みんな知ってる「ラジオ体操」の効果とは。全国ラジオ体操連盟に聞いてみた
「腕を前からうえに上げて~」で始まるラジオ体操第一は、おそらく誰もが一度はやったことのある「国民的エクササイズ」と言ってもいい存在です。あのピアノのイントロが流れた瞬間、どう全身を動かせばいいのか、自然と反応できるのではないでしょうか。
今思うと、ラジオ体操にはどういう意味があったのでしょう? ただの準備運動だったのか、手軽に運動不足が解消できるストレッチ的なものだったのか? この素朴な疑問を発端に、全国ラジオ体操連盟に問い合わせたところ、理事長の青山敏彦さんが取材に応じてくれました。(記事初出2018年8月23日)
ラジオ体操は「身体のメンテナンス」をしている

▲全国ラジオ体操連盟の理事長・青山敏彦さん
――ラジオ体操に取り組む目的について教えていただけますか?
ラジオ体操には、「いつでも、どこでも、誰でも」というキーワードがありますが、最近は特にご高齢の方に関心を持っていただくことが多いです。季節が変化するたびに腰痛になっていたけれど、ラジオ体操を始めてから解消した、という方もいらっしゃいます。身体の痛みを感じる方にラジオ体操をおすすめして、やってみたら生活が快適になって習慣化し、ずっと続いている。そういう方が多いですね。
――ラジオ体操をやることで、なぜそのような運動効果が生まれるのでしょうか?
ラジオ体操第一は、わずか3分ほどの運動の中で、頭のてっぺんから、前後、左右、上下とひと通り身体を動かすようにできています。それほどハードではなく、運動強度は高くないですが、非常にバランスがとれている全身運動です。普段使わない背筋に力を入れるような動きを、体操の中では何回もやることになります。結果として、椎間板あたりを支える筋肉がトレーニングされることになって、姿勢がしっかりしてきます。
ラジオ体操をやっている方は、「姿勢がいいね」と言われることが多いようです。身体の中心がしっかりしている、体幹がしゃんとしているということですが、これはある意味で健康の条件ですよね。身体の中心が歪んできたり、腰が曲がってきたり、どこかが押しつぶされてきてしまうと、生活サイクルがどこかおかしくなってきますから。
――その他にどんな健康効果を期待できますか?
機械化した現代の生活の中では、どうしても身体を動かすことが少なくなっています。そうすると、筋肉や関節などがこわばり代謝が衰えるので、身体のあちこちに良くないエネルギーが溜まってしまいます。それが肩こりをはじめ、糖尿や高血圧、心臓病といった現代病の大きな要因を作っているようです。しかしラジオ体操という運動習慣が身についてくると、エネルギー代謝がかなり良くなります。
他にもいろいろな効果が期待できますが、基本的にこの2つの問題(姿勢が悪くなることによる身体機能の低下/運動不足から生じる現代病)の解決をラジオ体操は担っていると思います。私どもは、ラジオ体操は「身体のメンテナンス」をしているんだよと、と言っています。身体を改造したり、より強化したりするものではなくて、低下しがちな身体の機能をちょっとメンテナンスしようと。そういう役割がラジオ体操にはあるんじゃないだろうかと。
人間の身体というのは、機能が低下するのはしょうがないんです。その低下する速度をいかに緩やかにするか。そういう役割を担っていると思います。
「夜の一杯」の代わりにラジオ体操が効果的
――ラジオ体操をやるのは、やはり朝がいいのでしょうか?
我々としては、身体を目覚めさせるためにも、やはり一日の朝にやっていただいた方がいいんじゃないかと思っています。人間の身体は、目が覚めてから能力が発揮できるようになるまで3時間くらいかかるそうなんですね。そこで毎朝早く起きて、散歩して体操をすると、30分くらいに短縮される。そうすると一日のスタートが良くなる。毎日ラジオ体操をやっている方は、よくそうおっしゃいます。
――夜にラジオ体操する場合、健康面でどんな影響がありそうでしょうか?
パソコンにずっと向かっていたりして、自律神経が過酷に使われていると、夜になっても興奮して眠れない、そういう状況が出てきます。そこで眠るためにアルコールを一杯飲んだりするのもひとつの方法かもしれませんが、アルコールの代わりにラジオ体操を一回やっていただくのはどうかと。
そういう状況でラジオ体操をすると、運動神経と自律神経のバランスがとれてきます。人間の身体というのは、片方の神経だけを使っていると、そのアンバランスが疲労の原因となってきます。運動をして自律神経が休まるわけではないのですが、両方が一緒に疲れてくるので、神経のバランスがとれて休めるようになると。ですから、神経のバランサーとしてラジオ体操を使う、というのも有効なんです。
他に、オフィスの中で気分転換として15時頃にやったりするところもあるようですね。仕事以外の刺激を身体に与えて、神経の疲労を置き換えて、バランスをとっていくわけです。
「力まない」「呼吸を止めない」「音楽を味わう」がコツ
――ラジオ体操をやるときの注意点があれば教えてください。
3つ申し上げると、まず「無理にがんばって力まない」こと。力が入ると筋肉は緊張し、硬くなりますよね。そうすると血行が良くならない。だから、なるべくのびのびと柔らかくやっていただきたい。
2番目は「呼吸を止めない方がいい」です。ゆっくりでいいですから、吸ったら吐いて、吸ったら吐いて……とやってください。ラジオ体操は有酸素運動ですから、100メートル走のように一気に駆け抜けるものではありません。
3番目は、なるべく「音楽を味わいながら」やっていただきたい。音楽を味わうと、精神的にリラックスできます。もう知っているから聴き流すではなくて、音楽を意識していただいて、楽しんでいただけるといいと思います。ラジオ体操の音楽はおだやかに流れているものですから、今申し上げた「力まない」「呼吸を止めない」を助けてくれます。
ラジオ体操は、はじめからフォームを気にして「こうやらなくてはいけない」と思わなくてけっこうです。今申し上げたことをうまく味わえるようになったら、徐々に覚えていただければいいと思います。
[プロフィール]
青山敏彦(あおやまとしひこ)
1936年三重県生まれ。日本体育大学体育学部を卒業後、同大学の助手に就任。1981年同大学教授に就任。1971年よりNHKテレビ・ラジオ体操指導者に就任し、以降28年間同職を務める。2015年よりNPO法人全国ラジオ体操連盟理事長。
<Text&Photo:大久保徹(H14)>







