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無くても走れる、でも不可欠。パラ陸上選手と義肢装具士が模索する、スポーツ用義手の可能性(前編)│新連載「わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜」#1 (1/3)

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 東京2020パラリンピックを目指すアスリートの傍らには、彼ら彼女らをサポートするヒト・モノの存在がある。双方が合わさって生まれるものとは何か。新たにスタートする本連載「わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜」では、両者の対話を通してパラスポーツのリアリティを探る。

 東京・蔵前の『オキノスポーツ義肢装具(オスポ)』。ここで代表を務める沖野敦郎さんは、数々のパラアスリートの義肢を作り続けてきた。パラ陸上・短距離の多川知希選手(AC・KITA所属/ T47/上肢切断などのクラス)も、沖野からサポートを受ける選手の一人だ。多川選手は、先天的に右前腕部の無い、隻腕のスプリンター。バトン状の義手を装着して疾走し、日本のパラ陸上界を牽引する。北京、ロンドン、リオと3大会のパラリンピックを経験し、リオでは400mリレーの銅メダルメンバーにも名を連ねた。

▲左:2016リオパラリンピック銅メダル、右:2017ロンドン世界パラ陸上銅メダル

 義足が注目されることの多いスポーツ用義肢において、義手の製作にこそ奥深さがあると沖野さんは言う。オスポにて沖野さんと多川選手の2人に、義手開発の裏側について聞いた。

▼後編はこちら

2020年を試行の場にはしたくない。パラ陸上選手と義肢装具士が模索する、スポーツ用義手の可能性(後編)│新連載「わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜」#1 | おすすめ記事×スポーツ『MELOS』

「義手付けてみたら?」 「別にいいです」

▲多川知希選手

――多川選手が陸上競技を始めたきっかけは?

多川:中学校の時に陸上部に入部したのがきっかけです。当初は陸上競技に興味があったからでも、足が速かったからでもなく、友達もいたし、楽しくやれそうだなと思って。当時は投てき競技をやってました。高校に進学してからも「また陸上部で良いか」と。大学で続ける気はなかったんですけど、パラリンピックを知って、短距離に絞って本気でやってみようかなと思い直しました。中学3年の時にはリレーメンバーになったりもしていたので、続けていれば速くなるのかな、という気持ちは以前からあったんです。

――パラリンピックはどのように知ったのでしょうか。

多川:親のすすめですね。「陸上やるならこういうのもあるよ」と言われて『全国障がい者スポーツ大会』の横浜市予選会に出たら断トツで優勝したりして、けっこう楽しくて。それで「活躍できそうだな」と(笑)。この世界で挑戦してみるのも面白いかなと思いました。

▲多川選手(撮影:吉田直人)

――短距離を始めた当時、義手は装着していたんですか?

多川:付けていなかったですね。沖野さんと出会ってからもしばらくは作りませんでした。義手の説明も受けたんですけど、僕自身、何でも受け入れるのがあまり得意ではなく、わりと保守的な人間で(苦笑)。義手を付けなくても不便はありませんし、無いと走れないわけでもありませんでしたから。

――沖野さんとの出会いの経緯について伺えますか?

多川:沖野さんが、パラ陸上競技連盟のサポートのために沖縄の合宿に来た時に部屋が一緒になって。その合宿には、中西麻耶選手(走幅跳)とか鈴木徹選手(走高跳)なども参加していました。

沖野:北京パラリンピック(2008年)の前だよね。

多川:そう、2007年の12月。当時は大学4年生でした。それまで沖野さんとは大会でチラっと話す程度で親しい仲ではなかったのですが、沖縄合宿を経てまともに話すようになって。

沖野:最初は、そこまで親しくもない人間からいきなり義手をすすめられても、聞いてくれないだろうと思っていました。でも、陸上競技はまっすぐ走る競技ですから、左右のバランスが良い方が効率良く進めると思っていた。とはいえ、彼が義手を受け入れてくれない以上は強くすすめませんでした。「ちょっと付けてみたらどう?」と言ったら「別にいいです」って言われたんで、そこで終わり(笑)。

――義手を付けたのは、いつごろからなんですか?

多川:北京パラリンピックイヤーの5月にドイツへ遠征に行った時に、海外選手がけっこう義手を付けていたんです。当時僕は、スタートダッシュの安定性に課題を抱えていました。自分の中で納得するスタートができる確率が低く、ちょっと悩んでいて。義手を付ければ手の長さも揃うし、安定してスタートしやすいんじゃないかと思って、ドイツから沖野さんに連絡して、帰国後に義手を製作することになりました。その後、7月の関東大会で初めて義手を付けて走ったんです。

軽さの追求と義手への慣れ

▲沖野敦郎さん(写真左)

――義手を付けて走ってみてどうでしたか?

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