2019年7月25日

呼吸法で注意力がアップ。千葉大大学院が科学的に実証

 スポーツにおいて重要な「注意力」。千葉大学大学院人文科学研究院の一川誠教授が率いる認知心理学の研究チームは、注意力が呼吸法で高められることを科学的に実証したと発表しました。

息を吐くことの重要性を科学的に証明

 注意力は、動きの速さや変化にすばやく対応するために必要なもの。これまでも、高い筋力を必要とするウェイトリフティングで、息を吐き切る瞬間にバーベルを持ち上げることが有効とされてきたり、剣道の指導では、「吐くは実の息、吸うは嘘の息」と表現され、息を吸っている時には隙ができやすいことが説かれてきました。しかし、注意力は"認知能力"であるという点で、筋力のように数値化が難しく、その有効性の実証は難しいとされてきました。

 そんな注意力と呼吸法の関係ですが、研究チームは16人の大学生を実験対象として、視覚を介した注意力といわれる「外発的注意」と「内発的注意」を検証しました。

※「外発的注意」は、バレーボールなどの場合、選手が予想外のフェイントによって思わず惹きつけられる注意、「内発的注意」は、相手が打った球に自分で狙いを定める注意を指します。

呼吸のタイミングで注意力が変化

 実験では、16人の大学生を相手に、画面上に表示される左右どちらかの四角の枠の中に提示される×印の位置をなるべく速く答えてもらう課題を提示。

 結果、外発的注意と内発的注意では、反応を早める呼吸の仕方が異なるものの、自発的に相手の動きに注意を向ける場合、「息を吐いている時に反応がより早くなる」傾向が認められたといいます。

 今回の実験とデータ分析を担当した小池俊徳氏(2016年千葉大学文学部行動科学科卒)は、「認知心理学的なアプローチがスポーツパフォーマンスに貢献できる可能性を感じております。 本研究から派生する研究が駆け引きのあるすべてのスポーツに良い影響をもたらすことを願っています」とコメント。

 また、一川教授は、「呼吸の仕方が注意という一つの認知機能に影響を及ぼすことを見出したのは世界でも初めてのことです。今後は呼吸によって人間の認知的な能力をどこまで上げられるのか解明したいと考えています」と述べています。

 なお、今回の研究結果は日本視覚学会の学術誌『Vision(ヴィジョン)』31号に掲載されています。

<Text:辻村/Photo:Getty Images>