2019年12月21日

AIがランニングシューズを選んでくれる?皇居ランナー御用達のランステでKDDIがスタートアップと実証実験

 普段から「どんなシューズを選んだら良いのだろう」と悩んでいるランナーに耳寄りな情報です。皇居ランナーズスペース(ランニングステーション)「Run Pit」では、ランニングフォームを自動解析したうえで個人に最適なシューズを提案してくれる無料の実証実験をスタートしました。KDDIとスタートアップ企業による意欲的な取り組みです。

自分に合ったシューズはどれ?

 この実証実験はKDDIと毎日新聞社が運営する「Run Pit by au Smart Sports」(以下Run Pit)にて2019年12月18日から2020年3月31日まで実施されるもの。ランニングマシンで走る様子を備え付けのタブレット端末で1分間撮影するだけで、ストライド(歩幅)、ピッチ(一歩の時間)などを自動解析して、1人ひとりの走り方に最適なトレーニングアドバイスやシューズの提案を行います。なお、推奨されたシューズで皇居の周りを試し走りすることも可能です。

▲実証実験は、Run Pit(東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル1階)の営業時間中(平日7時~22時、土日祝8時~18時)に利用可能

 今回の取り組みは、KDDIがスタートアップ企業とともに事業を共創する「KDDI ∞ Labo 5G プログラム」の一環として実施されます。スポーツ科学に基づく動作解析を研究・開発している、Sportipの「Runnning Form Analyzer」を活用しています。

▲Runnning Form Analyzerの機能について。Sportip独自の画像解析技術「Sportip AI」を用いています

 取材会場ではデモが行われました。身長、体重、目標(サブ4など)といった簡単な情報を入力し、ランニングマシンで1分走ると、ピッチ、ストライド、重心上下動、体幹の前傾、腕の振り幅などの各観点から「適切なストライドです。スピードはピッチではなくストライドで調整しましょう」「前傾姿勢のため、背部の筋肉が固まりやすく肩甲骨が動きにくくなっています」などのアドバイスが表示され、また「着地位置が重心より後ろに位置しています。(中略)真上に弾むことを意識して着地しましょう」といった評価が下され、「スクワットジャンプ 10回3セット」「カーフレイズ 10回3セット」などのトレーニングメニューが提案されました。

▲デモの様子。良い姿勢、悪い姿勢でアドバイスが変わってきます

 最後に「着地判定」から、その人に合ったシューズをサジェスト。ちなみにRun Pitにて無料で貸し出されるシューズはフランスのアウトドアスポーツブランド「SALOMON(サロモン)」のランニングシューズで、速い / 快適 / 長距離の3タイプに分かれています。今後のシューズ選びの参考になることでしょう。

▲Sportip AIが薦めるシューズを借りて、試し走りに出かけましょう

必要なものは無人ショップで購入!

 Run Pitでは、米国に本社を置くedison.aiによる無人ショップも展開しています。画像解析技術によりレジでお金を支払うことなくソックス、スポーツ飲料、栄養補助ゼリー飲料などを購入できる仕組みです(事前にクレジットカードの登録が必要)。

▲無人ショップの様子。自動運転にも使われているLiDAR(ライダー)などのセンサーと、複数のカメラを利用しています

 このほかランニング中は、走行ルートや生体情報をスマートグラス「nreallight」に表示するサービスなども順次追加していく見込み。各シーンで最新のテクノロジーがサポートする、まったく新しいランニング体験が楽しめそうです。

▲スポーツジムの未来予想図。入店、診断、購入、運動、退店までをデジタル技術がサポートします

 スポーツジムの来たるべき世界観について、KDDIの中馬和彦氏は次のように紹介しました。

「2020年春に5Gが本格スタートすることで、リアルの世界とネットの世界の融合が進みます。すると会員証もスマホもいらず、顔認証だけで自由に入館できるようになる。AIが今日のコンディションを解析してトレーニングを提案、利用者はAIグラスをかけることでコーチングを受けられます。トレーニング後には活動量などのデータが提示され、個人の疲労度に即したサプリが提供されるでしょう」

▲(左から)KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏、Sportip 代表取締役CEOの高久侑也氏、Edison.ai CSOの山浦真由子氏

 またSportipの高久侑也氏は、研究の進捗について「いまスポーツ、フィットネス、リハビリの分野で活用できる、指導者をアシストするAIを研究中です。今回の実証実験では、身体に何もマーカーをつけず、また従来に比べて格段に短い時間(1分)でランニングフォームの解析が可能になりました。動きの位相を分析することでトレーニングメニューを提案し、着地判定により最適なシューズを提案しています。2020年にはフィットネスにAIコーチを導入していく方針です」と意欲的に語ります。

▲AIによる無人パーソナルトレーニングジムの実現を目指しています、とSportipの高久氏

 Edison.aiの山浦真由子氏は、今回の取り組みの意義について「働き手不足が深刻化し、大手コンビニでは労働時間の短縮なども議論されています。無人ショップなら出店のハードルが下がり、また人を本当に必要なところに配置できるようになるでしょう。ランナー向けのサプリやソックスなどの商品は、実際に手にとって確かめてから購入したい人も多く、Run Pitにおける実証実験はニーズにも合っていると考えています」と話していました。

▲リアル店舗でもネットショップでもない、無人ショップのメリットについてアピールしたEdison.aiの山浦氏

 上記のランニングフォームの自動解析、および無人ショップを体験できる催し「皇居ナイトランイベント」の開催も予定されています(参加費無料)。モデルでSALOMONアンバサダーのヤハラリカさんと一緒に走れるイベントで、日時は2019年12月26日(19時半~21時半)。対象者はRun Pitの月額会員 / 都度会員となっています。イベントの申し込み方法など、詳細は公式サイトを参照のこと。

 スポーツメーカー各社から、さまざまなシューズが販売されている昨今。何を買ったら良いか分からない、あるいは購入したものの「どうも足にフィットしていない気がする」という方も多いのではないでしょうか。自分では気が付かないうちに、癖のある走り方をしている可能性もあります。この機会に1度、Run Pitでランニングフォームの自動解析を試してみてはいかがでしょうか。

<Text & Photo:近藤謙太郎>