2018年8月8日

テクノロジーが技術の発展に貢献。“自由視点映像”がスポーツクライミングを変える!?

 2020年の東京オリンピックの正式競技に選ばれ、注目度が日増しに高まっている「スポーツクライミング」(ボルダリング、リード、スピードの3種目複合で実施)。何も道具を使わず、身ひとつで切り立った急斜面をスルスルと登っていく姿は、見事と言うほかありません。さて同競技の発展をサポートするKDDIでは、最新技術を用いた意欲的な取り組みを続けています。都内で5日に開催されたスポーツクライミングの競技大会「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2018」では“自由視点映像”という技術を活用してライブ配信を行いました。

▲KDDIの最新技術、スポーツクライミングではどのように活かされるのでしょうか

自由視点映像とは?

 まずは、自由視点映像の説明から行いましょう。スポーツ中継において、撮影されたアングルに不満を抱いたことはないでしょうか。「この選手のプレイ、別の角度から見たいな」といった願いを叶えてくれる技術が、KDDIが開発した自由視点映像です。ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2018では、会場に16台のカメラを設置。

▲会場に設置したカメラ

 当日は撮影した映像をPCで処理した後、会場に設置のディスプレイだけでなく、遠く離れたスマホやタブレットでも自由視点映像を楽しめるようデータの配信を行いました。視聴者は好きなタイミングで、好きなアングルからの映像に切り替えられる「タイムスライス自由視点」により、スポーツクライミングの世界をより深く楽しめたことでしょう。

▲自由視点映像リプレイ配信のイメージ

 百聞は一見に如かず。文章で説明するより、動画を見てもらいましょう。以下に動画を掲載しましたので、そちらをご覧ください。

自由視点映像が技術の発展につながる

 さて本稿では、その翌日に行われたイベントについて紹介しましょう。大会の舞台となったB-PUMP荻窪(東京都杉並区)は6日と7日、一般来場者に開放されました。そこでKDDIでは、SUPER FINALで使われた急斜面のルートに挑む来場者の姿を撮影し、生成した動画を無料でプレゼントする、という体験イベントを開催しました。

▲ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2018においてSUPER FINALで使われた急斜面

 実際、どのくらい難易度が高いのでしょうか。モノは試しとばかりに筆者も挑戦してみたのですが、初心者にはとても歯が立ちませんでした。そこで、フリークライマーでボルダリング日本代表の経験もある堀創(ほりつくる)さんにデモンストレーションをお願いしました。

 実際に自由視点映像を体験した堀さんは「いま、なんで落ちたんだろうと思うときがあるんです。自由視点映像なら、その理由が分析できますね。ポジションが悪かったのか、体重移動が遅かったのか、などなど。またクライマー仲間と一緒にトップクラスの選手の映像を見れば、この状態からあの動きにつなげるのかスゴイな、といった話題で盛り上がれそうです」とコメント。カメラの位置についても、床や壁につけたらどんな映像になりますか、などのアイデアをKDDIの担当者に寄せていました。

 イベントの責任者である、KDDI総合研究所 超臨場感通信グループ グループリーダーの内藤整氏は「ゆくゆくはカメラの台数も増やし、映像の画質も高めていけたら」と話します。そこで必要になるのは、高速・大容量、超低遅延、多接続が特徴の第5世代移動通信システム(5G)。ちなみに、この5G通信が商用化されるのは2020年頃と言われています。つまり2020年の東京オリンピックでは、より鮮明な自由視点映像による中継が、家庭のスマホでも楽しめるようになっている可能性があります。最先端の技術が、スポーツ観戦のあり方を変えようとしていると言えるでしょう。

<Text & Photo:近藤謙太郎>