走りを学べるスクール型チーム。宮城県「Seads杜の都」│全国のランニングクラブ訪問記 #10
ランニングチームといっても、その取り組みは実に多様です。一緒に走る仲間がほしいのか、アスリートなどから指導を受けたいのか。走る目的によっても、最適な環境は異なるでしょう。今回ご紹介するのは、宮城県仙台市を拠点として活動するランニングチーム「Seads杜の都」。実業団での競技経験も持つ代表の阿久津美和子さんに、具体的な取り組みや特徴、思いなどを伺いました。
人との繋がりから巡り合い、引き継いだ「Seads杜の都」
2012年に発足した「Seads杜の都」ですが、阿久津さんが代表を務めるようになったのは2015年から。当初はランニングだけでなく、意外なスポーツのショップ・スクールも兼ねていたそうです。
「仙台出身で東京に住んでいた当時の代表者が、仕事の関係で仙台に移ることになったんです。しかし場所を移っても、趣味だけは続けたかったそうで……その趣味というのが、ランニングとダイビングでした。そこで不動産関連の企業ということもあり、ビルの一角にランニングとダイビングを組み合わせたショップとスクールを作ったんですよ。それが、Seads杜の都の始まりです」
なんと、陸と海という珍しい組み合わせ。チーム名にある“Seads”には、海を表す“Sea”が含まれています。しかし2014年末ごろにダイビングショップを閉店することとなり、ランニングはどうするか検討したのだとか。そこで、以前よりスタッフとして訪れていた阿久津さんが、ランニングチームを引き継ぐことになったそうです。
「せっかくのチームですから、いきなりやめてしまうのはメンバーにも申し訳ないと思いました。そのため、2015年からは私が代表という形で引き継がせていただき、活動を継続しています」
新生・Seads杜の都としてスタートしてから約3年。それでは実際にどのような活動を行っているのか、引き続き伺っていきます。
仙台市内では数少ない、指導を受けられるスクール型チーム
同チームでは実業団経験のある阿久津さんだけでなく、同じく実業団で競技されていた方、あるいは大学まで陸上部で競技していた方がコーチとして在籍しています。練習会ではただ皆で走るのではなく、スクールとしてコーチ陣からしっかり指導を受けることができます。仙台市内にはたくさんのランニングチームが存在しますが、スクールとして指導の受けられるチームは少ないそうです。
「練習は水曜夜と日曜午前中を基本として、火曜日も隔週で行っています。そのほか、5月からトレイルの練習会も始めました。だいたい日曜は15名前後、水曜は5〜10名ほどが参加しています。まずは30分くらいかけて全員でウォーミングアップを行い、それから練習本番。練習中はコーチが一緒に走ったり、フォームを見てアドバイスをしています」
練習では走力に応じてグループ分け。どうしてもスタッフが少ないときは見る側に徹しなくてはいけないものの、マネージャーなどがいる場合は阿久津さんも一緒に走ります。
「とにかく、怪我だけはしてほしくないと思っています。よくウォーミングアップせずいきなり走ってしまう方がいますが、チームでは必ず、最低でも体操だけは事前に行うように伝えているんです。そして練習では皆さんのフォームを見て、例えば筋力や柔軟性など改善点についてアドバイスをします。実際、走りを見てほしいと言ってチームに入る方は多いですね」
阿久津さんを含め、豊富な知識と経験を持つコーチ陣だけで構成された同チーム。走力アップを目指すランナーにとっては、これ以上ない環境といえるのではないでしょうか。しかしメンバーの中には、未経験からスタートする方もいるようです。
「だいたい7割くらいが男性で、40〜50代が多いですね。30代は順調に走れていたものの、少しずつ記録が伸び悩んだり、怪我をするようになったというケース。女性の場合は、むしろ未経験で、ランニングを始めたいから走り方を教えてほしいという人も少なくありません。年齢層も女性は30〜40代が多いんですよ」
走力や経験、年齢などは実にさまざま。しかしいずれにしても、メンバーは走ることにおいて達成したい目標を持っています。そして結果的に、チームに加わってから目標を果たすランナーもたくさんいるそうです。
他クラブに所属していてもOK! 長くランニングに取り組んでほしい
東北風土マラソンや東北・みやぎ復興マラソンなど、宮城県内では近年マラソン大会が増えています。中でも多くのメンバーが出走するのが「仙台国際ハーフマラソン」。大会後に行う打ち上げは、交流の機会にもなっていると語ります。
「せっかくのチームなので、メンバー同士の交流は広げていってほしいですね。もちろん、それはチーム内だけのことではなく、目標を遂げたら卒業してもいいと思っています。あるいは他のクラブやチームに所属しながら、うちで指導を受けるのも問題ありません。走ることで、どんどん輪を広げてもらえたら。それが結局、走ることの楽しみにも繋がりますから」
実際にチームでは、1年ごとによくメンバーが入れ変わるとのこと。それは単身赴任中に加入する人がいたり、目標を達成して一区切りついた人がいたり。理由はさまざまですが、たとえチーム内に知り合いがいなくても、そういった風土ならば新たな参加もしやすいのではないでしょうか。
「ランニングは走ることではありません。練習にはメリハリが必要だし、補強のように走らないトレーニングだって重要なんです。でもランナーの多くは、ただガムシャラに走りがちじゃないですか。だから、とにかく“走っていればいい”と思っている人にこそ、1度体験してみてもらいたいですね。Seads杜の都は、誰でもウェルカムですから。怪我なく走り、目標を達成させ、生涯スポーツとして長くランニングに取り組める方が増えればうれしいです」
走るうえで目標を持っている。そんな方にとって、同チームでの練習や指導は大きな支えとなってくれるでしょう。ビジターでの参加も可能ですので、まずは直接、その雰囲気や指導を体感してみてください。走りについて学び、実践することが、さらにランニングの楽しみを広げてくれるはずです。
[クラブ概要]
Seads杜の都
https://www.seadsmorinomiyako.com/
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>