「ママ、がんばったね!」。寺田明日香、6年ぶりの陸上日本選手権で家族と掴んだ表彰台【密着レポート】 (2/3)
ママアスリートとして娘に伝えたいこと
翌28日の決勝。予選、準決勝での好タイムから一躍最注目選手となった寺田選手。スタンドの観客席でも、寺田選手の話をしている声が耳に入ります。「僕の方が緊張しているかもしれない。でも、やってくれると信じています」。決勝レースの直前、寺田選手をずっと支えてきた峻一さんが真剣な眼差しで話してくれました。
いよいよ決勝のレースへ。選手たちが入場しスタートレーンに並ぶと、大勢の観客が動員された競技場が水を打ったように静まり返りました。緊張が高まります。
スタートの合図が響き、一斉に飛び出す選手たち。寺田選手がぐんと前に出ます。観客席からは大きな声援。顔の位置が動かない、安定したフォームでハードルを跳び越えていきます。後半から木村文子選手と青木益未選手も加速。差が詰まります。そのまま3人がほぼ並ぶ形でフィニッシュラインを走り抜けました。
結果は3位。タイムは、1位の木村選手が13秒14、2位の青木選手が13秒15、そして寺田選手が13秒16。たった0秒02の間に3人がフィニッシュする大接戦でした。優勝は逃しましたが、「女子100mハードル・寺田明日香」の完全復活を多くの観客に印象付けたことは間違いありません。
レース後のミックスゾーンでは、「自分の足りない部分、これからするべきことがわかるレースでした。改善できることがたくさんある。娘に金メダルをあげられなかったことは悔しい。でも、私の頑張る姿が娘の何か頑張ってみようかな、という気持ちにつながれば」と振り返り、晴れ晴れとした表情で「走るのは今が1番楽しい」と語りました。
予選、準決勝、そして決勝。どのレースでもスタンドから大きく手を振って応援した果緒ちゃん。頑張るママの勇姿は、果緒ちゃんの瞳にしっかりと映っていました。
「ママー! がんばったねー!!」
娘が1番プレッシャーをかけてくる、と言っていた寺田選手ですが、同じくらい果緒ちゃんの存在がトレーニングの原動力になっていたはずです。すべてのレースを終えた表彰式、笑顔で手を振り合う寺田選手と果緒ちゃんを見ていると胸にこみ上げるものがありました。
▲表彰式で、スタンドの果緒ちゃんに向かって手を振る寺田選手