2017年9月8日

野球のバットスイング上達に強い味方。ヘッドスピードから回転半径まで測定する「ミズノスイングトレーサー」

 最新技術によって日々、さまざまなデジタルグッズが登場しています。その中には、スポーツや運動をもっと楽しくしたり、トレーニングを効率化したりできるものもあります。

 今回はそんなガジェットの中でも、野球のスイングをセンサーによって精密に測定できる「ミズノスイングトレーサー」にフォーカスしてみました。バットのグリップエンドに専用アタッチメントで取り付けることで、自分のスイングを精密に測定できます。


最新のセンサー技術でバットスイングが丸裸に

 このスイングトレーサー、実はセンサー自体はセイコーエプソンが製造しているもの。以前にレビューした「M-Tracer」がベースになっているので、外観や使い方はよく良く似ています。ただし、野球とゴルフとは道具も動作も違うので、当然、測定結果も野球に合わせたものになっています。

 スイングトレーサーで測定できるのは、全部で以下の8項目です。

1)スイング時間:スイング開始からボールがバットにあたるまでの時間
2)ヘッドスピード(MAX):スイングしたときのバットの速さ
3)ヘッドスピード(インパクト時):ボールがバットに当たった時のバットの速さ
4)インパクト加速度:バットがボールに当たる寸前のヘッドスピードの変化量
5)ローリング:インパクト時にボールにどれだけバックスピンを掛けられたか
6)スイング回転半径:スイングのコンパクトさ
7)ヘッド角度:ボールがバットに当たった時のバットの傾き
8)スイング軌道:スイングが上向きか、下向きか

 これらの数値によって、バットスイングが丸裸になるというわけです。


センサーとスマホで誰でも簡単に測定

 今回は、御茶ノ水にあるミズノの直営店「エスポートミズノ」にご協力をいただいて、5階の野球用品売り場の小牧一詩さんのご指導のもと、スイングトレーサーを試してみました。

 使い方自体はとても簡単です。センサーをバットのグリップエンドに取り付けて電源をオンに。スマホやタブレットでアプリを立ち上げて、センサーとリンクさせ、測定モードに設定します。あとは、右打ちか左打ちか、ティーバッティングかトスバッティングかフリーバッティングか、単発計測(1球だけ測定)か連続計測(20球まで連続で測定)かなど……。状況を設定したら準備完了。あとはボールを打つだけです。

 測定が成功すると、8つの測定項目とスイング軌道の3Dアニメーションが表示されます。このアニメーションは、さまざまな角度から見ることができます。特に注目なのはヘッドスピード。打球を飛ばすためには、とにかくヘッドスピードが必要となります。なので、それにあわせたトレーニングを行って、スイングトレーサーで定期的に測定し、効果を確認するというわけです。

 さて、実際に筆者も試してみました。1回目に測定したところ、スイングスピードはMAXが時速91.4キロ、インパクト時は91.3キロという結果に。高校野球なら119.2~147.8キロ前後、社会人野球は124.0~154.4キロ前後なので、それに比べると我ながらかなりのヘボバッティング……。ただ、MAXとインパクト時の速度差が小さいので、その点では理想的なスイングができていました。

 実際の野球の練習では、ここから何度もバッティングしながらスイングを繰り返すことで、どうすれば良いスイングができるのかを体で覚えることができます。実際に感覚だけでなく具体的な数値で把握できることで、効果的な練習ができることを実感できました。

 また、会員限定サイトでは元侍ジャパン社会人代表監督の小島啓民さんによる、スイングトレーサーを使ったトレーニングアドバイスを見ることができます。例えば、ヘッドスピードを上げるには、体力をアップし、上半身だけに頼らないようにするなど。具体的なアドバイスが映像付きで得ることができます。


コーチ専用アプリでチーム全体を正しく把握

 何度もスイングを繰り返して、数値のばらつきが少ない安定したスイングができるようになる。全力のスイングだけでなく8割の力でスイングしたときの数値を把握して感覚を体で覚えるなど……。スイングトレーサーは、他にもさまざまな使い方が考えられます。

 また、アプリからは過去の自分のデータだけでなく、プロ野球選手のバッティングデータも見ることができます。自分が目標とする選手を比較して、自分のバッティングのどこを改善すべきか確認できるというわけです。

 さらにスイングトレーサーには、測定用の選手向けアプリだけでなく、コーチ専用のアプリが用意されています。団体競技である野球の場合、指導者は複数の選手を見なければなりません。そこでコーチ用アプリは、複数のアカウントを登録することでデータを共有し、チーム全体のデータをまとめて見ることができます。

 これによって、指導者は数値に基づいたバッティングフォームの修正やトレーニングを選手ごとに行ったり、チーム内での数値を比較して打順の参考にしたりできるというわけです。小牧さんによると、実際に高校野球や社会人野球だけでなく、プロ野球のチームでもスイングトレーサーを練習に導入しているところがあるのだとか。

 ちなみにスイングトレーサーを利用するためには、センサー(32,184円/税込み)とバットに取り付けるためのアタッチメント(1,944円/税込み)の他に、アプリのサーバー利用料が必要となります。サーバー利用料は選手用が毎月980円(税込み)、コーチ用が毎月2,980円(税込み)です。……どちらかというと趣味で草野球をしている人よりも、高校野球や社会人野球など大会で成果を目指しているチーム向けかもしれませんね。

 スイングトレーサーは、簡単な操作でバッティングを正確に測定できるので、練習のなかに取り入れやすいアイテムです。現状を正しく把握することは、スポーツの上達にとって必要不可欠。大会でもっと良い成績を残したい選手、チーム全体のバッティングを向上させたいという野球チームの指導者にとって、強い味方になるはずです。

[取材協力]
エスポートミズノ(ミズノ東京)
東京都千代田区神田小川町3-1
TEL:03-3233-7000(売場番号案内)
営業時間:11:00~20:00
http://www.mizuno.jp/shop/flag/s-port/data.aspx

<Text:青山祐輔/Photo:青山祐輔、ミズノ>