「立ち腹筋」を毎日続けるとお腹はどう変わる?1週間~3か月の変化
歯みがきの合間や電車を待つ数分間に、立ったまま取り入れやすい腹筋運動が「立ち腹筋」です。
上体をひねったり、膝を引き上げたりする動きでお腹まわりの筋肉にアプローチします。特別な器具も必要なく、ちょっとした空き時間に取り組めるのが魅力です。
では、立ち腹筋を毎日続けると、お腹はどのように変わっていくのでしょうか。まえだ整形外科リウマチクリニック院長・前田 俊恒先生のもと、1週間、1か月、3か月と続けた場合に期待できる変化を紹介します。
立ち腹筋で鍛えられる部位はどこ?
立ち腹筋は、立った姿勢で肘と膝をおへその高さで引き寄せ、お腹に力を入れる運動です。この記事では、この動きを中心にお伝えします。

主に使われるのは、お腹の中央を縦に走る腹直筋と、脇腹にある腹斜筋です。お腹の奥にある腹横筋は、片脚で立つときに体がぐらつかないよう体幹を支えます。
膝を持ち上げる動きでは、太ももの付け根の筋肉(腸腰筋)も一緒に働きます。
立ち腹筋にはどんな効果がある?
立ち腹筋で期待できるのは、筋肉を大きくすることよりも、まず体の使い方にかかわる効果です。ここでは3つの視点から見ていきましょう。
腹筋に力を入れる感覚が身につく
運動を始めたばかりの時期は、筋肉そのものが大きくなるより、神経が筋肉をうまく使えるようになる変化が先に進むとされています。
動きを繰り返すうちに、お腹に力を入れるタイミングがつかめてくる人もいます。
姿勢の安定をサポートする
腹筋群は、立っているときや体を動かすときに、体幹を安定させる役割を担っています。肘と膝を引き寄せる立ち腹筋は片脚立ちになるため、お腹で体を支える練習になるでしょう。
腰への負担が少なく続けやすい
仰向けで上体を丸めて起こす腹筋運動は、腰の椎間板に大きな圧縮の力がかかると言われています。立ち腹筋は背骨を大きく丸め込まずに行えるため、腰への負担を抑えやすいと考えられます。
床に寝転がる必要もないので、場所や服装を選ばず続けやすい点も魅力です。
立ち腹筋でお腹は痩せる? 期待できるダイエット効果
立ち腹筋だけで、お腹まわりの脂肪を狙って減らすのは難しいと考えられます。
運動習慣のない成人24人を、腹筋運動を行うグループと行わないグループに分けた研究があります。運動グループが7種類の腹筋運動を週5日、6週間続けたところ、腹筋の筋持久力は向上しました。
一方、体重や体脂肪率、腹囲、皮下脂肪の厚さなどには、有意な改善が認められませんでした(※1)。

消費エネルギーの面でも、腹筋運動だけで大きな減量を目指すのは難しいと考えられます。
国立健康・栄養研究所のMETs表では、腹筋運動などの強度は2.8〜3.8METs程度。体重60kgの人が5分間行った場合、消費エネルギーは約15〜20kcal(安静時の消費分を含む概算)です。
厚生労働省の資料でも、体脂肪を1kg減らすには約7,000kcalのエネルギー収支の赤字が必要とされています。
つまり、腹筋運動には筋肉を鍛えるメリットがあるものの、お腹の脂肪を落とすには、食事の見直しやウォーキングなどの有酸素運動も組み合わせることが大切です。
(※1)Vispute SS, Smith JD, LeCheminant JD, Hurley KS. The effect of abdominal exercise on abdominal fat. J Strength Cond Res. 2011;25(9):2559–2564.
立ち腹筋だけで腹筋は割れる?
立ち腹筋だけで腹筋を割るのは、難しいと考えられます。腹直筋は皮下脂肪の下にあるため、筋肉が育っていても、脂肪が厚いと見えにくいからです。
筋肉を大きくするには、慣れてきたら負荷を少しずつ上げていく必要もあります。割れて見えるかどうかには、体脂肪のつき方など個人差も関わります。
立ち腹筋、毎日続けたときの変化【1週間〜3か月】
ここでは筋力トレーニング全般の研究をもとにした目安をお伝えするため、変化の出方には個人差があります。
1週目|お腹に力を入れる感覚がつかめてくる
運動を始めて最初のうちは、筋肉が大きくなる前に、神経の働きで力の出し方が整っていくと報告されています。
脚の筋トレの研究では、10日ほどで筋力が先に上がり、筋肉の大きさの変化はそのあとでした(※2)。軽い筋肉痛が出る人もいるため、痛みが強い日は休みましょう。
2週目|動作が安定し、姿勢を意識しやすくなる
動きに慣れてくると、膝を上げたときの体のぐらつきが減り、軸足や背すじを意識しやすくなる人もいます。
同じ動きを少ない力みで行えるようになるのは、神経の適応が進むためと考えられます。回数や時間が少しずつ伸びてくる人もいます。

