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さまざまな格差について見直す時期、フェデラーの提言から考えたこと│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#48

 アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、世界のスポーツにも大きな影響を与えています。そんななか、テニス界を代表するレジェンドプレイヤーがある提言をしました。なぜ、その言葉が出されたのか、そしてその発言が持つ意味とは。自身もテニス愛好家の甘糟さんが綴ります。

私、このことをきっかけに考えてしまいました

 全世界的にスポーツ興行がストップしてしまった春でした。スポーツだけではなく、ありとあらゆる活動が止まりました。コロナさえなければと思うことは多々ありますが(みんなそうですよね)、おかげで立ち止まって考えるきっかけや、いつもとは違った角度で物事を見る機会にもなりました。

 フェデラーってかっこいいなあと改めて思いました。もちろんテニスのロジャー・フェデラーですよ。

 彼は4月22日、自身のツイッターで、今回の騒動をきっかけにATPとWTAを統合したらどうだろうかと提案したのです。ATPとは「アソシエーション・オブ・テニス・プロフェッショナルズ」の略で、男子プロテニス協会のことです。WTAは「ウーマンズ・テニス・アソシエーションズ」の略で、女子テニス協会を指し、女子のプロの協会です。

 細かいことですが、男子の協会には「men’s」とはつけられておりません。女子だけがわざわざ「women’s」とついています。もともとは女子のテニスツアーもATPの下で行われていました。といっても、優勝賞金は男子の8分の1程度。添え物的な扱いだったのでしょう。そのことに抗議をしたキング夫人が協会を抜けて立ち上げたのがWTA。さかること50年、1970年代の話です。その辺りの経緯は『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』という映画をぜひご覧下さい。

▲キング夫人(写真右)と、映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』で
キング夫人を演じたエマ・ストーン(写真左)

 話がそれましたが、現在プロテニスツアーはグランドスラムと呼ばれる全豪、全仏、全英、全米の4大会だけが男女共同開催で、それ以外は男女別に行われています。ロゴやランキングのシステムなどが少しずつ違います。

 フェデラーは協会を統一させることで、そうしたわかりにくさが解消されるだろうと述べました。コロナで弱っている今こそ、そのチャンスではないかと。キング夫人は「我々がずっと訴えてきたこと」と賛同し、女子のスター選手はもちろん、ラファエル・ナダル、スタン・ワウリンカなどの男子選手もフェデラーを支持しているそうです。フェデラー、本当にかっこいい!!!!!

 私、このことをきっかけに考えてしまいました。

 プロスポーツはプロなんだから集客によって扱いや得られる金額に差が出るのは当たり前です。強い者、人気がある者が稼げるシステムなのは当然。今まではそう思っていました。しかし、本当にそうなのでしょうか。試合は一人ではできませんから、強い者&勝者がいて弱い者&敗者がある状態が通常なわけであって、だったらその状態すべてを含めて一つと考えるべきではないのでしょうか。この考えを突き詰めていくと勝者に対しての「やりがい搾取」になるかもしれないけれど、でも、今の私たちはそういうことを念頭に置く必要があるような気がします。

 男女差はもちろん、さまざまな格差について見直す時期なのです。きっと。

 しかし、私はこういう発信があるとつい横目でその動向を気にしてしまうのが、某一流選手。「男子の試合の方が人気だから、男子選手の方がより多く賞金をもらうべき」と発言し、後から謝罪したあの選手です。これ、選手ではない関係者(トーナメントの主催者)が、男子の人気に女子は「ひざまづいて感謝すべきだ」と発言して辞任に追い込まれた件に関して、意見を求められた上での発言だったのですよ。信じられないことに。

 その選手はテニスの技術や試合における駆け引きや精神力が優れているのでしょうけれど、人としてまったく尊敬できないです。この選手はフェデラーの今回の提案についてどう反応しているのかを検索してみても、何も出てきませんでした。フライパンでテニスしている様子は確認しましたけれどね。

 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の時代から50年もの時間が過ぎました。私たちは少しでも前進できているのでしょうか。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。GQ JAPANで小説『空と海のあわいに』も連載中。近著に『鎌倉の家』(河出書房新社)『産まなくても、産めなくても』文庫版(講談社)

《新刊のお知らせ》

幼少期から鎌倉で育ち、今なお住み続ける甘糟りり子さんが、愛し、慈しみ、ともに過ごしてきたともいえる、鎌倉の珠玉の美味を語るエッセイ集『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)が4月3日より発売。

⇒Amazonでチェックする

<Text:甘糟りり子/Photo:Getty Images>

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