2021年2月25日

オリンピックに出場するには大量の事務手続きがあるんです│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート〜for2020〜」#50

 みなさん、こんにちは。陸上競技の寺田明日香と申します!

 少しずつ気温が高くなる日も増え、春ももうすぐだと感じられる今日この頃ですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか? 首都圏や関西圏では緊急事態宣言が延長となり、まだまだ動きにくい日々が続きますが、健康第一で過ごしていきたいですね。

 さて、今回のコラムは「オリンピックに向けた選手の事務手続きのいろいろ」について書いていこうと思います。最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします!

オリンピック代表候補も手続きが必要

 オリンピックやアジア大会において日本代表選手として派遣される場合、実は事前にさまざまな手続きや検査をする必要があります。

 東京オリンピックに向けての手続きはというと、延期決定前の2020年2月と、決定後の2021年1月に2度、国立スポーツ科学センター(JISS)内のハイパフォーマンスセンター(以下、HPSC)内で行われました。

 早い時期に代表に内定している競技の選手は、もしかしたら代表内定後に手続きや検査をしているのかもしれませんが、陸上競技はマラソンと一部の競歩&長距離種目を除いては代表が決まっていないので、代表になり得る選手は全員その手続きを受けています。

 じゃあ、一体どんなことをしているの?というところですが、主に作業は4つです。

①選手登録のための個人情報書類(パスポート)などの関係書類提出
②メディカルチェック
③アンチドーピング研修
④オリンピック公式ユニフォームの採寸

からだも心も細部まで入念にチェック!

 「①選手登録のための個人情報書類(パスポート)などの関係書類提出」は、パスポートやもともと競技団体に提出している個人情報をもとに作成されている書類の情報に相違がないかをチェックしたり、日本代表選手として活動する期間の肖像権や行動規範についての同意書を提出したりします。この作業はあっという間に終わります。

 「②メディカルチェック」は、メンタル面とからだの健康状態をチェックします。メンタルチェックは、情緒に関する質問が書いてあるチェックシートを数枚こなし提出すると、後日自分のメンタルがどのような状態にあるかのフィードバックが返ってきます。これ、けっこうおもしろいのです。からだのチェックは、一般的な健康診断とほぼ同じようなものと考えていただくとわかりやすいです。

 ただ、ふつうの健康診断と違うところは、選手しか入れないHPSC内にあるクリニックで行われることや、内科の問診のほかに整形外科の問診があること。同じ場所で歯科の問診があること、アライメントチェック(関節の屈曲進展の角度や筋肉の状態を測ること)があること。栄養士による栄養チェックがあることなど、少し踏み込んだところまでチェックされます。血液検査もあるため、貧血や炎症反応などもここでわかる場合もあります。

 「③アンチドーピング研修」は、アスリートとしてはとても大切な研修になります。アスリートは、違反になる物質を絶対にからだに入れてはいけません。その違反物質も変更になる場合があるため、ドーピングに関する国際的なルールを理解していることが求められます。また、違反物質に気をつけるほかにも、ふだんの居場所情報を提出する義務があります。それらのことをこの研修で再確認します。

 ここで抜き打ちドーピング検査にピックアップされる選手もおり、私は2回目の手続きのときにドーピング検査を行いました。半日の間に2回も尿検査することなんて、なかなかないのではないでしょうか……。

え? 最後は公式ユニフォームで撮影!?

 さぁ、最後の「④オリンピック公式ユニフォームの採寸」は、大会公式スポンサーのメーカーが入り、オリンピック出場時に使用するスーツやジャージ、レース用ユニフォーム、靴などの採寸です。それぞれのコーナーが設けられており、選手それぞれが採寸を進めていきます。

 採寸終了後は、代表入りした場合に使われる選手写真を撮ります。ちゃんと化粧していかなったことに、ここで後悔しましたが(笑)、ひと足先にオリンピック公式ユニフォームを見ることができるので、少しテンションが上がる場面でした……!

 全対象選手を1日で対応するのは不可能なので、十数名ずつ何日かに分かれて、これらの作業を半日かけて行います。

 日本代表選手は選手や競技に関わるスタッフだけの力ではなく、このように選手登録のための資料を作ったり、検査したりと、多くの手続きを行ってくれる方々の上で成り立っています。そのようなことにも感謝しながら、日本代表として恥じぬ行動をして行きたいと思っています。

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ

◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後の主なスケジュール】
●第104回日本陸上競技選手権大会・室内競技/2021日本室内陸上競技大阪大会
2021年3月17日(水)~18日(木) 大阪・大阪城ホール
●第53回織田幹雄記念国際陸上競技大会
2021年4月29日(木) 広島・広域公園
●第105回日本陸上競技選手権大会
2021年6月24日(木)~27日(日) 大阪・ヤンマースタジアム長居
●東京オリンピック
2021年7月30日(金)~8月8日(日)予定

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<Text & Photo:寺田明日香/Edit:松田政紀(アート・サプライ)>