牛乳の栄養と効果的な飲み方。低脂肪や無脂肪の違いは?高カロリーだから太るってホント?[管理栄養士監修]
栄養価が高く優れた健康食品としてのイメージが強い牛乳。いつ、どのように取り入れるのがベストな飲み方なのでしょうか。
監修の管理栄養士・小原水月さんに、トレーニングしている人におすすめの上手な摂取方法を教えてもらいました。
牛乳とは
牛乳とは牛の乳汁のことで、かつては日本でも薬のように扱われていました。栄養価が高い印象の牛乳ですが、実際はどうなのでしょうか。牛乳の種類と特徴、栄養素について詳しくお伝えします。
牛乳の種類と特徴
牛乳にはさまざまな種類があり、パッケージを見ると「成分無調整」や「低脂肪乳」など書かれています。それぞれどんな違いがあるのでしょうか?
牛乳の種類については、厚生労働省の省令で以下のように定められています。
- 牛乳:生乳を加熱殺菌しただけのもの
- 成分調整乳:生乳から水分、脂肪分、ミネラルの一部を除いたもの
- 低脂肪乳:成分調整乳であって、乳脂肪分を0.5%~1.5%にしたもの
- 無脂肪乳:成分調整乳であって、乳脂肪分を0.5%未満にしたもの
さらに、生乳に乳製品をくわえた加工乳、乳製品以外をくわえた乳飲料があります。
牛乳のエネルギー(カロリー)と栄養素
牛乳100gの栄養価は以下の通りです。
- エネルギー:61kcal
- たんぱく質:3.3g
- 脂質:3.8g
- 炭水化物:4.8g
- カルシウム:110mg
- マグネシウム:10mg
- リン:93mg
- ビタミンB1:0.15mg
- ビタミンB12:0.3mg
エネルギーを生み出すたんぱく質、脂質、炭水化物にくわえ、ビタミン・ミネラルが程よく含まれているので、牛乳は栄養バランスを整えるのに優れた食材といえます。
牛乳にまつわるウワサ。これホント?
牛乳を飲むと太る、背が伸びるなど、牛乳に関するうわさは多くありますが、実際はどうなのでしょうか。トレーニング中の方が気になる、牛乳にまつわる疑問にお答えします。
牛乳を飲むと太る? ダイエット中は控えたほうがいい?
必要以上の体脂肪をため込むことを「太る」とするのなら、体重1kg太るためには体脂肪1kg=7200kcalの増量が必要です。
牛乳コップ1杯(150ml)はおよそ94kcal。仮に毎日飲み続けたとしても太る原因にはなりづらいでしょう。
ただし、ほかのどんな食べ物にも言えることですが、食事全体のバランスを崩すほど摂り過ぎれば太る原因にもなり得ます。後ほど説明する牛乳の適量を参考にしてください。
牛乳を飲むと背が伸びる、骨が強くなるってホント?
カルシウムは骨の合成に欠かせない栄養素です。牛乳は小魚などに比べてカルシウムの吸収率が高く、効率的にカルシウムを摂取できる食材なので、牛乳=骨のイメージが広がったと考えられます。
ただし、カルシウムの摂取量が少ないと骨折や骨粗しょう症のリスクが高まることは分かっていますが、多く摂ると骨が丈夫になる、成長が早まるとは言いきれません。
なぜなら、骨の合成にはカルシウム以外にもたんぱく質やビタミンD、マグネシウム、リンなど多くの栄養素が必要だからです。さらに、運動量や睡眠、喫煙などの生活習慣も影響します。
骨を丈夫にするにはカルシウムをたくさん摂るというよりも、不足しないようにする視点が必要です。
牛乳は体に悪いってホント?
現在、日本で流通している食品のなかで、体に害を与えるものはないと考えています。食品自体ではなく、食べる量や頻度、食べ方の問題と言えます。
たとえば牛乳に含まれる飽和脂肪酸は肥満や動脈硬化の原因になる一方で、ホルモンの合成や体温保持に欠かせない栄養素でもあります。
牛乳を良い、悪いと判断するのではなく、多面的に特徴を把握したうえで、ご自身の生活に取り入れてみてください。
乳糖不耐症でも飲める牛乳はある?
乳糖不耐症とは、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素を持っていない、もしくは少ない人が、牛乳を飲むと腹痛や下痢などの不快な症状を起こすことです。
乳糖不耐症であっても牛乳を飲みたいというニーズに応えて、ほかの成分は変わらず乳糖をあらかじめカットした牛乳を販売しているメーカーもあります(分類上は乳飲料になります)。
ただ、牛乳以外の食事を工夫して栄養バランスを整えることも可能です。選択肢を複数持っていると生活の自由度が高められます。
牛乳の適量とは。1日どのくらい飲めばいい?
2005年に厚生労働省と農林水産省が決めた食事バランスガイドによると、牛乳の1日の摂取目安は以下のようになります。
- 一般的な成人:200ml~300ml
- 活動量が多い成人:200ml~400ml
主食(ごはん、パン、麺)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品)、副菜(野菜、きのこ、海そう)を普段の食事の土台としたうえで、全体のバランスを整える食材として捉えるのがよいでしょう。
牛乳は手軽に栄養素を摂れるという反面、摂り過ぎてしまう心配もある食材です。牛乳の特徴を踏まえたうえで、ライフスタイルに合うように取り入れてください。
参考
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- 厚生労働省「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」
- 厚生労働省「食事バランスガイドについて」
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」骨粗鬆症の予防のための食生活
- MSDマニュアル家庭版「乳糖不耐症」
- 雪印メグミルク「牛乳でおなかがゴロゴロする人ヘ アカディおなかにやさしく」
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- 消費者庁「食品表示基準」栄養成分表示とは
- 「からだにおいしい あたらしい 栄養学」 吉田企世子監修 高橋書店 2016年
<この記事を書いた人>
小原水月(おはら・みづき)
管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。現在は、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選びお手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」で、食と健康に関する情報を発信をしている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com
<Edit:編集部>