2017年9月15日

知っておきたいボルダリング基礎知識と準備【ボルダリング体験レポ〜初心者が一人前になるまで〜 #1】

 スポーツの秋が近づきましたが、今年はどんなスポーツにチャレンジしようか、まだ悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで注目したいのが、今流行りの岩山を模したウォールを登るボルダリング。2020年の東京オリンピックの正式種目に採用されたことで、一気に知名度が上がったスポーツです。

 本連載ではボルダリングにおける、初心者の一つの目標点、中級者の入り口でもある“5級クリア”を目標に、その対策やテクニックを紹介していきたいと思います。第1回となる今回は、その“準備編”として、まずはボルダリングの魅力をおさらいしていきましょう。

ボルダリングってどんなスポーツ?

 今や全国で500か所近いスタジオができるほど、人気のスポーツとなったボルダリングは、体重が軽いことや柔軟性があることが有利なスポーツでもあります。難易度が上がるにつれて厳しい姿勢を強いられるため、からだを小さく折り曲げるためにも、あまりからだが大きくない日本人には実は向いている競技といえるでしょう。それを証明するかのように、2014年のボルダリング種目では、決してからだが大きくない日本代表チームが世界ランキング1位を獲得しています。

 ボルダリングスタジオには、さまざまな傾斜のウォールが用意されています。高さはだいたい4~5メートルくらいで、傾斜は簡単には3つに分けられます。壁に正対して奥に傾斜のある「緩傾斜」(スラブ傾斜)、90度(垂直傾斜)の「垂壁」(垂直)、そして手前に傾斜している強傾斜(かぶり傾斜)の3種類です。

 緩傾斜は概ね80度~86度くらいのものが多いようです。一方、強傾斜は100度前後の緩やかな「薄かぶり」から120~140度くらいの「どっかぶり」、スタジオによっては160~180度といったほぼ水平傾斜の「ルーフ」が設置されているところもあります。いずれにしても、初心者はスラブから入って垂直傾斜に。そして慣れたころに薄かぶりに挑戦するのがいいでしょう。

 そのウォールに付けられているのがホールドと呼ばれる疑似石です。素材は概ねポリエステル樹脂でできていて、表面は少しザラザラしており、指先が滑らないようになっています。このホールドの配置はスタジオによって違い、スタジオも定期的にホールドの配置を変えています。中には、数か所のスタジオに通っている人がいるのも、スタジオによってウォールやホールドの種類が違うためです。こうして新たな気持ちでチャレンジできるのも、ボルダリングの面白さの一つと言えそうです。

 ボルダリングスタジオによっては子どもでも登れるものから、コンペに出る人向けの難易度の高いものまで、さまざまなウォールが用意されています。これらの難易度は級という形で表されています。

 おおまかに言うと10級~9級は初めての人でも登れるレベル、8級~7級は少し頑張らないとクリアできない人も出てくるレベルでしょう。6級からはけっこう難しくなってきます。テクニックや体の柔軟性などを要求してくるレベルで、この辺りから手だけでなく足の位置も限定される課題が出てきます。初心者ではまずクリアできないのが6級~5級で、もしあなたが初めてでこの級を制覇できたら、間違いなく一流クライマーを目指すべきでしょう(笑)。

 なお、各スタジオのウォールはすべて違うデザインのため、級の設定もまちまちです。

ボルダリングの準備に必要なものとは?

 今回、取材を行ったのは神奈川県横浜市戸塚にある「クライミングジムRISE(ライズ)」(以下RISE)。スペースも広く、ウォールやホールドもさまざまあって、いろいろな難度に挑戦できる環境が整っているスタジオです。ハンモックや休憩できるソファやテーブルもあり、気軽に会話できるコミュニティスペースが広く、家族連れやカップル、友人同士など、老若男女の方々がボルダリングを楽しむには最適の環境になっています。

 取材中にも「初めて来ました」という人が、ひきも切らずに訪れていたのにはビックリ。まさにボルダリング人気が高まってきているのをヒシヒシと感じました。

 代表の原大作さんに「まず何を用意すればいいのでしょうか?」と聞いてみると、なんと「何も必要ではありませんよ」という驚きの答えが。「あえて言うならTシャツと短パンやトレーニングウェアみたいな動きやすい恰好ですかね」と笑って答えてくれました。

 ちなみに、実際に必要なのは「専用シューズ」と「チョーク」(滑り止め)だけです。たったこれだけで始められるのは手軽でいいですよね。RISEさんではシューズもチョークも無料でレンタルしてくれるので、まさに「何も必要ない」という原さんの話に嘘偽りはなかったわけです(笑)。

 なお、原さんによると「ストレッチは必須で、身体や筋肉を温めておいた方が怪我をする確率は少なくなります。さらに、プレー後にもストレッチをすることで、疲労や痛みも緩和されます」とのこと。コンペに出るなど本気で取り組むと、想像以上にハードなスポーツなので、確かにアフターケアは重視した方がよさそうです。

ボルダリングの魅力とは?

 ボルダリングは小さな子どもから年配の方まで楽しめるスポーツです。もともと「ロッククライミング」という岩山登山のイメージもあるので、そこから入った人には意外にスーッと入れたりします。初めて挑戦した小学生が簡単に登れてしまう場合もあります。ただ、高い壁を登る以上は、ある程度のリスクを伴うことも事実。常に集中し、十分な注意をしながら登ることが大切です。

 いわゆる体育会系の力自慢な人でないと登れないのでは? と思われる人もいるようですが、どちらかと言うと力よりコツ、テクニックで登ります。もちろん、難易度が上がれば力も必要になってきますが、それこそ難易度が高い課題こそ、コツやテクニックがモノを言います。

 徐々に高い課題に登りたくなり、挑戦意欲を掻き立てられてきます。テストやパズル、数独みたいに、どんどん難しいものをやりたくなってくるので、「やめられなくなる」という体験者が多いのも頷けますね。

 そんな、ボルダリングの魅力について、よく耳にするのが「達成感」でしょう。実際にやってみると、なるほどその通り。でも、筆者はそれに「悔しさ」も加わりましたが(笑)。

 そのほか、まわりの体験者の皆さんに聞いてみたところ、ほぼ共通していたのが「気軽さ」、「誰でもできる」、「(同じ課題を克服した時の)共有の喜び」、「分かりやすさ」、「仲間が出来ること」、「からだを楽しく鍛えられる」……でした。

 スポーツというと「そんなに甘いものではない」というのが、筆者の体験上の感想です。実際に挑戦してみると難易度が上がるにつけ甘くはないと感じましたが、同時に皆さんの言う通りのすべてを実感することができました。そんなボルダリングのテクニックやホールドの仕方、メリットやトレーニング効果については、次回以降で述べたいと思います。

《取材協力》
【クライミングジム RISE(ライズ)】
営業時間:10~24時(年中無休)。
住所:横浜市戸塚区上倉田町479-2 東横ビル上倉田B1(JR東海道線・横須賀線、横浜市営地下鉄戸塚駅東口下車5分)
電話:045-443-6009
料金:会員登録料 1,500円、施設利用料 1,800円(一般)、大学生・専門学校・シニア 1,500円、高校生以下 1,000円(以上、すべて税別)。その他詳細は直接お問い合わせください。
専用ホームページ:http://www.climbrise.com/

<Text&Photo : 青木秀道(H14)>