心身を鍛え、人に優しい子に育つ。キックボクシング王者・勝次が教える「キッズクラス」とは (1/2)
キックボクシングイベント『KNOCK OUT』において2試合連続で大激闘を制し、初代ライト級王座決定トーナメント決勝へとコマを進めた新日本キックボクシング日本ライト級王者・勝次選手。現役選手としてのトレーニングを重ねながら、週に1回、東京都・大田区にあるジム「Kick Box」で子どもたちにキックボクシングの指導をしています。実際にどんな練習が行われているのか、見学して来ました。
年齢に関係なく、みんなで成長していくキッズクラス
「チャンピオンになったら自分のジムを開き、子どもたちに指導したいという夢があって。5年前、僕がもともとコーチをしていたここ、Kick Boxで会長に自分からキッズクラスの設立を提案したんです」と勝次選手。
彼が担当するキッズクラスは、毎週金曜日に、約90分間行っています。メンバーは男女約10名。レッスン開始前、大人たちが縄跳びをしたりサンドバッグを叩く横で、子どもたちはもみくちゃになって遊んでいます。この日の参加者は幼稚園年長から中学生まで。
子どもたちを膝や肩に乗せ、一緒になってじゃれている勝次コーチ。試合前に見せる眼光が鋭い表情とはまるで別人のように、目尻を下げて楽しげな表情を見せています。
ところがレッスンがはじまるとキリリとした表情に戻り、コーチも子どもたちも大きな声で「お願いします!」と挨拶。まずは丹念にストレッチをして、ケガをしないように準備を整えます。
次にキックボクシングの基本の構えとシャドーボクシング。ステップとパンチをもって、攻守の技を一瞬で繰り出す基本中の基本の練習です。ところが簡単なようで、これがなかなか奥が深い。たとえいいパンチを打っても、防御が甘くてはかえって相手にチャンスを与えることになります。全身だけでなく頭も使うので、みるみるうちに子どもたちは汗をかき始めました。
ここでジムを出て、往復約30分かけて近所の池上本門寺までロードワークへ出かけます(取材当日は雨が降っていたのでロードワークはお休み)。小学生も中学生も関係なくみんな一斉にスタート。小さな子は勝次コーチが手をつないで、ときには泣き出す子を励ましながら一緒に走っていくのです。このロードワーク、なんといってもキツいのは、九十七段の階段ダッシュ。ああ、想像しただけで息が上がりそうです。
次はマススパーリング。2人1組になって、実践的な練習をします。最初に練習したシャドーが功を成す場面です。相手に軽く当てる程度ですが、試合さながらの真剣な眼差しで相手に挑む表情は、とっても勇ましく感じられました。
最後に100本蹴り。サンドバックで右足、左足、それぞれ100本ずつ渾身の蹴りを打ち込んでいきます。後半になると疲労で足が上がらなくなり、悲鳴をあげながら打ち込む子も……。みんな汗だくになりながら、この日のレッスンは終了しました。
子どものためを思って指導してくれる勝次コーチに全幅の信頼をおいている
練習後、キッズクラスに通っている小学5年生、3年生、幼稚園年長の3人兄弟のお母さんにお話を聞きました。
――ジムに入会したきっかけは?
3人とも男の子なので、自分自身と自分の大切な人くらい守れるようになってほしいと思って入会させました。一番上は入会して今年でもう5年目です。うちの子はみんなやんちゃなので、勝次コーチには「ダメなことをしたら泣かしてもいいので、きちんと叱ってください」とお願いしています(笑)。
――格闘技と聞くと、怪我や他にもいろいろな心配があると思いますが。
練習のときはヘッドギアやレガース(すねを守る防具)をつけるので安心です。たとえ怪我してもそこから学ぶこともいっぱいあると思うし。あまり大きな怪我は困りますけど。たとえ子どもたちがキックボクシングを上手にできなくても、親としたら頑張っている姿が見られればいいと思っています。ジムの会長と勝次コーチに全幅の信頼をおいてジムに通わせています。
――キックボクシングを始めてからお子さんたちに変化が見られますか?