インタビュー
2019年8月3日

皆川猿時が語る、盟友・阿部サダヲ&宮藤官九郎へのリスペクト、過酷だった減量20キロ│『いだてん』インタビュー (2/3)

阿部くんと相談することはない。流れで、こう来たから、こう反応

―― 阿部さんとはおもしろいやりとりが続きます。思い出に残っているシーンはありますか。

「大人計画」の舞台だと、阿部くんはツッコミの役が多いんですよ。変な登場人物すべてに阿部くんがつっこんでいく感じなんですけど、今回は阿部くんが一番変ですよね(笑)。僕は、そんな阿部くんをつっこむというより、なだめていく役です。新鮮ですね。でも阿部くんって本来、ボケたい人だと思うんですよね。だから、すごい活き活きしてる気がします。

印象に残っているのは、メダル至上主義みたいになっていく田畑さんに松澤が歯向かうシーン。ま、でも田畑さんの熱い想いを知って、「誤解してた、ごめんね」なんて和解するんですけど。真面目というか、腹をわって本心を語り合うシーンだったので、「うわぁ。目が合ってる恥ずかしいよぉ」とか思いながら(笑)。

―― お二人で相談しながら演技することもあるんですか。

それはないです。流れでやってますね。こう来たから、こう反応しようと。

―― 長年の経験が活きているんでしょうか。

そうですね。それはやっぱり、長年、一緒に芝居をやっているんで。台本を読んで、こんな感じかなぁと想像しつつ、あとは現場で。先ほどのシーンですが「阿部くん、俺あのとき泣こうとしてたんだよ」って言ったら「嘘だろ、気持ち悪い」って言われました(笑)。僕、芝居で一回も泣いたことないくせに、よし泣いてみよう!って急に思い立ちまして。いいシーンだし、涙バージン、阿部くんに捧げようって(笑)。全然泣けなかったんですけどね。

―― 水泳チームは仲が良くて、一緒に飲みにも行ったそうですが、でも阿部さんは「自分だけ飲みに誘われなかった」とさみしそうに仰っていました。

いやいや、うんとね、水連の若い子たちのオールアップの日に、阿部くん以外の何人かで飲みに行ったんです、昼過ぎから。でも阿部くんは、その日も夜中まで撮影があったんですよ。で、翌日も早朝から阿部くんだけ撮影みたいな感じで。僕以外は朝方まで飲んでたみたいですけど。だから、普通誘いませんよ。誘っても来ないでしょ、普通(笑)。

気分的には本当は(それよりも前に)愛知県でエキシビションを撮りきった流れで、水連メンバー全員で飲みに行きたかったんです。でも、次の日も早朝から撮影だったりで、なかなかタイミングが合わなくて。阿部くんと僕が延泊すれば全員で飲めるって日があったんですけど、「延泊できません」ってスタッフさんに言われて。そんな経緯もあり、阿部くんは「あれ」って思ったんじゃないですかね(笑)。難しいですよね、こういうのってタイミングが。

阿部くんは天才だと思う

―― ロス五輪のとき、意見の相違を乗り越えて田畑さんと松澤さんは和解して絆が深まります。そのときの、松澤さんの気持ちはどうだったんでしょう。

田畑さんのことを誤解してた分、単純にビックリしたんだと思います。誤解してた分、感動したんじゃないんですかね。で、やっぱり、まーちゃんが好き!って(笑)。

あのー、さっき、スタジオパークの打ち合わせのときにチラっと聞いたんですけど、阿部くんはあれだけのセリフの量どうやって覚えているんだという話になって。そしたら彼、黙読で覚えるって言うんですよ。口に出して読まないんですって。リハーサルのときに、初めて覚えたセリフを口に出すみたい。いやー、ビックリしましたね。僕なんかは、何回も口に出してみてセリフを口になじませないと不安になるんです。でも、あれだけの量を黙読で覚えて、タイトな撮影スケジュールの中、瞬発力でバーっと演じていくわけですよ。なんつーんだろうなぁ、肝がすわっているというか。しかも彼は楽しそうだしね。とてもそんな楽しんでいられるセリフの量じゃない。やっぱり天才なんだろうなと思います。

あと阿部くんはね、「疲れた」とか言わないんですよ。僕なんかすぐに「疲れた」「帰りたい」「お腹空いた」って言っちゃうもんなぁ。阿部さんからはマイナスな意見を聞いたことがないですね。だから愛知県の、死にそうになった時に、阿部くんも「怖かった」とか言ってて、「あ、この子も人間なんだな」と思って(笑)。それはすごく印象に残ってますね。

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