夏帆『いだてん』インタビュー。いつかはモノになる、と美濃部孝蔵(古今亭志ん生)を信じ続けた妻おりん (2/3)
――100年前というと、現代から地続きという感じもします。貧乏暮らしを演じてみた感想は。
しんどいな、と思いました(笑)。でも、もちろん文句も言いますが、おりんさん自身が湿っぽくならずに楽しそうなんですよね。それが素敵だなと。こういう暮らしだからたくましくなっていきますし、これはさすがに、強くならざるを得ない。そこで逃げ出さず、ちゃんと家庭を守っているのはすごいなと。
――もっとも驚いたエピソードは。
やはり、なめくじ長屋じゃないですかね。身なりも、イチバンみすぼらしかった。あとは蚊帳がなくなってしまい、蚊がたくさん飛んできたり。物語でも、イチバン貧乏の頃でした。そこから徐々に暮らしが良くなっていきます。
森山さんはすべて受け止めて返してくれる
――大河ならでは、と感じた部分は。
大河ドラマは長期間の撮影なので、これだけ撮影期間が空くというのは、大河ならではじゃないでしょうか。私は1話に登場するシーンが少ないので、1回の撮影で何話分かまとめて撮影したりするのですが、これも初めての経験で。
NHKのスタジオで撮影するのも初めてだったので、スタジオに来るたびに「ああ、大河ドラマをやっているんだな」と新鮮な気持ちになります。いつも、どの現場でも緊張しますが、初めての大河で、初めてのスタジオで、とても緊張したのを覚えています。撮影とは別日にリハーサルをするのも、他の作品ではありません。10代のころから仕事をしていて大抵のことは経験したことがあると思っていましたが、今回は初めて尽くしで、いつも新鮮な気持ちで撮影しています。
――おりんさんは、池波志乃さん(りん役)につながります。雰囲気も似ていますが、意識していることがあれば。
タイミングが合わず、まだお会いできていないんです。登場する時代が違うので、撮影日が重ならないんですね。撮影が始まった昨年10月の時点で、まだオンエアが始まっていなかったので、池波さんがどんなお芝居をされているか、見ることができなかった。なので池波さんが若い頃に出られていた映画などを参考にさせていただきました。本当に品があって、色気があって、これは私には真似できないなと。台本と演出の力で寄せていただいていると思います。
――池波志乃さんに似ていると評判です。
そこはプレッシャーを感じていたところでもあるので、そう言っていただけるのはとても嬉しいです。オンエアで池波さんのお芝居を見たときは、私もだいぶ撮り進めていたので、そこから変えることはできなかった。でも見たことによって、影響を受けた部分はあると思うんです。意識的に寄せよう、ということではないんですが、演じている姿が自分の中に残っていて。
――森山未來さん演じる孝蔵の魅力は。
魅力満載ですよね。これだけ魅力的なら、むちゃくちゃでも仕方ないな、と思ってしまう。生命力があるし、躍動感もあって、目が離せない。孝蔵の魅力もありますが、森山さんの魅力が大きいんじゃないかと。孝蔵を演じられるのは森山さんしかいないと思います。
どんなお芝居をしても、森山さんはすべて受け止めて返してくれる、という安心感があります。プレッシャーもあり、毎度毎度、緊張していますが。落語のシーンが、本当にすごい。お芝居と分かって見ていても、普通に笑ってしまうんです。
――孝蔵の成長ぶりは、どう見ていますか。
成長しているのかな(笑)。変わらないかもしれないですね、そこが魅力でもあると思うんですが。結婚したから、じゃあ真面目に生きていくかというと、そういうわけでもない。ずっと変わらないのが孝蔵さんなのかな。もちろん、落語の部分では、どんどん変わっていきますけれど、実生活の面では。多少、暮らしが安定したりはするんですが、それでも酒酒酒酒と言っているし。根本的に変わらない部分があります。