3週目|お腹まわりが引き締まったように感じる人も
負荷の高い脚の運動を週3回行った研究では、約3週間で太ももの筋肉の大きさに変化が見られました(※2)。
ただし、立ち腹筋のような軽い運動で、同じ変化が起きるとは限りません。お腹に力を入れたときの張りや、立ち姿の違いから、引き締まったと感じる人もいる時期です。
1ヶ月|ウエストまわりの見え方に変化を感じる人も
腹筋運動を6週間行った研究では、腹筋の持久力は向上した一方、腹囲には有意な変化がありませんでした(※2)。そのため、1か月ほどでウエストの数字が大きく変わる可能性は高くありません。
それでも、お腹の張りや立ち姿の違いから、見え方が変わったと感じる人もいます。
2ヶ月|負荷を調整すると変化を感じやすくなる人も
同じ動きに慣れると、刺激が足りなくなることがあります。回数や時間を増やす、ゆっくり動かす、重りを持つなどして、少しきついと感じる強さに調整してみましょう。
軽い負荷でも限界近くまで行えば、筋肉の大きさは重い負荷と同程度に増えるという報告があります。
3ヶ月|お腹まわりの変化を実感する人も
運動習慣のない成人男性10人を対象に、10週間の高強度の脚の筋力トレーニングを行った研究では、筋線維の太さに有意な増加が確認されたのは10週目でした。
一方、トレーニング初期には筋肉の損傷が大きく、筋タンパク質の合成も、筋肉を大きくすることより損傷の修復に関係している可能性が示されています(※3)。

お腹まわりの脂肪は立ち腹筋だけでは減りにくいため、食事や有酸素運動もあわせて続けることが大切です。
(※2)Seynnes OR, de Boer M, Narici MV. (2007). Early skeletal muscle hypertrophy and architectural changes in response to high-intensity resistance training. Journal of Applied Physiology, 102(1), 368–373.
(※3)Damas F, Phillips SM, Libardi CA, et al. (2016). Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophy only after attenuation of muscle damage. The Journal of Physiology, 594(18), 5209–5222.
立ち腹筋の正しいやり方
基本は、肘と膝を引き寄せる動きです。次の手順で、反動を使わずゆっくり行いましょう。
1.足を肩幅に開いてまっすぐ立ち、両手を頭の後ろに軽く添える

2.息を吐きながら、片方の膝を持ち上げ、反対側の肘を近づける(おへそのあたりで引き寄せるイメージ)

3.息を吸いながらゆっくり戻し、左右交互にくり返す

目安は左右合わせて10〜20回、または30秒です。反動は使わず4秒かけてゆっくり行い、各種目10回を目指して毎日続けてください。
立ち腹筋の効果を高めるコツ
効果を高めるには、回数を増やすことよりも、動きの質を意識することが大切です。次のポイントを意識してみましょう。
反動を使わず、ゆっくり動かす
勢いに頼らず、お腹の力で引き寄せます。
軸足を安定させる
軸足の膝を軽く伸ばし、体が左右に傾かないようにします。
息を止めない
引き寄せるときに息を吐き、戻すときに吸います。
立ち腹筋は毎日やっても大丈夫? 1日どのくらいが目安?
厚生労働省のガイドでは、筋力トレーニングは週2〜3日が推奨されています。
毎日行う場合は、翌日に痛みや疲れが残らない軽めの強度にとどめ、筋肉痛がある日は休んでかまいません。
やりすぎるとデメリットも。腰や首への負担に注意
回数や強度を急に増やしたり、正しいフォームを維持できなくなったりすると、腰や首などに余計な負担がかかるおそれがあります。
反動を使って上体を起こしたり、腰を過度に反らせたりする動きには注意が必要です。また、頭の後ろに手を添える場合は、無理に頭を引っ張らず、首に力が入りすぎないようにしましょう。
大切なのは、回数をこなすことよりも、お腹の筋肉を意識しながら丁寧に動くこと。疲れてフォームが崩れてきたら、無理に続けず休憩を挟みましょう。
立ち腹筋を控えた方がいい人
次に当てはまる方は、始める前に医師に相談してください。
- 医師から運動を制限されている方
- 腰・首・膝・股関節に痛みやしびれがある方
- 妊娠中・産後の方、腹部の手術後の方、ヘルニアなどで腹圧をかけないよう指示されている方
- 高血圧や心臓の病気、糖尿病などで治療中の方
- めまいやふらつきが強い方
厚生労働省のガイドでも、運動で悪化する整形外科的な問題や高血圧がある場合は注意が必要とされています。当てはまる方は、ウォーキングなど負担の少ない運動から検討しましょう。
監修者プロフィール
前田 俊恒(まえだ としひさ)
まえだ整形外科リウマチクリニック 院長
医学博士/整形外科専門医/リウマチ専門医/リハビリテーション科専門医。肩こり・腰痛・関節痛などの慢性疼痛から、関節リウマチ、骨粗鬆症、スポーツ障害まで幅広く診療。日常生活に根ざした運動指導・セルフケアの啓発にも力を入れている。肩や膝、腰の痛みなど日常の体の不調や身近な健康情報についても、医学的根拠に基づいた分かりやすい解説を行っている。https://maedaseikei.jp
<Text:外薗 拓 Edit:編集部>





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