世界記録の承認は得られませんでした。認定には細かな規定があって、2名の証人を揃え、挑戦中の様子を撮影する必要があります。こうした点を知らず、その際は動画が撮れていなかったため不十分だったわけです。

再度挑戦したのは2016年の大阪マラソン。下駄で走れる大会が少なくて、期間が空いてしまいました。今度はスタッフを揃え、万全の体制でチャレンジ。この大会での5時間35分31秒という記録で、認定を受けられました。

――フルマラソン以外に、ハーフマラソンも認定されているんですよね?

はい。せっかくフルマラソンで認定を受けたので、ハーフマラソンとウルトラマラソンも挑戦しようと思いまして。ハーフマラソンは走力のあるスタッフを揃え、2017年の和歌浦ベイマラソンを2時間6分22秒で走り、認定。ウルトラマラソンは2018年の四万十川ウルトラマラソンで挑戦し、現在申請中です。おそらく認定されると思いますが、結果が出るのは早くて2019年の3月末ごろですね。

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