インタビュー
2019年8月3日

皆川猿時が語る、盟友・阿部サダヲ&宮藤官九郎へのリスペクト、過酷だった減量20キロ│『いだてん』インタビュー (3/3)

想像と全然違う役だった!

―― 水泳の監督役でオファーをもらったときのお気持ちは。

監督役なので、選手たちに指示を出すだけで、楽そうだなぁと。まさか自分も泳ぐことになるとは思いませんでした(笑)。最初に、松澤一鶴さんとはこういう方です、という履歴書みたいなものをもらったんですね。東大卒で、理系の人で、理論づけて熱心に水泳指導をしていたとか。あと、上の人間からも下の人間からもおデブさんと呼ばれては、いじられキャラとして慕われ、大酒飲みで、宴会が大好きでと。あら、良いじゃない良いじゃないと。そうしたら、痩せろって言うんですよ(笑)。おかしくね、と。なんで宮藤さんはおデブさんのところを、掘り下げてくれなかったのかなぁ。

―― 普段、宮藤さんとお話はされますか。

はい。普通にいろいろ。でも、『いだてん』のことは出演が決まるまでちゃんと話してないんじゃないかなぁ。出演の話が全然来ないので、変に構えてたんだと思います(笑)。「松澤一鶴は皆川くんが良いんじゃないか」って話が出てるんだけど、って話はなんとなく聞いてましたけど。「太ってるけど大卒なんだよ。高卒じゃないんだよ。皆川くんでいいのかな?」とか(笑)。

役についての相談はしていません。でもね、ダイエットを去年の11月くらいから始めたんですけど、ちょうど宮藤さん作・演出の舞台の本番中だったんですよ。そんで楽屋で、せっせと野菜を食べたりしてたんですけど、そしたら宮藤さんに「いや皆川くん、この舞台で痩せられると困るよ」とか言われて(笑)。「なんなのよぉ」って思いました(笑)。そんな時期もありましたね。

こんなに努力しないと人って痩せられないんだ、と本当に思いました。その時期、お酒も抜いていたんです。週にハイボールを2杯までと言われていて。でも舞台の本番後に、飲みに行ったりもするじゃないですか。「どうしても今日は飲みたい」と飲み始めたら、これがいくらでも入っていくんですよ(笑)。乾いたスポンジのように。結局、何杯飲んだのか、覚えてないですもん。次の日、ウェイトトレーニングに行けないんです、ひどい二日酔いで(笑)。そのときは正直に「昨日、飲みすぎまして」と謝って、お休みさせてもらいましたけど。

宮藤さんを誤解していた

―― あらためて、今回の宮藤さんの脚本のおもしろいところは。

敗者に光を当ててるところとか、もちろん、おもしろいセリフいっぱいありますけど、宮藤さんのことを、あらためて気持ちの優しい人なんだなと思いました。阿部くんと同じく、宮藤さんとも付き合いは長いんですが、演出家としての宮藤さんは、昔、すごい怖かったんですよ。笑いへのこだわりが強くて。とにかく目つきが悪かった(笑)。

宮藤さんの監督作品、映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』(2016年公開)でも、人が人を好きになることって、なんて素敵なことなんだろうって、あらためて宮藤さんに教えてもらったような気がします(笑)。なんだろう、僕の中で、宮藤官九郎作品っておもしろいのが当たり前なんです。だから、誤解しちゃうんです。おもしろいだけじゃないですもん。「宮藤官九郎ってちゃんとしてるな。やればできるじゃん」って思うたびに、すいません誤解してました!って(笑)。ま、『グループ魂』の歌詞とかは相変わらずひどいんですけど(笑)。

―― いだてんでは、キャラクターへの愛情も感じられますか。

そうですね。それは舞台でも、映像でも、一貫してます。やっぱり、根は優しい人なんですよ(笑)。

《関連記事》
●上白石萌歌×いだてん。日本女子初の金メダリスト前畑秀子を演じる覚悟と決意:インタビュー前編
●トータス松本×いだてん。現場で起こるセッションでいかに自分を表現するか:インタビュー前編
●じろう(シソンヌ)×いだてん。「阿部サダヲさんにしかない、あのスピード感や疾走感。何かしら盗みたいなと」 
●大根仁『いだてん』1万字ロングインタビュー。「狭い部屋で撮るのは得意なんです(笑)。シベリア鉄道の旅の演出はワクワクした」

<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>

1 2 3