ヘルス&メンタル
2025年9月26日

血液検査の数値は正常でも「脂肪肝」に…なぜ?医師が重要視する“異変ポイント”とは (1/2)

記録的な猛暑が続いた今年、外出を控えて運動不足に陥る人が急増しています。「お酒を飲まないから大丈夫」「痩せているから関係ない」という人でも、運動不足により高まるのが脂肪肝のリスク。脂肪肝は誰にでも起こりうる現代病なのです。

実は、血液検査の数値だけでは見逃されがちな「肝臓の硬さ」こそが、将来の肝硬変や肝がんを防ぐ重要な指標です。新百合ヶ丘総合病院の今城先生に、最新の脂肪肝対策について解説していただきました。

猛暑で急増! 運動不足による脂肪肝リスク

今年は夏の暑さが長引き、外出がおっくうになり運動不足に陥る人が急増しています。これまで定期的に運動していた方も、猛暑で外での活動を控えるようになったことで、運動習慣が途切れがちです。

「運動不足により基礎代謝が低下し、同じ食事量でも糖質や脂質が消費されずに肝臓に脂肪として蓄積しやすくなります。特に注意すべきは、痩せている方でも糖質の多い食事や間食が続くと脂肪肝のリスクが高まることです」(今城先生)

「お酒を飲まない私は大丈夫」は危険な思い込み

「肝臓の健康常識は大きく変化しています。『お酒を飲まない私は大丈夫』という考えは非常に危険です」と今城先生は語ります。

「脂肪肝にはアルコール性と非アルコール性があり、お酒を飲まない方にも脂肪肝のリスクがあります。近年、医学界では従来『非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)』や『非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)』と呼ばれてきた病態について、『代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)』という新しい名称で呼ぶようになっています。

日本では、非アルコール性脂肪肝疾患の有病率は人口の9~30%、全国で1,000万人以上の患者がいると推定されており、現代の重要な健康問題となっています」(今城先生)

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血液検査の落とし穴! 見逃されがちな脂肪肝の兆候

健康診断で行う基本的な血液検査では、肝機能を表す数値としてAST、ALT、γ-GTPの3つがあります。しかし、この基準内でも安心してはいけません。

「この3つの中で特に注目してほしいのがALTです。医療機関にもよりますが40以下の場合、再検査や要経過観察の指示はでないところがありますが、ALT30以上なら脂肪肝を疑ってください」(今城先生)

●健康診断の数値を再チェック!
ALT>30 → 軽度の脂肪肝の可能性

血液検査だけでは分からない! 肝臓の「硬さ」こそが重要な指標

「血液検査の数値(AST、ALT、γ-GTP)は肝臓の状態を知る重要な手がかりですが、実は肝臓の本当の健康状態を判断するには限界があります。なぜなら、肝臓の『硬さ』は血液検査では分からないからです」と今城先生は説明します。

「肝臓が硬くなる(線維化)ことこそが、肝硬変や肝がんへ進行する最も重要なサインです。血液検査の数値が正常範囲内でも、肝臓が硬くなっている可能性があります。逆に、数値が少し高くても、肝臓の硬さに問題がなければ深刻な状態ではない場合もあります。

肝線維化の進行度を予測する数値として、血液検査の基本的な項目で確認できる『FIB-4 index(フィブ・フォー・インデックス)』を指標にすることができます。健康診断等の結果を元に計算ができるWEBサイトもあるので、ご自身でも確認し、気になる場合は病院にご相談ください」(今城先生)

次:肝臓の「硬さ」を正確に測定できる「脂肪肝ドック」とは

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