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2020年8月13日

アスリートが直面する、感情のコントロール術。子育てにも活かす方法とは│寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート〜for2020〜」#43

 みなさん、こんにちは! 陸上競技の寺田明日香と申します!

 長い梅雨が明け、「いよいよ夏だ!」と喜んでいた数週間前の自分を呪いたいくらい暑い日が続いていますが、みなさんは元気にお過ごしでしょうか?

 これからはコロナだけではなく、熱中症にも気を付けなければいけません。「特別な夏」。戸惑うことも多いですが、健康に気を付けて、スポーツの新しい楽しみ方を探しながら過ごしていただけると、私もうれしいです。

 さて、どうやっても暑さにうな垂れてしまいますが、今回は「子育てとアンガーマネジメント」という熱い話題を書いていきたいと思います。最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

スポーツに不可欠な闘争心は諸刃の剣

 私がアスリートに戻り、メンタルトレーナーの衣川竜也さん(カウンセリングオフィスAXIA)にお世話になり始めてすぐのとき、真っ先に相談したことが「感情(情緒)のコントロール」についてでした。

 現在は陸上選手として活動していますが、第一次陸上選手としての引退後、結婚・出産を経て競技に復帰したときは7人制ラグビーの選手でした(プロフィール参照)。ラグビーは競技特性上、相手に危害を加えたり、加えられたりすることがあるため、かなり強い闘争心を持って競技をすることが求められました。

 闘争本能を剥き出しにして競技をしなければならない反面、ちょっとしたことで家族に対して強い言葉や態度を出してしまわないか、ちゃんと自分で自分をコントロールし切れるのか。

 そのことがネックになって競技から離れてしまった方も実際にいたことも知っていたため、母親になって3年も経っていない当時の私にとって、それは大きな不安要素でした。

自分の感覚は他人からどう見えるものなのか

 案の定、練習や仕事がうまくいかなかった日や、頭のクールダウンができていない日には、ちょっとした事で私の怒りゲージが高くなり、家族に雷を落としたことが何度かありました。それは、私にとって気にしていても中々うまくいかないなぁと、反省する日々でもありました。

 そんな中、なんとか良い方法はないかと、試行錯誤しながら過ごしてきましたが、「怒りゲージが上がったときの自分は他人からどう見えているだろうか」と、「その事象について、なぜ怒りゲージが上がったのか(深掘りする)」の2つを考えることで、アンガーマネジメントがしやすくなってきたように思います。

 なので、最近は無駄な雷が落ちることは大分減ってきたように思います。2人に要確認ですかね(笑)。

 今まで選手として生きてきた中で、「自分の感覚はこうだから」ということは相手に伝えても、その感覚の時に他人からはどう見えているのか、ということは考えることなく競技をしてきました。

 しかし、ラグビー選手を経て陸上選手に戻ってきてからは、自分の感覚と客観的な見え方を想像して動き、実際に高野大樹コーチや齋藤大輔トレーナーたちと感覚の擦り合わせをしながら、競技に取り組めるようになっていました。

 そうしているうちに、子育ての中でも自然と自分を客観視することと、自分の感覚(感情)を深掘りする癖のようなものが身に付いてきたようです。

アンガーマネジメントは子育てにも活かせます!

 自分の怒りポイントを深掘りすることで、自分の中の許容範囲がわかってきます。

「その許容範囲は、すごく狭いのか、それとも広いのか」
「妥協できる範囲は、どこからどこまでなのか」

 そういうことを考えていくと、ふっと怒りが湧いたときに、「あれ、今どのポイントで怒っているんだ?」と、自分を分析する瞬間ができ、そこで「やっぱり許せない!」となると怒りは続くし、「あら、怒るポイントじゃなかったな」と怒りが消える場合もあります。

 もちろん私も人間なので、100%コントロールできるかと言われるとそうではないと思います。ただ子育ての中でも、アンガーマネジメントという考え方が役立っているように感じるのです。

 いきなりアンガーマネジメントを完璧にこなすことは難しいことですし、私も確実にコントロールしているわけではないですが、自分で意識をすることで行動は変わっていくものです。

 暑くてストレス値が高くなる今日この頃ですが、過酷な環境下で自分をコントロールできるようになると、それはもう、身についたも同然! こっちのものです。

 アンガーマネジメント、さまざまな場面で応用できると思うので、一度考えてみてください!

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後の主なスケジュール】
●セイコーゴールデングランプリ陸上
2020年8月23日(日)東京・国立競技場
http://goldengrandprix-japan.com/
●ナイター陸上競技会「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン・フクイ」
2020年8月29日(土) 福井市9・98スタジアム(福井県営陸上競技場)
http://www.fukui-jaaf.com/contents/crowdfunding
●第68回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会
2020年9月18日(金)~20日(日)埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1452/
●第104回日本陸上競技選手権大会
2020年10月1日(木)~3日(土)新潟市・デンカビッグスワンスタジアム
https://www.jaaf.or.jp/jch/104/
●2020世界室内選手権
2021年3月19日(金)~21日(日)会場:中国・南京
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1416/

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<Text & Photo:寺田明日香/Edit:松田政紀(アート・サプライ)>