2020年9月20日

カラダだけでなく“脳”も鍛える。ストレス対策や集中力アップ、認知機能の向上に役立つトレーニングメソッド

 一言でトレーニングといっても種類は非常に多く、さまざまなエクササイズプログラムが展開されています。その中でも今注目されているのが、「フィジカル」だけでなく「脳」も同時に鍛えるプログラムです。今回は、脳を活性化させることができるトレーニングメソッドをいくつかご紹介しましょう。

関連記事:運動マジ嫌いライターが運動音痴から脱却するための秘訣を脳科学者に聞いてみた

眠っている能力を引き出す「ライフキネティック」

 ライフキネティック(lifekinetik)はドイツ発祥のプログラムで、ボールやお手玉などの道具を使いながらカラダを動かすといったエクササイズがあります。ドイツのプロアスリートたちが行っていることから話題となり、日本でも広まってきました。

 ライフキネティックでは神経細胞間に新しいつながりを作り出し、“眠っている”能力を活性化すると言われています。つながり(シナプス)がたくさん生まれると、脳の能力、柔軟性、処理速度が向上。ストレスを軽減させたり、集中力を高めたり、認知機能を向上させる効果が期待できるそう。ドイツのケルン大学やマンハイムメンタルヘルス中央研究所などさまざまな研究機関で効果検証が行われてきました。脳機能の改善が見られたという結果も発表されており、エビデンスも確立しているプログラムです。

◆どこで体験できる?

 ライフキネティックは指導者育成としてライセンスを発行しており、全国各地に公認トレーナーがいます。もし指導を受けてみたい場合は、支部に問い合わせてみるとよいでしょう。

・ライフキネティック日本支部
https://lifekinetik.jp/

脳の活性化を促すシナプソロジー」

 シナプソロジー(synapsology)は、大手スポーツクラブ「ルネサンス」が展開するプログラムです。「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」といった動きで脳に刺激を与え、活性化を図ります。複数人で楽しく行うことで感情や情動に関係した脳も活性化させ、認知機能や運動機能の向上、不安感の低下などの効果を得ることができます。

 子どもの積極性や記憶力の向上、手指の巧緻性の向上、高齢者においては短期記憶・長期記憶や注意・実行機能の向上が研究で実証されています。また、疲労感の軽減や爽快感の向上など、メンタル面においてもよい影響をもたらすプログラムです。

 シナプソロジーのプログラムは、じゃんけんやボール回しといった基本動作に対し、五感からの刺激や認知機能への刺激を変化させ続けます。それに反応することで脳を活性化させるのですが、この刺激の変化を“スパイスアップ”と呼びます。短時間で狭い場所でも行うことができるので、介護施設や企業でも多く導入されており、幅広いジャンルで活用することが可能です。

◆どこで体験できる?

 シナプソロジーは体験会などのワークショップを受講したり、認定トレーナーに指導してもらうことで体験できます。また、スポーツクラブルネサンスのプログラムでも体験できます。

・シナプソロジー研究所
https://synapsology.com/sy/

身体能力を引き出す「ドラウタビリティ」

「身体能力を引き出す=Draw out ability」から名付けられたドラウタビリティ(Droutability)は、視覚や聴覚、運動覚(運動の方向)を総動員するプログラム。脳を刺激し、瞬時の判断力を高め、コーディネーション能力やフィジカルを向上させるトレーニングメソッドです。

 ドラウタビリティは数字や色、音などに反応し、指示に合わせてカラダを動かします。しかし、異なる2つ以上の動きや情報を干渉させて行うため、どう動けばいいかプログラム中は頭を悩ませることばかりです。しかしプログラム自体は非常に楽しく、子どもからお年寄りまで誰でも簡単に取り組めるでしょう。また、アスリートのトレーニングとしてもハードに追い込めるなど、プログラムの幅が広くエクササイズの種類が多いのも特徴です。実際、小学校や指定障害者支援施設、震災などの被災地などで健康プログラムとして行われるほか、プロアスリートも取り入れる方が少なくありません。

◆どこで体験できる?

 ドラウタビリティは講習会も定期的に開催されており、書籍も発売されています。ドラウタビリティを体験してみたい人は、そちらもあわせてチェックしてみましょう。

・ドラウタビリティ協会
http://www.stabi.com/

心身の連動をうまく繋げるトレーニングは需要が高まってくる

 カラダを動かすだけでなく、同時に脳を鍛えることは、スポーツ競技力の向上はもちろんのこと子どもの運動能力低下や高齢化社会による介護問題など、今後さまざまな分野で必要となってくることが予想されます。「考えて行動に移す」という心身の連動がうまくできるようになるこれらのトレーニングプログラムは、今後さらに広まっていくことでしょう。

[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。​医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
・公式HPはこちら
・公式Facebookはこちら

<Text:和田拓巳/Photo:Getty Images>