インタビュー
2019年11月18日

中学は努力不足で勝てなかった。その挫折を経て主体的に練習するようになった。バドミントン元日本代表・池田信太郎(後編)|子どもの頃こんな習い事してました #27 (2/2)

――池田さんは現役時代ダブルスでご活躍されました。シングルとダブルス、気持ちをどのように切り替えていますか。

2人はおもしろいし、たいへん。チームスポーツは3人以上いると仲介役がいてバランスが取れる。2人だと、言いにくいことも面と向かって話さなければならないから、日頃のコミュニケーションが大切。コミュニケーションから逃げたら勝てないし、2人が同じトーンでがんばらないと勝てない。嫌でしたよ。「こんなこと言いたくないよ」ということもありました。でも誰も助けてくれないのでハードルが高いけれども成長できます。

送り迎えが難しいとなかなか習い事を続けられない

――池田さんご自身のお子さんは何を習っていますか。

小学3年生の息子と1歳半の娘がいますが、息子はゴルフを習っています。最近、塾にも行き始めました。スポーツの習い事は、強くなってほしいというよりも習慣化してほしい。友だちと遊んだり宿題したりするのと同じように、体を動かすことを習慣にしてほしいんです。

スポーツは勝ち負けがあったり、勝つために一生懸命努力したり、チームメイトとコミュニケーションを取ったり、リーダーシップが学べたり、学校の授業では習えないことがたくさんあるので、子どもたちには継続的にスポーツに触れてほしいと思います。どのスポーツをするにしても、ある程度、一流のところに触れさせてあげたいですね。

――ゴルフを習うというのは珍しいですね。

今、軽井沢に住んでいるんです。いろいろ習わせたいことはありますが、妻も働いているので、地理的な条件もあり送り迎えの状況を考えると、何を継続的に習わせるか悩みどころです。

――確かに、習い事は親の負担もけっこうあります。

東京でも小学生までの子どもがいる共働き家庭が61.5%にものぼっているのが現状で(平成29年度東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」)、共働きで収入が上がって習い事をさせる経済的環境は整ってはいるけれど、送り迎えができなくて断念するケースもけっこうあるようです。

親御さんの仕事も副業が認められるなど以前に比べて働き方改革は進んでいますが、とはいえ定時まで仕事をして帰宅して子どもに夕飯を作って、その他の家事もこなして……となると、習い事まで手がまわらない。このような状況を変えていかないと、子どもたちが習い事によっていろいろな可能性を広げていくことは難しい。現状、習い事は親御さんの支援が手厚いか、ごく近くにあって通いやすいかの2択になってしまうと思います。

――お子さんにはバドミントンは習わせたいですか。

やらせたくないです。僕の息子ということでプレッシャーがかかるだろうし、今住んでいるところの近くにはクラブがない。僕が教えるにしても、仕事の都合で土日だけになってしまう。週1回では練習が足りないので習わせないと思います。それに、僕自身、子どもを通して知らないスポーツを見ているほうが夢を持てますし。

――今、ご自身が習ってみたいことは。

ゴルフです。今まで我流でやってきたので限界がある。ちゃんと習いたい。夏はサーフィン、冬はスノボも。今までできなかったことをきちんと習ってみたいですね。

――今後の活動について教えてください。

子どもたちにバドミントンを教える機会はつくりたいと思っています。ただ技術を教え込むのは他にもたくさん指導者がいる。僕は僕にしかできないことを教えたい。もちろん技術も教えますが、バドミントンを通しての人間形成、コミュニケーション力、人として成長できるということを伝えていけたら。

勝利至上主義でスポーツを教えてしまうと、仮に強い選手に育ったとしても、引退してからの人生もあるわけですから長い目で見るとその子のためにならないと思う。子どもにとっての成長過程のなかで、うまくバドミントンを生かしていけたらいいですね。

[プロフィール]
池田信太郎(いけだ・しんたろう)
1980年生まれ、福岡県出身。筑波大学卒業後、日本ユニシス、エボラブルアジアに所属。2006年、2008年全日本総合選手権優勝(男子ダブルス)。2007年に開催された世界選手権では日本男子初のメダルを獲得。2008年北京オリンピック出場。2009年に日本人初のプロバドミントン選手となる。同年に混合ダブルスに転向し、2012年全日本総合選手権優勝、同年ロンドンオリンピック出場。2015年9月に現役を引退。東京2020オリンピック、パラリンピック組織委員会ACメンバーとして活動。

<Text:安楽由紀子/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:小島マサヒロ>

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