父親を尊敬できない人に共通する心理とは。「感謝しているのに嫌い」はなぜ起こる?
育ててくれたことには感謝している。でも尊敬できない。むしろ嫌いかも。
「感謝しているのに嫌い」という気持ちは、なぜ生まれるのでしょうか。父親を尊敬できないと感じる方に共通する心理と、「感謝しているのに嫌い」という一見矛盾した感情。そこには、どのような心理や親子関係が影響しているのでしょうか。
一般社団法人マミリア代表理事、臨床心理士、公認心理師の鎌田怜那さん監修のもとお届けします。
父親を尊敬できないと感じる人に共通する3つの心理
父親を尊敬できないという感情の背景には、父親自身の人柄そのものよりも、これまでの関係性の積み重ねが関わっていることが少なくありません。
価値観の違いによるすれ違い
働き方や家族のあり方、生き方の優先順位など、父親の世代と自分の世代とでは、価値観が大きく異なることがあります。
どちらが正しい、間違っているという話ではなく、時代背景による価値観の違いが、理解し合えないもどかしさや、共感しにくさにつながることがあります。
幼少期のコミュニケーション不足
昔は、父親が仕事に専念し、感情表現やコミュニケーションを積極的に取らない家庭も少なくありませんでした。悪意があったわけではなくとも、幼少期に十分な会話や触れ合いが少なかったことは、大人になってからの心の距離として残りやすいものです。
期待の父親像と現実とのギャップ
「父親とはこうあるべき」という理想像を、無意識のうちに抱いていることがあります。頼りがいがある、いつも正しい判断をしてくれるといったイメージと実際の父親の姿とのギャップが大きいほど、尊敬という感情を持ちにくくなることがあります。
「感謝しているのに嫌い」という感情はなぜ起こる?
「感謝」と「嫌い」。一見矛盾しているように感じるこの感情ですが、決しておかしなことではありません。
感謝の気持ちは、育ててもらった、生活を支えてもらったという客観的な事実に対して抱くものです。一方で「嫌い」という感情は、日々のやり取りの中で実際にどう感じてきたか、どんな言葉をかけられてきたかという感情的な体験の積み重ねから生まれます。
「感謝しているのに嫌いだと感じるなんて、自分は薄情なのでは」と、自分を責めてしまう方もいますが、そう感じる必要はありません。
「感謝」の感覚があるのは、客観的に自分の生い立ちを振り返ることができるようになったという自身の成長として捉えることもできます。感謝できることがあって感謝できるのと、感謝できることがないけれど感謝しているというのとでは大違いです。
後者であれば、今後の生きづらさにつながる可能性も否定できないので、本当は感謝できない気持ちと向き合うことも大事な時間になります。

「感謝してるけれど」の背景には、母親が影響していることもあります。
幼い頃に、父親に対して満たされない思いを抱いていても、母親に「お父さんはあなたのこと大事に思ってるよ」「お父さんはあなたのために頑張ってるのよ」などの声をかけられていたのかもしれません。父親に対するネガティブな感情に蓋をせざるを得ない状況があったのかもしれません。
これが、頭では感謝しているけど、心では好きになれないというメカニズムの土台になります。
こんなパターンは危険かも。子どもをダメにする父親の特徴
さらに、子どもの心の成長に影響を与えやすい「NGな関わり方」があります。いま父親の立場である人は振り返ってみましょう。
否定する、比較する
まず、否定的な言葉を多く使い、褒めることが少ない関わり方はよくありません。「なぜできないんだ」という言葉が中心になると、子どもは自分に自信を持ちにくくなります。
また、きょうだいや他人と比較しながら評価する関わり方も、自己肯定感の育ちにくさにつながることがあります。
そして、「父親自身を比較対象にする」ことも、子どもに負の影響を与える一つになります。とくに男の子にとって、自分と父親の過去を比較されると、自信のなさや劣等感を強く植え付けられます。
子どもとしては、父親の優秀な過去を「自慢」を聞かされているだけです。この状況で、自分はどんなに頑張っても認めてもらえないと戦意喪失状態で、何をするにもやる気が出ない、すぐに諦めてしまうなどの心の癖に繋がってしまいます。
感情を伝えず何を考えているかわかりにくい
感情を表に出さず、何を考えているかわかりにくい関わり方も、子どもとの心の距離を生みやすい特徴のひとつです。子どもは、親の反応がわからないと、安心して本音を話しにくくなってしまいます。
高圧的な態度
高圧的な態度で自分の考えを一方的に押しつける関わり方も、子どもが自分の意見を持ちにくくなる一因になります。
父親だけの問題ではなく時代や環境も関係している
こうした特徴は、父親自身が育った環境や、その時代の子育ての常識が影響していることも多く、必ずしも悪意から生まれたものとは限りません。とはいえ正当化はできませんし、あなたが我慢したりする必要もありません。
心の繋がりが希薄であれば、心から「感謝する」ことは難しいです。たくさん叱られたけれど、たくさん褒めてもくれた。たくさん遊んでくれた。たくさん教えてくれたなどの幼少期の体験や記憶が心の繋がりを強く濃くします。
父親に対して矛盾する感情を抱えたまま、子どもが生まれ親になると、親との関係で悩んでいたことが、我が子との間に持ち越されます。
複雑な感情を抱いていても問題ではありません。ただ、その感情に蓋をし続けることが問題です。嫌いな父親も、いずれは我が子の祖父となります。そして、いずれは父親を介護するときが来るかもしれません。矛盾する気持ちに気づいたのであれば、ゆっくりその気持ちに向き合い整理する時間を持つことをおすすめします。
気持ちの整理がつかず苦しい場合は、専門家に話を聞いてもらうことも有効な選択肢のひとつです。
監修者プロフィール
鎌田怜那(かまだ・れいな)
一般社団法人マミリア代表理事。臨床心理士、公認心理師。
【所属学会・協会】
・日本臨床心理士会
・日本公認心理師協会
・日本心理臨床学会
・日本アタッチメント育児協会
公式サイト https://mamilia.jp/
<Text:外薗 拓 Edit:編集部>











